コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.94 )
- 日時: 2011/12/24 21:54
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 誰得赤ずきんww
12月24日記念 クリスマス
〜翔視点〜
町を歩くたびに聞こえてくる、ジングルベルという歌。
彩るは赤と緑のクリスマスカラー。
世の中はクリスマスというイベントをやっているらしい。キリストの生誕をお祝いするんだとか何だとか。
確か、俺の親父がキリストの生誕に立ちあったとか何とか言ってたな。まぁ、親父は4500年も生きてるから当たり前か。
クリスマスなんて500回は見てるだろう。
「……チッ」
思い切り舌打ちをして、俺は電柱に飛び乗った。
暗い空の中、降ってくる綿のような雪。これぞ本当のホワイトクリスマスだ。
窓をのぞいて見えるのは、プレゼントをもらって笑うガキどもや母親。
中には恋人と過ごす——なんていうリア充。
うぜぇ。
はっきり言ったら超うぜぇ。
こっちは寒い中、体に鞭打って魂の回収やら審判やらをしてるのにもかかわらず、人間どもはのうのうと生きやがって!!
「うぜぇ!!」
愛用の鎌、炎神で足元の電柱を殴りつけた。ガツン、と音がする。
全員ぶっ殺してやろうか。
死神である俺なら可能! ハッハッハッ! 全員地獄に堕ちろそして死ねェ!!
「……んな訳出来るかよ……」
1人でツッコミを入れ、次の家へと向かう。
次の人で最後だ。確か老婆だったと思う。
「この雪、地獄の業火で溶かしてやろうかな……」
馬鹿な事をつぶやきつつ、俺はネオンがきらめく町を飛ぶ。
さぁて、どこにいるのやら。
***** ***** *****
「あー、こんな時に限って残業かよ。マジざけんなクソ親父」
黒影寮に帰還した時にはもうすでに夜中の11時を回っていた。辺りがシーンとしているところを見ると、全員寝ているな。
魂の回収があの老婆で最後だと思ったら、親父が『ごめんまだリストあったーテヘペロ』なんて言ってきやがった。それでさらに仕事時間が延びた。
今度会ったらタダじゃおかねぇ。
風呂でも入ってこよう。この冷めた体を温めるのにはその方がいい。
「うーっ……。寒い……」
死神でも寒さとか感じるんだなー、とか考えつつ、俺は浴場へ向かう。そして気付いた。
帰って来た時は騒がしくないように部屋へ空間を切り裂いて移動したが、どうやら食堂の電気が点いている。
誰か作業でもしてるのか?
「おーい、誰かいる——」
「あ、翔さん」
何だか白い毛糸を編みながら、銀が座っていた。
「今の時間帯、理解してるのか?」
「ハイ。してますよ? 11時ぐらいですよね」
笑顔で銀は言う。何をしてるんだか。つか寒くないのか。
いやいやいや、関係ない関係ない。早く風呂に入って寝よう。そうしよう。
「——くしゅっ」
銀が小さく鼻をすする。そして毛糸を編みはじめた。
……寒いんじゃねぇかよ!!
「ほらよ、ビッチ」
「うきゃ?!」
風呂上りに着るはずだったパーカーを銀の頭の上にかぶせ、俺は早々に退散する。
入った後に死神ルックになって部屋に移動すればいいか。それなら時間も短縮できるし寒くない。
「あ、翔さん! 待ってください!」
「あー? 一体なん——」
俺の首に何か巻かれた。殺す気か?!
と、思ったけど違かった。白いマフラーだった。
「あの、その……。皆さんのは結構時間内に出来上がったんですが、マフラーだけ毛糸が足りなくて……。すみません」
「——俺は何もやれないが? 死神は給料なんて出ねぇぞ」
神様だからな。
「いえいえ。私はいつも、皆さんに助けてもらってますから。それだけで十分ですよ」
銀は笑った。何事もなかったかのように平然と。だけどその顔は少しだけやつれてる。
これは相当無理したな。このビッチ。
「アホ。早く寝て来い」
「え、あの。このパーカーは?」
「お前が洗っとけ」
銀に背を向けて、俺はマフラーに目を落とす。
結構綺麗に編めていた。さすがマザー。手先が器用。
「……ハッ」
おそらく、これが人生の中で1番のクリスマスプレゼントだったと思う。
こんな役に立つものがもらえるとは思っていなかった。今度から仕事の際はこれを巻くか。