コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 俺様コックの腕前は? ( No.527 )
- 日時: 2012/08/02 10:54
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: WcizgKjn)
- 参照: ※作り方は参考にしないでください。
「テメーら、今日は俺様の番外編だぜ。泣いて喜べ」
安定のドヤ顔でそういい放つギルベルト氏。
「あのー、さ。ギルベルトさん」
異様に低姿勢な年上の狩人フォンシエは強ばった表情でそう囁く。
「あん?」
「いやー……、ちょっと言いづらいんだけどさ」
「あるんならさっさと言いやがれks」
ギルベルトが睨み付けながらそう言うと、フォンシエはわざとらしく咳払いをして言った。
「いや、普段着にピンクのフリフリエプロン姿はあんまり決まってnぶぐッッッッッッ!!」
「んがッッッ!」
口を押さえてケラケラ大爆笑し始めたフォンシエに蹴りをいれて、ギルベルトは深いため息をついた。
「俺様だって嫌なんだよ……でも俺様の番外編っていうし……作者がファンサービスだからとか言うし……ミレイユがこのエプロンしかなかったって言うし……」
「も、申し訳御座いません……」
ミレイユはしょんぼり(わかりづらいがしょんぼりしている)とした表情でそういうと、ギルベルトは素っ気なくミレイユをフォローした。
「別にお前は悪くねーからいいよ。下僕(あいつ)が悪い」
「んな、俺なんもしてませんけど?!」
「黙れks」
「…………」
その時のギルベルトは主人公にあるまじき形相だったという。
「つー訳で今からレッツクックしまーすだりぃ」
「——えーと、今回は何を作るんですかね先生」
フライパンで肩たたきしている異世界人をジト目で見ながら、フォンシエは形式だけでも尋ねる。
「料理っつっても俺様どんぶり飯ぐらいしか作れねーからな。とりあえず今回は無難に親子丼でも」
「おやこどん?」
ミレイユが首を傾げながら問いかけると、ギルベルトは驚いたような表情になった。
「え、もしかして親子丼無いのか、この世界」
「はい。初めて聞きました」
「……へえ。そりゃ吃驚だな」
フライパンをぶんぶん振りながらギルベルトは呟く。
「なら、なおさら作り甲斐? があるんじゃねーか。うーし、俺様流親子丼を堪能させてやるぜ」
「おー」
「……嫌な予感しかしねぇ」
「あん?」
「いーや、何でもないよ。ささっ、ギルベルトシェフ、料理の方を」
「…………」
ギルベルトは暫く相方をにらみつけて、それから料理の方に取り掛かった。
「えーと、まず割り下を作りまーす。だしとかみりんとか酒とか醤油とか砂糖とかを適当にぶっかけて煮る。そして放置」
「成程……」
「もう初っ端からハラハラするんですけど」
フォンシエはそわそわしながらその様子を見ている。一方日本好きのミレイユはメモしているようだった。
「ミレイユ。メモはとっても構わないだろうけど、やり方とかは適当みたいだから、あんま参考にはしない方がいいぞ」
「はぁ」
ミレイユはそう返事しつつも、それでもメモするつもりなようだ。
「おーいてめーら、聞いてんのかー」
「ああ、聞いてる聞いてる」「はい」
「んじゃ、次。玉ねぎとか鶏肉とか、入れたい具をドバドバ斬る……じゃなくて切る」
それはそれは見事なまでの適当な包丁さばきであったという。
「そして…………
into the NABE!!」
「うええええええええええええええええええい!?」
ギルベルトは豪快に、というか投げ飛ばすように具を鍋に入れた。びしゃりと音を立てて割り下が跳ねる。
「って、うるせえぞ下僕」
「いやいやいや、それは流石に」「だから言ってんだろ、俺様流☆親子丼、だ」
「はいはい……」
フォンシエは呆れ顔でそう言った。
「そうして、鶏肉に火が通るまで煮て……せい!!」
「うおう! って吃驚した、なんだ卵割っただけかよ」
「どんな時にもダイナミーック、それが漢の料理だ」
「いや、ドヤ顔で言ってもあんまり決まってないから、それ」
「ところでギルベルト殿、なんだか焦げ臭くなっている気が」「ってやべ、これ強火だったし」
ギルベルトは慌てて弱火までおとす。
「あー、なんかこえ——」
フォンシエは苦々しい表情でそう呟いた。
「うし、通ったっぽいな。それじゃあこの溶き卵をぶっかけまーす」
じゃばじゃば溶き卵を入れるギルベルト。フォンシエはその中に殻が混じってそうで不安であったが、それが無いことを祈りつつ、ただ黙ってその様子を見ていた。
ミレイユはメモをとりつつ、ちょこちょことイラストを描いていた。フォンシエがそっと覗いてみると、そこにはデフォルメされた可愛らしいピンクのフリフリエプロン着用したギルベルトが描かれていた。
「えーと、これを飯にぶっかけて、と。よし、完成!」
「美味しそうです」「外見は悪くないな」
二人はそれぞれの感想を呟きながらフォーク、スプーンを手に取る。
「って、ちょっと待った。これはんなので食うんじゃねえ。これを使え」
そう言って、ギルベルトは二人に差し出す。
「これは?」
「箸だ。日本はこれでたべんだよ。食べ方は俺様がレクチャーしてやるから、これで食え」
「箸……これが箸ですか。書物では見ましたが、実物は初めて見ました」
「そうかそうか。それじゃ、お前にやるよ、それ」
「え、いいのですか?」
「おうよ、使え使え」
ギルベルトがそういうと、ミレイユは一瞬だけ嬉しそうな表情になった。
「ほれ、冷めないうちにいただけ。残したら殺す」
「おお、怖い怖い。……それじゃ、」
「「いただきます!」」
「おう、召し上がれ」
[完]
「ってかたっ、鶏肉かたっ! というかなんだこのダシ、危険な味がするぞこれ?!」
「いいから黙って喰ってろks!!」