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Lv.29 城内「異世界人/メイド*狩人」 ( No.531 )
日時: 2012/08/04 22:49
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: WcizgKjn)
参照: 魔王「今回は世移様の技を使わせていただいたよ」

「うぐッ——!」
フォンシエは咄嗟に鼻をつまみ、苦々しい表情になった。
「ん、どうかしたか?」「大丈夫ですか?」
二人がそう声をかけると、フォンシエはふうとため息をついてから手を下ろした。
「いや……。なんというか、危険な臭いがする」
「それってどういうのだよ?」
ギルベルトがそう尋ねると、少し躊躇ってからフォンシエは答えた。
「……腐った死体の匂いがする、しかもそこら中」
「な、本当に人間喰ってたのかよ」
「正確に言うと『人の魂』を喰らうとのことですが……。まあ似たようなものでしょう。十分に警戒していかなければいけませんね」
ミレイユはレイピアを握りしめ、そう言う。どうやら緊張しているようで、うっすらと汗が滲んでいた。
「とにかく、気を付けていこう。もうあんな目にあわないように」
「————ああ」
二人は悔しそうな表情をしていた。


「ってい! 『業火剣』!」
「————っく! 『パラサイット』!」
次々と襲い掛かる悪魔系の魔物を倒していく三人。
段々魔力も消耗してきており、中々厳しい戦いではあるが、それでも負けたら街に強制送還されて最初からのスタートとなる、そう簡単に負けられない。
「くそッ! 全然先に進めねえ!」
ギルベルトは口の中に溜まった自分の血液をペッと吐き出しながらそう言い捨てる。
「向こうも必死なんだろう、だが、俺達も負けないぞ!」
フォンシエはなるべく自然に見えるように笑いながら弓を放った。矢はモンスターの頭上に次々と命中していき、モンスターは奇声を上げながら消滅していく。
「! ギルベルト殿、危ない!」「!?」
ギルベルトの背後にモンスターが襲い掛かろうとしていた直前、ミレイユは斬りかかる。
「『飛水衝弾』!!」
そう叫ぶと、レイピアの周りに数多くの水玉がくっついた。それを高速で薙ぎ払うと、水玉がモンスター目がけて高速で襲い掛かる。
モンスターは奇声を上げながら消滅していく。
「よし、数が大分減ったな。今のうちにダッシュで階段まで急ぐぞ!」
「はいよ!」「了解です」
三人は脳内のスイッチを切り替え、走ることだけを考えて先を急いだ。


「おや、分かれ道みたいだな」
階段を上った先に、更に上へと続く道と、その階の通路の二つがあった。
「やっぱ、上じゃね?」
ギルベルトが気だるそうにそう呟く。
「かといって、片方だけいってそこが外れだった場合が大変ですね」
ミレイユは冷静にそう指摘する。
「んー、なんだか通路側の方に危険なにおいがするんだよなぁ……」
フォンシエはうんうんと悩みながらそう言う。
「じゃー、通路?」
「いや、階段の奥からもするんだよなぁ」
「めんどくせぇ! どーすんだよ!」
「やはり、二手に別れるべきでは?」
次々と意見が飛び交う。勿論時間がある訳ではなく、三人とも焦っていた。
————そんな時。
「……じゃあ、俺が通路側へ行く。少し気になるんだ、あっちは。だから、二人は階段を上ってくれ」
「しかし、それではフォンシエ殿が」「大丈夫だよ。俺はそう簡単に死なないさ」
「なら、そうさせてもらうぜ。ヘマすんなよ」
「了解」
フォンシエは軽くウインクをして、弓をぎゅっと握る。
「それじゃ、頑張れよー!」
「強制送還されてたら鼻で笑うぞー」「気をつけてくださいね」
フォンシエは走り去っていく。

「……さ、俺様達も行くぞ」
「はい」
二人は表情を引き締めて、階段を駆け上がっていった。







「あらあら、あのエルフ耳のお兄さんは随分と凄い能力があるのね」
エメラルド色の髪の乙女、リティアが狐耳をピクリと動かしてそう呟く。
「しかし、この階段が視えないように幻惑魔法は仕掛けておいたはずなのに……見破ってしまうとは。世界に選ばれた人間を侮っていたようですわ」
リティアはしゅんと尻尾を垂らす。
「このままだと戦う事になってしまいますね……。きっと私のモンスター(可愛いお友達)もやられてしまうでしょうし」
リティアはそう言うと、薔薇の模様が刻まれた、神秘的な杖『ラ ベル オ ボヮ ドルマン』を手にとった。

「……しかし、どうして私のところに?」







「うお、段々茨が凄くなってるな」
ギルベルトは通常の薔薇の何倍もの太さの茨を避けながら言う。
「そうですね。しかし何故……」
「なんつーか、『眠れる森の美女』と似てるな。城とか茨とか」
「ねむれるもりのびじょ?」
「ああ。——って、此処には無いんだったな。ま、俺様の世界の童話だな。後で教えてやるよ」
「有難う御座います。とても気になります」
ミレイユは口元を綻ばせて言った。
「しっかし、此処の主人は美少女とか言うしそれっぽいよなー。それなら、『王子様』とかもでんのか?」
ギルベルトがそんな風に呑気な事を言った途端、突然背後から何かがぶつかってきた。
「んなッッ! なんだ、今の!?」
「————どうやら、茨自体が敵みたいですね」
ミレイユがキッと茨を睨みつけて言う。
「まさか、んな事が——って、今更そんな事言っても無意味か」
ギルベルトはニタリと笑い、大剣を構える。
「茨が敵なら、燃やしつくして先へ進むだけだ!」
そうして、ギルベルトは得意技である『業火剣』を放った。







「どうやら、予想道理こっちが外れルートみたいだな」
フォンシエが緊張した様子で呟く。
「じゃあー、どうしてこっちにきたのん? ばかなの?」
ジト目でニヤニヤと笑いながら、悪魔の少年でありリティアの部下、アヴァリティアが言う。
「いや、そういう訳じゃない。もし俺含めて全員で正解ルートに言ってたら、お前が乱入してくる可能性があったからな。大ボス一人だけを片付ける方が楽だし」
「っへー。いいヤツなんだねー。そういうの、キライじゃあないぜ」
そう言いながら、手を頭上に上げ、闇の力の塊を作る。

「————ヒヒ、なんかよこせコノヤロウ」
「断る!」

火花を散らせ、一体一の決闘が始まった。