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- Lv.19 従者「メイド少女with誘拐事件 中編」 ( No.362 )
- 日時: 2012/01/03 21:59
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: eZhua0R/)
- 参照: 魔王「気付けば三本立てになってたねてへぺろ☆」
「ここ最近、このシアオンでは毎晩人々が誘拐されているのです。犯人の手掛かりは不思議なことに何もなく、攫われる人間も年齢や性別がバラバラなところから、動機も不明」
「それは嫌なパターンだな」
フォンシエがそう言うと、ミレイユはただこくりと頷いた。
「——その為に、私達メイドは主人が攫われないように見張っていたのですが……」
「んでも、結局攫われちまったと」
「はい……」
ギルベルトがそう的確な言葉をかけると、ミレイユは力なく返事をした。
「私の力が及ばなかったばかりに……」
ミレイユがそう言って項垂れると、フォンシエはそれを励ますようにぽんと肩を軽くたたいた。
「そんな風に自分を責めることはよくない。……それに、毎晩攫われるという事は、犯人は近くにいるかもしれない。くまなく捜索すれば見つかる可能性だってある」
そう言われた後に、ミレイユはしばらく考え込む。
すると、ある一つの出来事が脳内をよぎった。
「……もしかしたら、なのですが」
「ん?」「んだよ」
二人はミレイユの方を向くのと同時に、ミレイユは重い口を開いた。
「もしかしたら、『七大悪魔』が関わっているのかもしれません」
「……なんだか、誘拐事件や七大悪魔、そしてあのおっさんと、面倒くせぇなここ」
「まあまあ、そう言うなって。……って、ん? 七大悪魔だって?」
フォンシエはそう言うと、緊迫した表情でミレイユを見つめた。
「それって、確か————」
「はい。先日の『世界征服宣言』に書いてあったものです」
「ちょ、ちょっと待ちやがれ」
二人の会話に疑問を覚えたギルベルトは、半ば強引に割り込む。
「世界征服宣言、ってどういう事だよ!」
何も事情を知らないギルベルトは、脳内に?マークだらけであった。
「そういや、お前は何にも知らないのか」
「あたりめーだろ、昨日来たばっかりなんだから!!」
「……昨日?」
ミレイユがそう疑問を持つと、フォンシエはやれやれと頭を掻いた。
「……とりあえず、そのお屋敷についたらお互いの事について説明し合おう」
「それもそうですね」
「長話になりそうだからな」
それから、三人は早歩きへ屋敷へと向かっていった。
◆
「少し待っていてください」
ミレイユはそう言うと、屋敷の中へ駆けていった。
「——噂では聞いたことはあったが、まさかこんなに広大な屋敷だとは……」
、隅々まで屋敷の外観を観察しつつ、フォンシエは思わずそう呟いた。
————学校などのグラウンドが何個もありそうな敷地内に、フランスの宮殿のような屋敷。薔薇などの花々が色鮮やかに屋敷を演出し、幻想的な風景が広がっていて、そこだけが浮世離れしていた。
「まあ、俺様にはまだまだ足りないぐらいだが、それなりって感じだな」
捻くれた言い回しではあるが、珍しく褒めるギルベルト。
「相変わらず素直じゃねぇなあ」
フォンシエはそう言いながらも、口元はうっすらと緩んでいた。
————すると。
「お待たせしました。……二人とも、宿泊しても大丈夫だそうです」
「きたこれッッ!!」「本当か!」
二人は軽い足取りで、屋敷へと入っていったのであった。
◆
「あ゛ー、久々にマシなモン食ったぜ」
「すみませんね、俺の味は庶民の味でさ」
————あれ、こいつコーンスープ美味そうに食ってなかったっけか?
と、フォンシエは心の奥底で思いながら、二人は馬鹿みたいに長い廊下を歩いていた。
二人はやっとの思いで食事にありつけ、空腹に豪華なディナーが染みに染みた。
それだけでなく、やたらと豪華な大浴場に入って、疲れ切っていた脚を癒す事が出来たために二人は大満足だった。
……しかし、そんだけ広いとその分屋敷が魔宮じみていて、ひたすら廊下が長々しいのである。
「どへー、これじゃ湯冷めしちまうぜー」
「そうだな。……まあ、屋敷全体がちょうどいい温度だからまだいいけどな」
「そうじゃねえとここの屋敷の主人とっ捕まえてボコボコにするけどな」
「おいおい、今はここの主人様は不在だぞ」
「……ああ、そうか」
ギルベルトは声のトーンを落として、囁くように言った。
「この屋敷の主人は、七大なんとかに誘拐されちまったんだよな。……なんか可哀想っつか、哀れだよなあ。皆その主人っつーのを慕ってたみたいだしい」
「——そうだな」
————いや、七大なんたらって何だよ、七大なんたらって?!
フォンシエはそう衝動的にツッコみたくなったが、なんとか抑える事ができた。
「まあ、とりあえずはあいつの話を聞いてからだな。そうすりゃなんか案が浮かぶのかもしれねぇ」
「ま、まずはそうしないとだな。泊めてもらう訳だし」
————っぷぷぷ、お前にそんな善意があったのかよ、善意gうぇへひひひひひひひひ!!
フォンシエは死ぬほどそう言いたかったが、なんとか必死に耐える事に成功した。
「まあ、とりあえずは部屋目指してどんどん進もうじゃないか」
「そうだな下僕。よーしソリになれ!」
「なんでだよッッ!!!」
そうして、馬鹿二人はなるべく急いで部屋へと向かったのであった。