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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.565 )
日時: 2014/04/28 22:53
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)


 荷物をまとめ終わった部屋を、少女はぐるりと見回した。
 衣服は最後にまとめるとして、先に小物や本を段ボールに詰めた。制服はハンガーにかけてあるから問題はなし。ちょっとごちゃごちゃしているが、数日後には何もかもがなくなっているだろう。
 少女は満足そうに「よし」とつぶやいた。

「もう少しで、この部屋ともお別れですね」

 少女の表情は、とても清々しいものだった。




       第21章



 明日は明日の風が——吹いたらいいなぁ




 さて、皆さん。お久しぶりです。神威銀です。
 今日ものびのびと黒影寮の皆さんのお稽古を見張っています。若干視界が上下しているのが気になりますけどねぇ。

「……あのぉ、空華さん。重くないですか?」

「んー、何が?」

 漫画に人を乗せて腕立て伏せをしている人ってよくいるじゃないですか。
 あれをまさに空華さんがやっているんですよ。私を乗せて。もう1度言います、私を乗せて。何で私を乗せたんでしょうね。重い人をご所望なら他にもいらっしゃるのに。
 それこそ蒼空さんとか乗せればいいんじゃないですか? 重力操作ができるんだから。
 だというのに、空華さんはヘラヘラと笑いながら腕立て伏せをしていました。えぇ、今のカウントで100回目に突入ですよ。まだ30秒しか経っていないのに。

「全然平気だよぉ。むしろ銀ちゃんはもう少し食べた方がいいんじゃないかな?」

「食べたら太ってしまうので嫌です。太りたくありません」

 女の子にとって体重は死活問題なのです。訊かないでください。
 ていうか、男の子の言う「もう少し太った方がいいんじゃない?」は信用できません。行き過ぎると「デブ」とか罵られるんですよ。

「大丈夫。そんなことを言う奴がいたら、俺様が削いであげるから」

「どこの人類最強さんですか?」

 空華さん、刈り上げにしていませんよね? 巨人も相手にしていませんよね?
 相も変わらずヘラヘラと笑いながら、ものすごいスピードで上下上下上下上下……あ、何か少し気持ち悪くなってきました。
 その時です。

「ハイドゥーンッ!」

「ぐっはぁ!?」

「きゃぁ!」

 いきなり空華さんが沈みました。いや、沈んだというかめり込んだというか……とにかく沈みました。
 私は背中の辺りで正座をしていますが、腰の辺りに小さな石が乗っています。わぁ、キラキラしていてきれいですね。というか蒼空さんの声が聞こえたんですけど。

「なのー! そーくーせいこーなのー」

「やったね妙ちゃん。今日はお祝いだよ!」

 リデルさんと蒼空さんが「いぇーい」とハイタッチをしていました。
 空華さんは何とかして腰に乗っている小さな石(重力操作つき)を振り落としました。ズドンッ! と地面が1部陥没しました。こんなものを1点に乗せられて、よく腰が折れなかったですね。

「こんの野郎ぅぅ……! 待てコラ、ブッ飛ばすッ!!」

「はっはっはっはー。銀ちゃんを背中に乗せるという羨ましい行動をしやがったペナルティじゃクソボケェ!」

「今日という今日は絶対に許さんこの馬鹿!! 背骨が折れたらどうしてくれるの!」

「治るから別にいいじゃん?」

 蒼空さんと空華さんの本気鬼ごっこが始まりました。
 あぁ、今日も黒影寮は平和です。平和というか、お祭り騒ぎです。

「銀。そろそろ荷物……」

 鏡の中から鈴が声をかけてくれました。
 そうでした。もう少し荷物を整理しないと。
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ合っている皆さんには悪いですが、私は1人黒影寮に戻りました。