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Re: 携帯電話で闘えてしまう世界    キャラクター募集中です ( No.30 )
日時: 2011/12/12 22:23
名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: jz0QsT9L)
参照: 短いです

序部、エピローグ



「じゃあ、奏白と班長の完治祝いと行くか」

 全てが終わった次の日の朝、凶悪calling犯罪対策課第一班は、月光、つまりは警視総監から直々に休日を貰った。奏白、そして知君の二人が大健闘したのでその褒美だとか。そういうことから、メンバーの一人が祝賀会のようなものでも開こうと言いだした。

「完治って……言うほど酷い怪我じゃ無かったぞ。どこかのお偉いさんが俺たちの傷を拒絶したし」

 その、祝賀会を退院祝いのように実施しようと呼び掛けるのを奏白は制した。そんな軽いノリで行くべきでないと。その上、自分の怪我は回復したのではなく、拒絶されて元々無かったことになったのだ。治癒もくそも無い。

「良いじゃないですか。皆で楽しみましょうよ」
「あのなぁ知君、こんな朝っぱらからやってる居酒屋なんて何処にも無い」

 楽しみたいと言った知君をも奏白は軽くいなす。騒げる店は朝は確実に閉まっていると。
 それもそうだと彼らはもう少し考え始める。多少騒いでも大丈夫で、朝からでも行けるような場所を。

「カラオケは?」
「こんな人数入るか?」

 現在第一班にはメンバーが十人以上いる。それほどの人数を一部屋に入れられるほど大きいカラオケはここいらには無い。よってあっさりと却下される。

「それもそうだよなー」
「じゃ、もう少し考えましょうか」
「知君、考えるのは良いが目の前に段差があるのは気を付けろよ。お前ただでさえこけやす……」
「痛ぁっ!」

 知君が考える方に意識を飛ばしているのを見た奏白が転けないようにと気を配って声をかける。にも関わらずに彼はつまずいてその場に倒れこんだ。砂利の擦れる音が辺りに響く。またかよと、呆れて皆は嘆息する。

「あ痛たた……」

 服に付いた汚れを払いながら知君は立ち上がった。いつもから慣れているおかげで今ではこの程度では傷は負わない。それでも、痛いものは痛いらしく膝を押さえている。

「知君、お前一回病院行け」
「大丈夫ですよ奏白さん。この程度……」
「精神科にな」
「酷いですよ……それ」

 仏頂面になった知君と、薄く笑いながらからかう奏白を交互に見て周りの警官仲間は吹き出した。こんな奴らが先頭に立ってELEVENを倒しただなんて誰が思うだろうか。でもそれは変わることの無い事実。この二人は事実強いのだ。知君の脳裏に月光の声が蘇る。

「どうする? ワレがELEVENやいうことは皆の記憶から消しておくか? ワシは別にどっちゃでも良いけど」

 今まで隠してきたのにはそれなりの理由があると察してくれた月光はそう言ってくれた。最初は知君も戸惑った。過去、散々苦しめられた記憶がその問いに首を縦に動かそうとした。
 だがそこで、知君は頭を横に振った。皆の記憶に残してくれて構わないと。
 真っ直ぐ目を見て言葉を返す知君を見た月光は、あっそ、とだけ言い残して去って行った。

「しゃあねぇな。俺んち行くか?」

 妙な所に行かされるぐらいなら、と思った奏白は仲間たちを我が家に誘った。一瞬の沈黙、数秒のどよめきの後に力強く「行く」と返ってきた。

「じゃあ行くぞ」

 嵐の前の、穏やかで静かな、至福の時——。



please wait chapter 2