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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。応援ありがとう!! ( No.83 )
日時: 2011/12/16 22:21
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 亀更新万歳!! ゴメンなさい

第6章 俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない。


 〜空華視点〜


「【恋の鎖の鍵を解く】——」

 英語の詠唱が始まった。
 何とか即席で英語を読めるように術をかけたんだけど、正直頭がくらくらする。脳に直接働きかけるような我流忍術は、やはり好まない。
 ここは弟である天に頼むべきだったか?
 いやいや、あいつは実家に住んでるし。俺様、あそこには帰りたくないし。

「【第1に恋を抱きし者を解き放ち、心をこの場に固定せよ。
 第2に汝に恋を抱きし者を解き放ち、記憶をこの場に固定せよ。
 第3に汝の恋心を解き放ち、意思をこの場に固定せよ】」

 ぼやける目をこすり、必死に詠唱をする。
 銀ちゃんは、ただその詠唱を黙って聞いていた。心配そうに顔を歪ませながら。
 大丈夫だからって言ってあげたい。
 心配しないでって抱きしめてあげたい。
 でも、銀ちゃんを救えるのは、今は俺様だけなんだ。

「くーうーかー!!」

 ドアの向こうから昴の声が聞こえてきた。ドカドカとドアを蹴る音も。
 あぁ、黒影寮の奴らがついに押し寄せてきたか。だが甘い。翔の炎でも昴の蹴りでも、悠紀の言葉でも全然効かないし。睦月の超能力も効く訳がない。

「空華さん……」

「【揺らがぬ意思を持て。自分の恋を信ぜよ。結ばれし赤い糸の先に、汝の相手が見つかるであろう】——」

 心配そうに声をかけた銀ちゃんに笑いかけ、詠唱を続ける。
 すると、ドアの向こうから翔の声が聞こえた。

「今このドアを開け、銀をこっちに渡さねぇとテメェを殺すぞ。人を殺すのに結界なんざ関係ないからな」

「!!」

 銀ちゃんが立ちあがり、結界に向かって歩き出したのを止める。
 首を振り、「行くな」と願う。
 殺されてもいいから。
 あとで怒られても何でもいいから。
 今は続けさせてくれ。

「【I love you forever. Please believe your love.
 May those who make you happy appear.
 May you keep with smiling.
 I wish your happiness. 】」

 ここで終わる。
 すると、銀ちゃんの体から光が飛び出た。ピンク色の鎖だ。ピンク色の鎖が弾け、辺りにきらきらとした粉が降ってくる。
 うわ、綺麗だな。

「これで終わり。もう平気だよ」

 俺様はドアに貼ってある札をはがして結界を解いた。
 ドアを叩く音はすでに止んでいる。呪いが解けたのだろう。

「おーい、大丈夫か?」

「ん? 何が?」

 平然とした様子で蒼空が問いかけてくる。呪われていたのに気付かないのか。ま、それはそれで好都合だけど。

「おい、空華。その腕、どうしたんや?」

「ん? あー、これ? ちょっとねー。木に刺さっちゃったって言うかww」

 苦無を刺した腕を隠す俺様。本当は理性を保つために刺したとかは口が裂けても言えない。
 すると、銀ちゃんが俺様の腕をつかんだ。何をする気だ?!

「空華さん、こっちへ!!」

「うぉーい?!」

 俺様を部屋に引きずり込んで、ドアを閉める銀ちゃん。
 え、何? 今度は俺様が襲われる番?

「怪我の手当てをしますので、腕を見せてください!」

「えー。このぐらい平気だよ。心配ないって」

 忍びはこのぐらいの傷で苦しんだりはしないし。でも少し貧血気味かなー。
 でも、管理人である銀ちゃんにそんな事は通用しなかった。俺様の袖を無理矢理まくると、傷の大きさを確認する。

「ちょ、銀ちゃん?」

「じっとしていてください。今、治します」

 どうやって?!
 銀ちゃんは目をつむると、俺様がつけた傷跡を掌で押さえた。何だか、傷のところが温かい。
 やがて銀ちゃんの手が離れると、傷が跡形もなく消えていた。

「いつもこの調子で怪我を治していたんです。白亜さんも羅さんも傷をたくさん作りますからね!」

「そうなんだ。それが銀の鈴の力なのかな?」

「わ、分かりませんが。昔から出来た事なので」

 銀ちゃんは俺様に背を向けて、部屋から出て行こうとした。

「あ、あの空華さん」

「ん?」

「ありがとうございます。助けてくれて」

 銀ちゃんは、いつもの笑顔を浮かべて部屋を出て行った。
 あーぁ、あの顔でお礼を言われたら反則だろ。マジで。

「翔には、渡したくねぇな……」

 自然と、俺様は笑っていたかもしれない。


 解説。
 空華が最後に言った英語を日本語訳します。

 【私はあなたを永遠に愛しています。あなたは自分の恋心を信じてください。
  あなたが幸せでありますように。
  あなたが笑っていられますように。
  私はあなたの幸せを願います。】です。