コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.6 )
- 日時: 2011/10/06 21:46
- 名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第1話 ウェルカム、黒影寮。
という訳で、あの茶髪の男の子に言われた通り、食堂で待っていました。
何だか1人で待っているのも暇ですね。さっきの男の子とかが通りかかったりしませんでしょうか。
そんな事を思いながら、私はぼんやりと天井を見ていました。
すると、
「君、1人なの?」
声が降ってきました。
私の隣には、いつの間にか男の子が座っていました。走っていた男の子とは別の人です。
綺麗な顔立ちに右目には眼帯をしています。していない左目は、澄んだ翡翠色でした。黒い髪は短く、梳かしてるんですかって訊きたくなるぐらいにぼさぼさです。
何でしょう。不思議な感じの男の子です。
「ハイ。寮長にご用があるんです」
「そうなんだ。でも、1人なんでしょ? 誰かが呼びに行ってるんだよね」
私が頷くと、男の子は笑いました。
何が楽しくて笑っているのでしょう。よく分かりません。
「何なら、俺様がここで一緒に待とうか? 1人じゃ退屈でしょ?」
「いいんですか? じゃあ、お願いします」
確かにこんな広い空間で1人ぼっちは寂しかったです。
あ、でも……迷惑じゃないんでしょうか?
「大丈夫。俺様も暇だったし。部屋にこもってるのも何かね」
「そうなんですか。あ、私は神威銀です。ここの管理人だった神威珊瑚の姪です」
ペコリとお辞儀をします。一応、自己紹介はしておかないといけませんから。
男の子もにっこりとした笑みを浮かべつつ、自分の名前を名乗ってくれました。
「俺様は王良空華。空華でいいよ。よろしくね、銀ちゃん」
「ハイ。よろしくお願いしますね、空華さん」
ちゃん付けにされるとこそばゆい感じがしますが、そこは慣れですね。男の人と付き合う事になるなら、こういう呼び方になるでしょう。
でも、私は恋なんて興味ありませんが。
「ねぇ、銀ちゃんってどこの学校行ってるの?」
空華さんの質問です。
「私は皇中学高等学校に通っています。空華さんは英学園ですよね?」
「そうそう。クラスも多くてさー。俺様なんか特別クラスで勉強してる訳なんだけど、進みが早くて」
空華さんはやれやれ、と言うように肩をすくめて見せる。
特別クラスなんですか。私には到底理解できないでしょう。私の頭脳は一般人並みですからね。
すると、2つの声が遠くから聞こえてきました。
その声を聞いた瞬間、空華さんは椅子から立ち上がりました。そして笑顔を作ります。
「寮長達が来たようだから、行くね? また会おうね」
「あ、」
行っちゃいました。
もう少しいてもよかったのに……きっと忙しいんでしょうね。
廊下からやってきた茶髪の男の子と——女の子、でしょうか。可愛らしい姿の子が嫌々というような表情を浮かべて引きずられてきました。
黒い髪はとても長く、左下で結ばれています。可愛らしい顔立ちに茶色い大きな目、まるでお人形さんです。
「いやぁ、なかなか部屋から出てきてくれなくて。あ、俺は副寮長の椎名昴って言うんだけど。ま、好きに呼んで。そんでこちら」
昴さんと名乗った男の子は、女の子を前へ押し出します。
女の子は私の事を睨みつけると、大きなため息をつきました。
「珊瑚のババアに似てるな。やっぱり姪だからか、まるで親子だ」
「あの、叔母が何か?」
女の子は不機嫌そうに椅子に座ると、何でもないとだけ言いました。
「ほら、名前を名乗りなさいよ。話はそれからでしょー?」
「……言われなくても分かってる」
女の子は昴さんに名乗るように促され、渋々口を開きました。
そんなに名乗るのが嫌なら、昴さんが代わりに言ってあげればいいのに。
「黒影寮の寮長、東翔だ」
……男の子、だったんですね。