コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Lv.24 闇夜「真夜中の青年」 ( No.470 )
日時: 2012/04/25 17:00
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: ejYHSi8p)
参照: 魔王「モブの癖にでしゃばるなよっていう感じだよねえ」

その後、二人は探索だけでなく誘拐事件の情報収集をした二人は、夜遅くになってやっと屋敷に帰ることができた。

「ぐあー」
ぼふり、とベッドに倒れる異世界人を横目に、フォンシエは何かを紙に書き込んでいた。
最初はその様子をスルーしていたギルベルトであったが、あーでもないこーでもないとぶつくさ呟いてるフォンシエに嫌気がさし、むくりと起き上がってフォンシエを睨みつけた。
「ん、どうしたんだ?」
どうやら無自覚で独り言を呟いてたようだ。
「なんでキョトンとしてんだよ下僕。お前はあれか、音漏れしやすい無能なヘッドフォンか」
「ヘッドフォンはわからないが悪態をつかれていることは十分分かった」
「ってそんな事はどーでもいいんだよks。何書いてるか3文字以内で述べよ」
「んな事出来る訳ねーだろ! ……まとめ?」
「分かる訳ねーだろそんなのでよォ。さっさとその紙よこせ」
「暴君だ……」
フォンシエはそう呟きながら、ギルベルトにその紙を渡した。

「えーと、『エメラルド色の髪の少女』、『ルビーの瞳の少女』、『薔薇のような少女』、『狐耳の少女』……。なんだか色々あんのな」
大量の情報に一通り目を通しながらギルベルトが呟くように言う。
「しかも、シアオンでは見かけない顔らしいから、恐らく犯人——というか、七大悪魔なんだろうな、『狐耳』っていうところからして」
「ヘンテコな耳のくせに何言ってんだよ」
「ヘンテコ言うな、一応希少価値なんだぞコレ。——で、なんで狐耳が七大悪魔だって言い切れんだ?」
「それはな————」

と、フォンシエが言おうとした途端にノックの音が響く。
「あ、入っていいぜ」
ギルベルトがそう素っ気なく言うと、丁寧に扉を開けてミレイユが入ってきた。
「お話し中すみません」
「いいや、いいんだよ。それより、わざわざこっちに夕食を運んできてもらってすまないね」
「いえ、それが私の仕事ですから」
ミレイユは食事をテーブルの上に並べながら、きっぱりとそう言った。
「お前の仕事は分かったからさっさと運べやks」
「なんっでお前はいちいちそんなに上から目線なんだよッ!」







「疲れた……」
と、無意識に声が漏れる。
その後、夕食でぎゃーぎゃーと騒ぎ、風呂の遠さにケチをつけ、寝るのかと思ったら屋敷探索に行った友人の事をふと思い出して、どっとため息をついた。
「まあ、嫌ではないんだが胃痛がひどいな」
なんだか自分が一気に年を取ったような気がして嫌になったが、首を横に振ってその気持ちを払拭した。
「しっかし、いい景色だな」
フォンシエは目の前の景色をぼおっと眺める。

実をいうと、フォンシエは屋敷を出て、街の中心部にある大きな橋の上にいた。
気分転換に軽く寄ってみよう程度の気持ちではあったが、なんだか随分遠くまで来てしまった、と少し後悔していた。
「まあ、綺麗だからいいんだけどさ」
「そうだよね。僕も初めてこの街に来たんだけど感心したよ」
「————!!」
フォンシエは突然の出来事に驚き、そうして反射的に声の方向へと体を向けていた。
「やあ、初めましてかな」
そこにいたのは気のよさそうな、長身の青年であった。

顔立ちが整ってはいるが、いたって平凡な容姿。
髪の色は茶色で、見た感じ普通な好青年、と言ったところであった。

しかし。
————彼の瞳、まるで鮮血そのもののような色をしているな。鍛冶屋の少年のような程ではないんだが、でもどこか妖しい。なんだか吸い込まれるというか、あまりいい気分になるものじゃないような色だ。しかも瞳だけではない。なんだか只者ではないような、そんなような……
「ちょっとちょっと。僕の顔に何か書いてあるのかな?」
その言葉によって思考回路がシャットアウトされたフォンシエは、慌てて返答の言葉を口にだした。
「すまない、悪気はなかったんだ」
目線を下げてそう言うと、青年は少し困ったように笑う。
「いや、別にいいよ。僕は気にしていないし。それに、この瞳の事はみんなに変な風にみられるから、もう慣れてるしね」
「それでも、人の顔をジロジロ見ることはよくないだろう。本当に申し訳ない」
そういって頭を下げると、青年は慌ててフォンシエの行動を止めた。
「だーかーら。いいんだよ、別に。ていうか、そんな風に気を遣わなくてもいいよ。僕なんて所詮街人Aだしね」
けろりと青年はそう言う。その一言によって、フォンシエはなんとなく「この人はトロイと同類なんだな」と思った。

「そういえば、君の名前を聞きたいな。教えてくれる?」
フォンシエは一瞬迷ったが、別に教えて困るものもないだろうと思い、
「ああ、構わないよ。俺はフォンシエ。普通にフォンシエと呼んでもらって構わない。で、貴方は?」
「僕の名前はブラム。宜しくね、フォンシエ」
そういってにこりと笑うと、ブラムはすっと右手を差し出した。
「よかったらでいいけどね」
「勿論、こちらこそ」
フォンシエはそういうと、右手を差し出し、そうして二人は軽く握手をした。


「へー。フォンシエは旅をしているんだね」
「まあ、旅とはいってもまだ出発したばかりなんだけどな」
暫く話している内に、二人は大分打ち解けていた。
「で、ブラムは?」
「僕は仕事で来たんだ。……って、そういえば」
ブラムは腕時計を見た後、焦ったような表情になる。
「危ない危ない、そろそろ時間だから行かなくちゃ」
「そうか。少し残念だが、それならしょうがないな」
「そう言ってもらえて助かったよ。さて、それじゃ、またいつか」
「ああ、じゃあな。今度会える時があるといいな」
そう挨拶を交わした後、ブラムは軽く手を振りながら走り去っていった。
「……なんだか、結構いい奴だったな。最初変に勘ぐったりしたのが申し訳ないよ」
フォンシエはため息とともに、そう独り言を吐き出した。

「さて、そろそろ戻らないとな」
明日は戦うことになるからな、という台詞を心の中で呟いて、フォンシエは屋敷へ向かって歩き出した。







「なんだか、いや、絶対。また彼に、いいや、彼等に会うことになりそうだね」

掠れた声は、まるで本当に混ざり合うかのように、夜の闇にふうっと溶けていった。