コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.8 )
- 日時: 2011/10/08 14:21
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 実は桐生玲は山下愁でしたってオチです。ゴメンなさい。
第1話 ウェルカム、黒影寮。
翔さんが逃げましたので、昴さんに寮内を案内してもらう事にしました。
何故逃げるのでしょうか。分かりませんが、とりあえず理由があるのでしょう。
寮長ですからね。きっとお忙しいのでしょう。
「それじゃ、ここの部屋は全部俺らの部屋。ドアに誰の部屋か書いてあるからそれを目印に」
昴さんが示したドアには、確かに『椎名昴』という板がぶら下がっていました。
なるほど。ここは昴さんの部屋なんですね。
次に昴さんが指したのは隣の部屋。『東翔』と綺麗な字で書かれているので、翔さんの部屋です。
「オッケー?」
「ハイ。分かりました」
昴さんは、そっかと言って笑いました。
3番目に指されたのは、昴さんの向かいの部屋。そこには英語で『Mutuki Doumoto』と書かれています。
えーと、どうもとむつきと読めますね。
「睦月ー。いるかー?」
昴さんはドアをノックします。
すると、ドアが開き、金髪で碧眼の外国人さんが出てきました。
え、英語で喋った方がいいのでしょうか?
「あ、あの……My name is……」
「へ? いや、英語で喋らんといて。ワシは英語を喋ると言うスキルなんぞ持っとらんから」
関西弁でした。
私はぽかん、とした表情でその『むつき』さんを見上げていました。
「堂本睦月いいます。漢字はあの堂本で1月を示す睦月で堂本睦月。簡単やろ?」
「で、でも……部屋の表札は英語表記なんですけど」
あぁ、それ? と睦月さんは部屋の表札を取ります。
「ワシな、英語は喋れんが、英語は読み書き出来るんや。おかしな奴やろ?」
ケタケタと楽しそうに笑う睦月さん。何が楽しいんでしょう?
「ところで、お前さんは神威銀って言うんやろ? 聞いとるで」
「え、叔母からですか?」
初耳です。私はここで何て言われてるのでしょうか。
睦月さんは首を振りました。
叔母からではないとすると、誰でしょう?
「怜悟が幽霊から聞いたゆーててな。まぁ、そんなのはワシらの間じゃ日常茶飯事やし」
「へ、幽霊?」
その時、私の肩に手が置かれました。その手が、異様に冷たかったのです。
思わず私は、その手を振り払ってしまいました。
「驚かないで」
淡々とした言葉が降ってきます。
異様に背の高い男の人が、私を見下ろしていました。切れ長の目は鮮やかな紫色をしています。
睦月さんはその男の人を見ると、また面白そうにケタケタと笑いました。
「怜悟、怖がられてるなー。まぁ、シャーマンやから怖がられるのは仕方ないんやけど」
「うるさい」
怜悟、と呼ばれた男の人は私の方を見ると、頭を下げてきました。
「怖がらせて、ゴメン」
「あ、いえ。こちらもいきなりすみません」
手を振り払ってしまったんです、こちらは。
怜悟さんは申し訳なさそうにもう1度謝ると、名前を名乗りました。
「月読怜悟。よろしく」
昴さんにノートを見て御覧、と言われたので、私は手に持っていたノートを開きます。
叔母はご丁寧にも翔さんの前のページに、目次というものを書いていていてくれました。そこから堂本睦月と月読怜悟の名前を探します。
結構後ろの方に、2人の名前はありました。
『堂本睦月……サイオン』
『月読怜悟……シャーマン』
この、サイオンとかシャーマンとか何でしょう?
「あぁ、サイオンってゆーのは超能力者や。聞いた事あるやろ?」
「ハイ。スプーンを曲げる人ですよね?」
テレビ番組なんかで取り上げられてる、あのサングラスの人ですよね。
睦月さんは笑うと、自分の掌を私に向けてきました。
何もない掌に、睦月さんは飴を出現させました。
「これはワシの机の中にある飴を、物質転送(アポーツ)させたんや。瞬間移動やと、自分を転送させる事しか出来ひんからな」
なっはっはー、と笑う睦月さん。
ハッキリ言いますと、現実味がありません。魔法使いですか?
「俺も、見せる?」
「見せた方がええんちゃうの? 銀ちゃんは初めて来たんやし」
睦月さんに言われて、怜悟さんはスッと手を前に差し出しました。
するとどうでしょう。怜悟さんの手には、青い炎が灯りました。綺麗ですね。
「これ、幽霊の魂。具現化する」
さらに手をかざすと、青い炎は人の形を成しました。
……叔母さん。あなたは、こんなところで働いていたのですか。