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Lv.17 約束「——君が成長したらの話」 ( No.321 )
日時: 2011/12/29 19:34
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: eZhua0R/)
参照: 魔王「一回、投稿する時に全部消えたんだよこれwwざまあwww」

「……大丈夫か、あいつら」

フォンシエは呆然としながらそう呟く。
残像効果により前がよく見えないフォンシエは、目の前の状況がよく分かっていなかった。
……とそこに。


「ほ、本気で死ぬかと思った……」
「流石は俺の妹だぜ……」
妙にタフな二人の声が聴こえ、フォンシエは軽く安堵した。
——一瞬舌打ちのような音が聴こえた気がしたが、フォンシエは気にしない方針でいくことにした。

「よくあの攻撃で生きていられたな、お前等」
「そんなの余裕のよっちゃんだっつーのks」「そんなの余裕のよっちゃんに決まってるだろ」
「二人同時に死語使うなよ!」
……何故この二人が知っているというのかはあえて言及しない方向でいこうとフォンシエは思った。

「…………はっ」
エテルナは正気を取り戻したらしく、二人の方へ慌てて駆け寄った。
「その、ごめんなさい! ギルベルトさん……とお兄ちゃん」
「おおうエテルナ! なんでお兄ちゃんという声が小さいんだ」「うるせえ納豆ぶつけんぞ」「すみませんでしたフヘヘ」
「ははははは、実にいとをかし」
そんな兄妹の美しき(?)戯れを、実に微笑ましい顔でみつめるギルベルトの図は、実にシュールであった。







「そういや、言いそびれてたんだけどさ。お前誰」
ギルベルトがジト目でマグヌスに問いかけると、マグヌスは涼しい顔で答えた。
「俺はマグヌス・グラーティア。エテルナの兄でいて、一人修行をして『いた』身だ」
いた、という過去形に違和感を覚えたエテルナ。
「いた……ってどういうこと?」
エテルナがそう問いかけると、マグヌスはまってましたとばかりに嬉しそうな表情で話し始めた。
「ある日、修行をしていた時に『リヴァイタス』に俺の才能を買ってもらえたんだ。それから俺はリヴァイタスに所属をしながら、強さを磨いているんだ。んで、今日は休暇をもらって——って、聞いてるのかテメェ」
「へあ? 何のことだ?」
「——————ッッ」
またもや二人がわーぎゃーと言いあい始めた。

……しかし。


————ん?

フォンシエはマグヌスの言葉に違和感を感じて、眉間にしわを寄せていた。
今までの出来事を回想し始めると、とある一人の言葉が思い出された。



——————「『リヴァイタス』、っていう組織の人間には絶対に近づいたら駄目、だよ」

不思議な風貌の青年——トロイの言葉。
どんな言葉にも何処かおちゃらけたものが混じっていたが、これだけは心にずしりと突き刺さるほど鋭く、そうして現実味を帯びていた。




「————ッッ! おい、マグヌスっ」
「ンなっッ」
フォンシエは無意識にマグヌスの肩を強引に掴み、そうして二人から少し離れたところまで引きずった。

「ってめ、いきなりなにすんだ——」「お前、リヴァイタスに所属してるっつったよな」
フォンシエの剣幕に一瞬ビビりつつも、マグヌスはこくりと頷く。
「リヴァイタスって、危ない組織とかじゃないのか。何か危険な事にお前を巻きこんでるんじゃないのか。……お前が、どんどん悪に手を染めて——」
「んな訳ねえだろッッッッ!!!!!」
マグヌスは我を忘れ、鼓膜を抉る程の大声でどなり散らした。
「確かに! 一部ではそう言われてるかもしれないさ! でもなあ、リヴァイタスはそんな悪の組織じゃねえ!! リヴァイタスは貧しい人に救いの手を差し伸べる慈善組織なんだよ! ……それにッ、『ジョゼフィーネ』様はそんな人々を見て心を痛めている心優しいお方で————ッッ」
「おい、お前等。何どなり散らしてんだァ? 臭い青春ドラマかっつーの」
「————!!」
どうやら、マグヌスは自我を取り戻したらしく、こほんと大きな咳ばらいをした。

「……さっきの事は、誰にも言うんじゃねえぞ」
マグヌスは、二人に聴こえない程度の声でそう囁く。

「…………」

——しかし、フォンシエはそれに応える事が出来なかった。







「さ、もう帰るぞエテルナ。これ以上遅く帰ると母さんが心配で倒れちまうよ」
「でも————ッッ」
エテルナは声に出そうとしたことを慌てて呑み込んだ。

————駄目。それ以上言ったら、フォンシエさん達に迷惑をかけちゃうもの……。

エテルナは自分にそう言い聞かせて、なんとか堪えようとする。
……しかし。

「…………ッッッ」
身体は自分の思い通りに動いてくれず、エテルナの瞳にはうっすらと悲しみが溢れだしそうになってきた。


————すると。

「涙なんて君には似合わないよ、エテルナ」
「ふぇ……?」
フォンシエはエテルナに近づき、そっと涙を拭いてやった。
「別に、俺はお前を嫌っている訳じゃない。ただ、自分の責任をとることが出来る事が出来ない歳だから、今はいけないってだけだよ。——まあ、つまりは」
そう言いかけて、フォンシエはエテルナの顔が見える位置までしゃがむ。

「君が成長したら、一緒に俺と旅しよう」

そう言うと、フォンシエはとびきりの笑顔になった。
「……ほんとに、ほんと?」
「ああ、ほんとにほんと。嘘ついたら針千本呑むよ」
「ほんとに、うそつかない?」
「ああ、約束だ。フォンシエ・コンテスティとエテルナ・グラーティアの約束」

「…………ぅう」
「って、ちょっ!」
エテルナは突然フォンシエに抱きつき、そうして。


「うわ、うぁあああああああああああああああああああん!!! フォンシエさんのばか!! ばかばかばかばかばがぁあああああああっ!!! ばか……ッッ、ほんとに、ばーかッッ……」


大声をあげて、ただただ泣き叫んだ。


「……全く、しょうがないお姫様だ」


そんな彼女を、フォンシエは優しく撫でてやった。







「——さて、そろそろ俺達も行かせてもらうよ。君のところのお姫様も泣きやんだようだからね」
フォンシエはそう言うと、先ほどから石ころを蹴り続けている異世界人を捕まえた。
「おう。……んじゃ、二度と遭わない事を願うぜ」
「それは俺様の台詞だっつーの」
捕獲された異世界人はそう言ってマグヌスにあっかんべーをした。
「それじゃあな。暗くなったから気をつけて帰れよ?」
「お前らこそ、盗賊に襲われて泣きべそかくなよ」
「うっせ!! この餓鬼!!」
「またね、フォンシエさん。……約束、守ってね」

四人は別れの言葉を交わすと、それぞれ別の方向へと足を進めていった。

















「あれ、そういやフォンシエのやつ、エルフ耳じゃなかったか……?


————まあいいか。どうせまた会うんだろうし、な」





——————もし、ここで彼がその事についてもう少し考えていたら、

彼らの運命は変わっていたかもしれない。