コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第一ステージ⇒第二ステージ b ( No.559 )
- 日時: 2012/08/22 14:19
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: Wbx5dL14)
- 参照: トロイ「リヴァイタス、ねぇ」
グレド疎林のはずれに、蒼を基調とした、統一された服装を身に纏う数人と、朱が目立つ服装の男性と、全身漆黒の男性。
そんな彼らの前には、一番華やかな外の、なびく金髪が美しい、十代後半ほどの少女が立っていた。
「————で、見事にアデレイドのメイドにやられたと」
少女は呆れながらそう呟く。
「はい、その通りですっ!」
「残念ながら」
彼女の目の前に立っている、赤と黒の青年はそれぞれ返事をした。
「……馬鹿なんですの?」
「「うぐッ」」
二人は同時に渋い表情になる。
「普通もう少し事情を話すものでしょう。私達の目的は、『連続誘拐犯から人々を守り、選ばれた人間が来るまで城には誰も近づけないようにしている』ことだと。第一、襲うだなんて野蛮な! 『リヴァイタス』である貴方達が信用落としてどうするんですの! 大体、その方々が『選ばれた人間』だったらどうするんですの! それでは本末転倒どころじゃないですわよっ! 全く、私の部下だからといって教育を怠っていたのが間違いでしたわ。——特にっ」
少女はそう言って、ピッと赤と黒の青年を指差す。
「ヴィクティム! サン! 『右腕』である貴方達がこれでは全くもって駄目駄目ですわ。後でみっちり指導しますからねっ。一般常識をっっ」
「ひあぁ! アレだけはマジで勘弁してください! 次回から反省、反省して二度とこういう事をしないようにしますよ! そうじゃないとオレ鼻で笑われるんですアイツ——じゃなくて『赤薔薇』様に! だからごめんなさいごめんなさい許してください」
後半はだらだらと涎を垂らしながら、サンと呼ばれた茶髪の青年は言った。
一応相手は年下にも関わらずプライド捨てすぎである、などのツッコミは置いておいて。
「そこをなんとかしてくださいよー『青薔薇』様っ」
一方、ヴィクティムと呼ばれた黒髪の青年は白々しく言う。
「貴方が青薔薇と呼ぶ程白々しいものはありませんわ。——普通に『ジョゼフィーネ』でいいですわよ」
金髪の少女——ジョゼフィーネはやれやると溜め息をついた。
ここでお気づきの方もいるかとは思うが、『青薔薇』ことジョゼフィーネはリヴァイタスの五大幹部の一人であり、リヒトの森で出会った少年、マグヌスの上司である。
ヴィクティムはフォンシエとギルベルトを襲った張本人であり、ジョゼフィーネの『右腕』と呼ばれる側近の部下であり、サンは『赤薔薇』の右腕である。
「仕方ありませんね。しばらくは本部でトイレ掃除一ヶ月で許してあげましょう」
「な————ッ!」「より酷いっ!」
ヴィクティム、サンの順番で悲鳴を上げる。
「このぐらいが当然ですわ。……ただ悪戯に人を傷つける事は絶対に許されない事だから」
ジョゼフィーネはそう呟いて、ぎゅっと自分の服を掴む。
そんな彼女を包み込むように軽く抱きしめ、ヴィクティムは先程とは別人のような真剣な表情で、彼女にだけ聞こえるように囁いた。
「……わりぃ。俺が悪かった。お前に『あの時』のような辛い思いをさせちまって」
「——わかっていただけたのなら、構いませんわよ」
ジョゼフィーネは柔らかく微笑み、そうしてヴィクティムから離れる。
「ひょー。らぶらっ「殺すぞてめぇ」
ヴィクティムは殺気を放ちつつ、サンに微笑んだ。
「……貴方達。他の方が呆れていますわよ」
「一番は二人のラブラブぶりにっ「さーんくーん? お兄さん怒るよー?」
「…………全く」
「————という訳で、今回の武戦大会には私だけが出場しますわ」
ジョゼフィーネはきっぱりとそう告げる。この場にいる全員が驚いた表情をしていた。
「な……! お、オレ達は出場できないんですか!?」
サンは慌てて抗議すると、ジョゼフィーネは一枚の紙をサンに差し出す。
「これは?」
「貴方の上司の伝言ですわよ」
「な……どれどれ」
乱雑に書かれた時を解読しながら読んでいく。
【本当は任務通りこっちに向かう予定だったけど『アレ』があったから投げた。
ここ(大雑把に地図が描かれている)にいるから来い。迷子になっても引き取りに来ないからな。後来なかったら処刑】
「………ぼ、」
「「ぼ?」」
「こんの暴君めえええええええええ!! ちくしょ————!!」
サンはそう叫んで何処かへと走っていった。全くもって(負傷した筈なのに)元気な奴だな、とヴィクティムは心のどこかでそう思った。
「……で、なんで俺駄目なの?」
「暴れたから」
「ですよねー」
「ヴィクティムは彼らと共に本部へ戻って休養&反省会、それと訓練ですわ」
「「「はっ」」」「へいへい」
数人の部下とは対照的にやる気のない右腕の返事にやれやれと思いつつ、ジョゼフィーネは転送魔法の術式を組み立てた。
「今日は絶対安静ですわよ」
「「「了解しました」」」「そうするよ。ねみーし」
そうして、彼らが全員転送されるのを見届けた後、ジョゼフィーネは別の転送魔法を組み立てた。
「さて、私も向かいましょうか。道化の都、クラウンへ」
ジョゼフィーネは淡い青の光に包まれていく。
「——『あの娘達』も待っていることですしね」
◆
「え、先輩もイストに行くんですか?」
緑髪の軍人、ニコラスが目を見開いて言う。
彼の目の前にいるのは、彼が淹れたコーヒーを美味しそうに飲む、小柄な女性——とは言っても少女にしかみえないが——ジュリアである。
「うん。ま、ニコたんの補佐役って感じだけどね」
「先輩がいると心強いです。少し気が楽になりました」
ニコラスは先程よりも穏やかな表情になる。
「え〜。私自分で言うのもなんだけど駄目駄目じゃん」
「いや、そんな事はないですよ。駄目駄目だったら先輩の事を先輩だなんて呼んでませんし」
「まあ、誉め言葉って事で受け取っておくよ」
ジュリアはそう言うと、空っぽになったコーヒーカップをニコラスに差し出す。
「おかわり! これ結構美味しいね〜」
「かしこまりました。ミディ遠征の時に購入したんですよ」
「てな訳で、私はそろそろ戻るよ。って、なんだか書類が貯まってるけど大丈夫なの?」
ジュリアが心配そうに尋ねると、ニコラスは涼しい顔で言った。
「こんなの三時間あれば余裕ですから」
「すっごーい。その点に関しては見習いたいよ」
「それよりもイスト滞在中にどれだけ書類がたまるかの方が不安です」
「ははは。まあなんとかなるよ。——ああ、そうそう。今回は用心棒って言ったらなんだけど、アスターくんも連れていこうと思っているんだ」
「ああ、彼ですか」
「うん。まあ、だから三人でがんばろ!」
「はい」
そうして、ジュリアは自分の部屋へと戻っていった。