コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。オリキャラ募集!詳しくは本文へ ( No.59 )
- 日時: 2011/11/19 21:38
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 亀更新万歳!! ゴメンなさい
第5章 しにがみのデート。
「そんな、理由で銀をさらったのか?」
翔さんはうつむき加減で訊きました。長い髪が邪魔して表情が見えません。
炎さんは特に反論する事なく「あぁ」と頷きました。
「ふ、は。ははは。はははははは。ははははははははははははああああははは!!」
突然、翔さんが笑いだしました。
楽しそうに、愉快そうに。どこまでも棒読みの笑い声を上げました。
「銀の力を狙った訳ではなく、単に管理人になってほしいからさらっただと? だったら何でこの俺まで動かなきゃならねぇ。何であいつら総動員させなきゃならねぇ。何で黒影寮がテメェらを相手しなきゃならねぇ?!」
顔を上げ、鎌を握る翔さん。それに反応してなのか、辺りに炎が立ち込めました。
炎さんはその炎を見て青ざめます。
なおも楽しそうに笑う翔さんは、鎌を水平に突き出して炎さんに言いました。
「来いよ、発火操作。俺に勝てたら考えてやるよ」
簡単な挑発。
この炎の量を見れば勝てないと分かっているのにもかかわらず、炎さんは手に火の玉を生み出しました。
翔さんの業火よりも小さな炎です。見劣りはしますが、温かみがありそうです。
「負ける訳にはいかねぇんだよ……! だって、だってこの神威銀の飯は——超美味いって噂なんだからよぉぉおおお!!」
炎さんは火の玉を全力投球しました。
顔面に飛んでくる火の玉を翔さんは、平然と素手で受け止めました。
ジュッと音がして、火の玉は翔さんの手の中で溶けます。まるで炎の中に放り込まれたアイスの如く。
「こんなクソ弱い能力で、世界の半分を一瞬で焦土と化せる力を有する俺に敵うとでも思ってるのか? 笑わせるな、この三下が」
「チッ! おおい、姶良!! こいつの炎を消せ!! 遠隔念動力で何とか出来るだろ!!」
炎さんは携帯片手に唖然とした様子で立っている姶良さんに怒鳴りました。
ですが、姶良さんは1歩も動こうとしませんでした。足がすくんで動けないのでしょう。
使い物にならないと判断した炎さんは、岬さんの名前を呼ぼうとしました、が。ここで異変に気付きます。
「おい、寮長」
岬さんは、私の両手のロープを外しながら、翔さんに向けて言葉を吐き出します。
黒い髪がどんどん輝く銀髪に変わり、ズボンから猫の尻尾が飛び出しました。
「ちゃんと倉庫はもとに戻しておけよ」
「へ? れ、蓮さん?!」
蓮さんは私を姫抱っこしますと、並外れた跳躍を見せて倉庫を飛び出しました。
な、何で私の居場所を知っているのでしょうか。
「俺の嗅覚を舐めるな。犬の嗅覚は人間の1000倍だ」
あ、そうでしたね。肉体変化は何にでもなれる——って、
「何の匂いを嗅いだのですか?! まさか、下着とかじゃ——!!」
「あ? 部屋の匂いに決まってるだろ。なんか、こう、花のような匂いがした。いい匂いだった」
「そんな感想を言わないでくださいー!!」
私、一体どういう香りなんですか。
蓮さんはピタリと足を止めると、倉庫の方を向きました。そして私を下ろすと、倉庫の方へ駆け出します。
「元に戻せとは言ったが、あいつが死んだらお終いだ。ちょっと様子見てくるから、ここで待ってろ!!」
「え、あ、蓮さん!!」
まるでチーターのような速さで倉庫の方へ走っていく蓮さん。
私は仕方がないので、端にそれている事にしました。何かあったらすぐに逃げれるように。そして隠れるように。
「……大丈夫ですかね」
「何がだ」
「うぉひゃ!!」
思わず驚いて声が上ずってしまいました。
誰かと思いましたら、翔さんです。平然とした様子で翔さんが立っていました。見るからに無傷です。
「間抜けだな」
「ちょ、蓮さんが行ったんですけど!!」
「寮に帰させた。俺の力を持ってすれば、そんな事はたやすい」
元の制服姿に戻った翔さんは、ぐしゃぐしゃと私の髪を掻きまわしました。
痛いです。微妙に。
「馬鹿。この俺を疲れさせるんじゃねぇぞ、ビッチ」
「ちょ、待ってください!! 翔さん、痛いです!!」
「はははは。ビッチビッチー」
「だからその名前ー!!」
翔さんは笑いました。大体は仏頂面の翔さんが、その綺麗な顔を崩して子供のように笑いました。
死神だとしても、彼は生きているんですね。機械じゃないんですね。
——トクン。
(あれ?)
おかしいです。心臓が、うるさいです。
どうして、でしょうか?
「おい、行くぞ。ビッチ」
「あ、ハイ!!」
叔母さん。白刃お兄ちゃん。
これが、この気持ちが恋なのでしょうか?
私は、翔さんが好きになってしまったのでしょうか?