コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。応援ありがとう!! ( No.81 )
日時: 2011/12/15 21:32
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 亀更新万歳!! ゴメンなさい

第6章 俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない。


 〜空華視点〜

 銀ちゃん、翔が好きなのか。
 長年の経験から、読心術なんていう技を使わなくても表情で分かる。翔に求められて、まんざらでもなさそうな顔をしていた。
 あぁ、くそ。何かムカつく。

「————」

 すると、俺様の心臓が大きく跳ねた。ラブ・ポーションの呪いが来たか。
 実を言うと、この俺様の目は『呪い』は殺せない。完全には殺せない。せいぜい抑えるだけだ。
 あの時は完全に殺すとか銀ちゃんにパチこいた(嘘ついた)けど、それは半分嘘。例えるならダムだ。
 水を一時的に溜めるダムだが、水があふれれば決壊してしまう。
 俺様のこの目もそうだ。
 呪いから来る力を一時的に収めるが、決壊してしまえば銀ちゃんに襲い掛かる。それも限界に近い。

(我慢、しないと)

 ここで銀ちゃんを救わなくてどうする。
 黒影寮の1員として、銀の鈴を守るのが俺様の役目だ。仕事なのだ。今だけは心を殺せ。
 理性で呪いをねじ伏せ、銀ちゃんの呪いを解く為の本を探す。確か、ラブ・ポーションについての呪いが書かれた本があったはずだ。かなりの量だけど。

「く、空華さん大丈夫ですか?」

「ん? 平気平気。知ってるでしょ? 俺様は呪いを殺してるんだよー」

 そんな事はない。理性で抑えているだけだ。
 いや、待てよ。
 ここで理性をなくしてラブ・ポーションに身を任せればどうなる? 銀ちゃんを押し倒して終わり?
 幸い、銀ちゃんが思いを寄せているであろう翔は蚊帳の外。結界は誰にも破れないぐらいに強固なものにしてある。

(——でも、そうしたら)

 悲しむのは誰だ。
 涙を流すのは誰だ。
 他でもない、銀ちゃんだ。

「は、ぐッ……!」

 1冊の本を手に取った時、めまいがした。そのまま床に膝をつく。
 呪いが漏れてきやがった。手が震えてやがる。頭ではダメだと考えているのに、体が銀ちゃんを求めてる。
 ダメだ。止めろ。抑えろ。理性で抑えろ。

「空華さん!」

「来るな!!」

 思わず乱暴な口調で、銀ちゃんに怒鳴ってしまった。
 駆け寄ろうとした銀ちゃんは、呆然とした様子で足を止めた。そうだ、それでいい。
 本に目を落とし、そして気づく。
『ラブ・ポーションについての解析』
 これだ!!

「銀ちゃん、そこに座って……」

「は、ハイ。でも、空華さんは……」

「俺様の事はいいから。ね? 座りなさい」

 ベッドに座らせて、本を開く。
 ラブ・ポーションの呪いを解くには詠唱をしなければならない。それもかなり長めの詠唱だ。全部英語で書いてやがる。
 最悪だ。
 俺様は英語が1番大嫌いなのだ。国語と同等に。

「あの、空華さん……。無理をしているんじゃ、あの、」

「大丈夫だってー。心配しな——ッ」

 目がくらみ、本を落としてしまう。
 手がガタガタと震えている。体が勝手に動き、銀ちゃんへと手を伸ばす。

「え、あの、空華さん?」

 俺様は、銀ちゃんを抱き締めてしまっていた。
 目を白黒させる銀ちゃん。抱き締めるのを止めようとしたけど、腕に力が入らない。
 こうなったら、あれしかない。

「銀ちゃん……!」

「は、ハイ!」

「俺様の腰に、苦無が数本収まってるベルトがかかってる。そこから1本、苦無を取って!」

「ハイ!」

 銀ちゃんは俺様の腰に腕を回して苦無を取った。
 かろうじて腕を動かし、苦無を握る。

 それを思い切り、腕に突き立てた。

「!!!」

 銀ちゃんの驚いた表情が見えた。
 苦無から血が伝い、ベッドに赤い斑点を作る。鋭い痛みが刺し、腕に感覚が戻ってきた。

「く、空華さん!」

「これでいい……んだ!」

 息を整える。
 大きく深呼吸し、目を閉じる。

「簡単に、惚れる訳には、いかねぇんだよ……!」

 そう。呪いで惚れるなんてそんなのはごめんだ。
 俺様は、正々堂々銀ちゃんを振り向かせて見せる。
 たとえ、銀ちゃんが翔を好きでも。

 さぁ、ここかからが正念場だ。