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- Lv.33 道化「Yes!ハンプティ・D GoGo! 前編」 ( No.549 )
- 日時: 2012/08/19 20:57
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: WcizgKjn)
- 参照: 魔王「賑やかになったねぇ〜」
二人が抱擁している間に、アヴァリティアはリティアの服の裾を軽く引っ張り、少し離れたところまで移動した。
(——なんで『せかいにえらばれたニンゲン』いがいが、このバショにこれるようになっているんですかね)
アヴァリティアがリティアにぼそぼそと耳打ちする。
(多分、私達の負けっていうことになったからだと思う。魔王様に『オシオキ』される事になっちゃうだろうね……)
リティアは重い表情でそう言うと、アヴァリティアは首を横に振った。
(だいじょーぶです、あんしんしてください。いくらマオーサマでも、リティアさまにはゆびいっぽんふれさせませんからっ)
(ふふっ……。ありがとう、アヴァちゃん)
「? どうしたんだよ、二人とも」
ギルベルトが怪訝な顔つきでそう訊ねると、二人はなんでもない、と言って元の場所に戻った。
◆
「挨拶が遅れてごめんなさい。私はローズ・アデレイド。シアオンの領主ですわ」
大分落ち着いたらしい、先程までミレイユを抱きしめていた女性——ローズは、恭しく一礼した。
「今回は私達の捜索をしてくれてありがとうございました。……それと、ミレイユちゃんを護ってくれて本当に感謝しています」
「全くだぜ。本当に死ぬかと思った」
「おい、そんな言葉遣いは——」「ああ、いいのいいの。私堅苦しいの好きじゃないから、むしろそのぐらいが丁度いいわ」
思っていたよりもオープンな人なんだな、とフォンシエは思った。
「寧ろ、それよりも私のミレイユちゃんに手を出していないかどうかの方が重要だわ……」「んな事するわきゃねーだろ! なんで俺様見て言うんだよ!」
「ほら、若さ故の過ちがね、ぐちゃどろにねっ?!」「お嬢様、落ち着いてください。皆ドン引きしてます」
ミレイユの声によって我に返ったのか、ローズはわざとらしくこほんと咳をした。
————思ってたよりも激しい人なんだな。
とフォンシエは心の奥底で呟いた。
「こらー!! まるでハンプティを脇役みたいな扱いにするんじゃないのー!」
「だーっ! うっせ!」
突然ローズの隣に突っ立っていたちっこいの(byギルベルト)が叫び散らした。
「よし、皆ハンプティさんの方向いたね? よしよし、それならいいんだよムッフーン!」
「なんだこの自己主張」
「ハンプティはハンプティ・ダンプティっていいまーす!」
やたらとぶかぶかなマジシャンの衣装を身に纏ったクリーム色の髪の少年——ハンプティが元気に自己紹介をする。
「ハンプティ・ダンプティってあれだろ? 擬人化卵で塀の上から落っこちる駄目駄目な奴だろ?」
「駄目駄目いうなー! 失敬な、というかー、これ芸名だしぃー」
「芸名ってなんだよ……」
————まーたトロイや鍛冶屋みてーのが増えたな……。
とギルベルトは呆れながら思った。
「しかし、どうしてハンプティさんが此処に?」
本来はもっと早くにするべきだった質問をミレイユが問いかける。
「いっやー。話すと長くなるんだけどね。まあそれやんないとどうしようもないしやるかー」
ハンプティは自分の腕よりも長いであろう袖をぱたぱたさせながら、説明し始める。
「えーと、まず、王都とシアオンの間にある、でっかーい山はご存じかな?」
「んにゃ、そういやー街探索の時に見た気がするな」
「そそ、それそれ。ちなみに名前は『モン リッシュ』って言うんだけどね。まあ、それの頂上に町があるんだけどー」
一旦言葉を切って、ハンプティはすぅっと息を吸う。
「なんとなんと、その町はサーカス団が運営している稀有な町でー、しかもそこの団長——あ、町長みたいなのね——それがハンプティさんなのです!」
「…………えっ」
ギルベルトは硬直した。フォンシエは何とも言い難い表情をしている。
「うわーん! 完璧に疑われてるー! ていうか、ハンプティはこれでも26歳なんだぞー!」
「え、ああそうかそうか。2足す6で8歳かー。さんすうできるようになんたんでちゅねーすごいでちゅねー」
「こいつムカツクー! だから26歳なんだってばー!!」
「ええ、ハンプティちゃんは26歳よ〜」
「はい、そうですよ」
「「何……だと……?」」
二人は驚愕の表情を露骨に浮かべる。
「んなんありえねーどう考えてもファンタジーぐらいでしかありえなってそういやファンタジー世界じゃんここー」
ギルベルトは棒読みでそうぶつぶつ呟く。正直不気味である。
「しかしリティアさまー。カンゼンにおいてかれてますよねボクたちー」
「そうかもね……」
「ってあら、こんなに可愛い狐耳っ娘がこの世に存在するなんて……! はぁ〜ん、可愛い、お持ち帰りしたいわ〜! もふもふっ」
「ぴゃあああああああああああああ?!」
「ちょ、リティアさまにてをだすなぁ————っ!!」
リティアに抱き着く寸前ぐらいのローズを慌ててアヴァリティアが止める。
「お前の主人って……そういう趣味なのか?」
フォンシエが呆れ気味にそう訊ねると、
「ええ、まあ……。アデレイド家の屋敷がそうだったかと思いますが、お嬢様の使用人のほとんどが女性です」
とミレイユが涼しい顔で答えを返した。
「恐ろしきレズ……」
「ん、レズって何だ?」
「あー、あれだ、百合だ百合」
「いや、更に訳が分からないんだが」
「しかし、あれねぇ。こんなに悪魔が可愛いとは思わなかったわ〜。うふふ、夢が広がるわね」
「あう、あうぅぅ……」
「うぐぐぐぐぐ……オマエ、ニンゲンのクセにナマイキだぞっ」
「お嬢様に対してそのような口のきき方をするとは——斬りますよ?」
「ぎゃにゃあああああん! ごめんなさいレイピアむけないでー!」
と、先ほどまでの戦闘が嘘のように賑やかになった。