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Lv.26 奇襲「謎の青年と小道具諸々」 ( No.473 )
日時: 2012/04/30 21:08
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: oj1DPSdh)
参照: 魔王「……彼スカウトしようかな」

「……お前、なんで攻撃を仕掛けたんだよ」
ギルベルトは落ち着いた声で、しかしその中に殺気を含ませながら尋ねる。
「ん、なんか勘違いしてねえか? お前」
青年はわざとらしくやれやれ、という仕草をした。
「まー確かに、俺はお前等の邪魔はしねえつったな。でもよ、俺はお前等にそれ以上通られたら仕事の邪魔になるんだよ。だからさっさと消えるか死んでくれねえ?」
青年は苛立ちを隠そうともせずそう言うと、ギルベルトはふう、とため息をついた。
……会話が通じねえ相手なんだな、と諦めの意味をこめて。

「なら、俺様からも一言言わせてもらうぜ。テメーが死ね!!」
ギルベルトはそう叫ぶように言うと、青年が上っている木めがけておもいきり叩き斬った。
メキメキ、という破壊音と共に崩れていく。ギルベルトは何故か楽しそうな表情をしていた。

そうして、木の先端が地面にぶつかった瞬間。

「!!」
ギルベルトめがけて木の棘が高速で飛んでくる。
間一髪のところでギルベルトは大剣で防御した。一歩遅かったら頭をぶち抜かれて死んでいただろう。
「へっ、案外やるじゃねえか。少しは楽しめそうだぜ」
青年は何事もなかったように立っていた。恐らく、倒れる前に地面に飛び降りたのであろう。
「まさかそんなちゃっちい小道具を仕掛けていたとはな」
ギルベルトは皮肉混じりにそういう。
「小道具、ねえ……。お前のお連れさんは、そんな小道具にボロボロにされてるけど?」
「!?」
即座にフォンシエの方に顔を向けると、そこには見るも無惨な男の姿があった。
気絶するかしないかギリギリの状態で、漏れ出す息は虫以下の弱々しさであった。
「……、大丈夫か」
ギルベルトが冷えきった声で訊ねると、フォンシエはなんとか作り笑いをした。
「だいじょうぶ。えるふみみは、そうかんたんにはしなないよ……」
ヒューヒュー、という息の音と共に、フォンシエはそう言う。
ギルベルトは溜め息をついた後、ゆっくりとフォンシエの方へ歩いた。
「おい、下僕。お前は寝てろ。もういいから」
「……。すまない、そうさせてもらうよ」
フォンシエがゆっくりと瞼を閉じたのを確認した後、ギルベルトは剣先を青年の方へ向けた。
「この馬鹿のせいで負担が増えたが、お前と特別に相手してやるぜ。感謝しながら死ね」
「ヒュー、驚いたぜ。守りながら戦うつもりなのな」
青年は本当に感心したような表情をした後、また先程のような苛立ちを含ませた笑みを浮かべた。

「その真新しい剣で何が出来んのか、俺がしっかり見ておいてやる」







完敗だった。


「…………ッッ!」
「なんだよ。あんなに大口叩いてたのにこのザマかぁ? 言っておくが、俺は下っ端の下っ端レベルの人間だぜ。んま、やっぱり餓鬼は餓鬼か」
ギルベルトはボロボロだった。
顔は何倍も膨れ上がるほどに腫れ、骨はもう何本折れたのかは忘れてしまった。五本目からカウントするのを諦めた。そんな余裕はすぐに消え去った。
しかも、青年は大剣相手に素手で闘ったのだ。手加減しないと可哀想だから、という理由で。
完敗だった。
「ほら、起きろ。今からチャンスをやるからよ。……お前等大人しく引き下がれば俺は何もしねえ。だが、これ以上殺るっつーんなら俺はお前等をいたぶり殺す」
俺って優しー。と呟きながら、青年はそう交渉する。
ギルベルトはその言葉を聞くと口元を緩ませ、ニヤリと笑った。
「……そうか、そーいうのな」
近くの木にしがみつき、弱々しく、しかししっかりと立ち上がり、声を発した。

「断る」

凛とした声が、青年だけではなくフォンシエの耳にまで届いた。
「俺様はそういう弱者じみた行動はとりたくねーんだよ。つーか、なんで俺様が死ぬみたいな流れになってんだよ。これから這い上がるんだっつーの」
もう勝算もないのに、不可能なのに、ギルベルトは渾身の力で『強がった』。
「……へえ、そうなのな」
傷だらけのギルベルトの全身を見てから、青年は口元だけ笑みを浮かべて、最後の一発を喰らわそうとした

その刹那。


「たあああああああああああああっっ!!」
「!?」


突然、叫び声と共に、眩い光が青年を襲った。