コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Lv.21 交渉「『俺たちだって手伝いたいんだ』」 ( No.429 )
日時: 2012/02/04 19:13
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: uW2z2G2E)
参照: 魔王「ひっさびさの投稿だね。何気に、銀賞受賞後初めてのだったり」

「ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホ」

「…………は?」
昨日寝ている間に頭でも打ったかのような言動のギルベルトに、目をぱちくりさせながら、フォンシエは出かける準備をしていた。
「だから、ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホだよ、ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホ」
ドヤ顔で言い放つギルベルトに、フォンシエは内心イラッとしつつ質問をした。
「——あれか、お前の世界……確か『チキュウ』にある『ニホン』のなんかか?」
「ちげぇよks、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国のウェールズ地方北部のアングルシー島に存在する村の名前だっつの。こんなの常 識 だ」
「訳わかんねえし……。つか、その呪文みたいな地名はあれか、チキュウでは皆知ってんのか」
「あたりめーだっつーの。ちなみに、そこの駅名はランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホ駅だ。似たような系統だと南阿蘇水の生まれる里白水高原駅とか長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅とかがあるな。勿論一般常識だ」
「可哀想だな、チキュウの人類は……」
大分間違っている事を吹き込まれているが、フォンシエは真に受けてしまったらしかった。







二人は夜更かしをしていたため少し遅めに起床した(とはいってもフォンシエは7時ほどに起床したのだが)。
相変わらず馬鹿みたいに長い廊下を歩いた後の朝食は、馬鹿みたいに美味しかったらしい。

そうして現在、二人は部屋で今日の行動について考えていた。


「俺様的には昨日は歩きまわったりなんだりで疲れたから今日は寝てたいんだけど」
「まあ、確かにそれもそうなんだが————」
フォンシエはそう言うと、自分の髪の毛先をくるくると指で弄びながらぼそりとつぶやいた。
「それもそうなんだけど、やっぱり誘拐事件を解決した方がいいんじゃないか?」
「めんどくせぇなあ。……大体、本来の目的は俺様のことについて調べるっつー事じゃねえかよ」
ギルベルトがベッドでごろごろしながらそう返すと、フォンシエはため息をついた。
「おいおい……。確かに本来の目的はそれだけど、俺達は野宿するかどうかのところで宿を提供してくれたわけだし、夕食や朝食まで作ってもらった訳だ「はいはい、分かりましたよスミマセンネー」

「…………はぁ」
白々しいの塊の台詞に、フォンシエはただ呆れるしかなかった。


「俺様的には、グレド疎林っつーところに行く前に、シアオン探索とかしてーんだよなあ。なんか退屈しなさそうだし」
「ああ、いいなそれ。アイテムとか調達できるだろうし、俺も久々に来たから色々見て回りたいんだよなぁ」
「やっぱ、RPG系の世界だから鍛冶屋とかあんのか?」
「そりゃ、なかったら武器とかどーすんだよ。あるに決まってんだろ」「かっけー! デビルかっけぇ! よし下僕、まずは鍛冶屋だ!」
「……そうか、そんなに行きたいのか」


————てな訳で、二人はシアオン探索をする事となった。







「……しかし、なんであいつはあんなにフリーダムなんだ」
誰もいない部屋で、フォンシエはため息交じりにそう嘆く。

その少し前に、ギルベルトが突然朝風呂してくると言いだしてからズカズカと部屋を出てしまった。

————んま、その間にミレイユにでも会ってこようかな。グレドに明日行く事とか、伝えておきたいし。
フォンシエはそう思い立つと、ミレイユを探しに途方もなく広大な屋敷を歩き回ることにした。


「……って、なんで俺今日も泊まれる前提で考えているんだ?!」







「ふう、やっと見つけた……」

暫く探し回っていると、廊下で箒がけをしているミレイユと出会った。
器用なことに、ミレイユは片手で箒を持って履き、もう片方の腕でハタキを持ち、窓の桟の上にうっすらとのった埃をはたき落していた。
「なあ、ミレイユ」
フォンシエがそう呼びかけると、ミレイユは掃除の手を止めて、フォンシエの方を振り向いた。
「はい、なんでしょうか」
「ああいや、別に掃除しながらでも構わないんだけどさ」
「そういう訳にはいきません。フォンシエ殿は客人でありますから」
ミレイユは眉一つ動かさずそう答える。
————真面目というか、堅いというか……。
まあ、初対面なのにいきなり下僕扱いするようなやつよりかはマシだけど。と心の中でフォンシエはそう呟いた。
「それで、フォンシエ殿は私に何か用でもあるのですか?」
「ああ、そうだ。……あのさ、ミレイユ。これからの事なんだが————」

フォンシエはそう言うと、今日明日の予定をミレイユに話した。



「本当ですか」
ミレイユは驚いたような顔でフォンシエを見る。
まさか、彼らが協力してくれるだけでなく、グレド疎林まで行くとは思っていなかったらしい。
「まあな。やっぱお礼しなきゃだしさ」
「しかし、あそこは危険な場所で————」「それは承知しているよ。だから、今日はシアオンに行って準備を整えてから、明日向かおうと思っているんだ」
「でも……」
ミレイユがそう言って言葉を詰まらせる。
その直前に、フォンシエがミレイユの頭に手をぽんと乗せていたからであった。
「確かに危険だ。でもさ、いずれかにはあそこへ行かなければいけない。もしかしたらそこに、君の主人がいるかもしれないからね。それなら、遅くなって死んでしまっている時に見つかるよりは、早い内に行った方がいいだろう?」
「…………」
「だから、俺達が行くよ。心配しなくても平気だ。俺だけじゃなくて、頼もしい異世界人さんもいるからな」
「そういえば、ギルベルト殿は異世界から来たのですよね」
「そうそう。いまだに信じきれないんだけどな」
そう言うと、フォンシエはにこりと笑った。

何故だか、その笑顔を見ると、少し不安が和らいだ。
心配ではあるが、この人なら平気かも知れない、と、そんなように思えるミレイユ。



「……無理はしないでくださいね」

ふと、気付けばそんな台詞を呟いていた。