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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。応援ありがとう!! ( No.77 )
日時: 2011/12/15 17:23
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 亀更新万歳!! ゴメンなさい

第6章 俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない。


 どうしましょう。どうしましょう。
 まずい事になりました。
 あの翔さんが、黒影寮の寮長であり、地球を一瞬で焦土と化せる程の力を有する炎の死神であり、俺様で女の子が嫌いな翔さんが!!
 何だか据わった目つきで立っていました。しかも死神ルックで。
 どうしてでしょうか、そんなに嫌じゃありません……。

「翔、死神であるお前がこんな馬鹿げた呪いに引っ掛かるとはね……。正直、呆れを通り越して笑えてくるよ?」

 空華さんは苦笑いを浮かべつつ、腰のベルトから苦無を抜きました。
 変わらず、翔さんは据わった目つきで繰り返します。

「銀を渡せ。さもなくば——燃やすぞ」

「燃やせるの? 俺様の後ろには銀ちゃんがいるんだけど」

「ハッ! 俺を甘く見てるな? 知ってるか、死神って奴は人を自由に生かしたり殺したりできる。テメェを殺す事なんて、俺にとっては息をする事と同じような感じだ」

 さらりととんでもない事を言ってのけました、翔さん。
 そんなに死神ってすごいんですねぇ。何で今頃感心しているんでしょうか?

「来い、王良空華。少しぐらいは遊んでやる。神への懺悔を済ませておくんだな」

「冗談。俺様はそんな簡単には死なないよ!」

 空華さんはそう怒鳴ると、私の腕を引っ張って抱き寄せました。そして自分の部屋がある廊下へ向かいます。
 翔さんの舌打ちが聞こえました。
 熱気が爆発し、私と空華さんの肌を焦がしました。

「地獄業火——獄炎乱舞!!」

 赤い軌跡が生まれ、空華さんに襲い掛かります。
 空華さんは素早く印を結びますと、小さく口の中で唱えました。

「スロット9【熱を殺す】」

 赤い軌跡が空華さんに当たりました。だけど、空華さんは至って普通の顔をしていました。
 こんな熱い攻撃を受けて平気でいられるんですか?!

「だから言ったでしょ。これは何もかもを殺す力を有するって。さっき熱を殺したの。だから熱いって感じなかったんだよね!!」

 勢いでドアを蹴り開け、空華さんは私をベッドに座らせます。開いたドアを睨みつけ、お札を貼り付けました。

「【守護の陣をここに描く。神をも守る空の壁よ、これより全ての攻撃を弾き返し我が体を守らんとす】」

 早口で詠唱を済ませた空華さん。お札を貼り付けられたドアは、青く輝きました。
 結界、みたいなものでしょうか?

「これでしばらくは大丈夫。さっさと呪いを解かないとまずいね」

 空華さんは何やら太い本がぎっしりと詰まった本棚を漁ります。分厚い革で覆われた本が、床へ次々に落とされて行きます。

「……翔が心配?」

「え、」

「顔にそう書いてある」

 本を探す手を止めて、空華さんは私の方を向き直りました。
 私は思わず自分の顔に手を当てます。悲しそうな顔をしていたでしょうか。鏡がないのでよく分かりませんが。
 実を言いますと、少し心配です。このまま呪いが解ければ、終わるのでしょうか。

「翔の事が好きなの?」

「え?! す、好きじゃありません!!」

「嘘つきだなぁ。別にいいんだよ? 俺様も恋しまくってるしー、銀ちゃんに会う前までは結構ね?」

 へらへらと笑いながら、また本を探す作業に入る空華さん。
 私は体育座りをして、顔をうずめました。
 ……好き、かぁ。