コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 携帯電話で闘えてしまう世界 序部完結 ( No.31 )
- 日時: 2011/12/18 20:33
- 名前: 北野(仮名) ◆nadZQ.XKhM (ID: 4.fDTnfO)
二章開幕です
第零班、そういうものが警察にはあると言われている。表立って活躍しないため、彼らに変わって凶悪calling犯罪対策課第一班が最強の名を冠している。だが……彼らより強い者も、この世の中には存在する。
それが、同じく凶悪calling犯罪対策課である第零班である。その動きはまさに疾風迅雷であり、インターネット系の諜報作業などもお手の物。基本的に大概の任務に対応できる、月光直属の七人組。基本的に東北を中心に活動している。未確認だったphone-number100を見つけたのも、彼らだ。直後に月光に連絡した後に自分たちも加勢しようとした。
ただし、敵も相当な手練れであった上に多少人数的にも不利だった。直接的に任務に関わっていたのは二人程度だが、その者たちの同胞が、邪魔が入らないように道を封鎖していた。さらに、無理に突破しようとする者は実力で止めていた。
最後のELEVENに、警察が動かない、すなわち無能だと刷り込ませた張本人の一団、それがトランプ・シークレット。その集団を食い止めようとしたのが、例の第零班……通称“烏丸組”と呼ばれているようだ。
名前の由来は、その者たちに会えばすぐに分かるだろう。
「ちゃんと全員集まったか?」
大きなビルのとある階層、その一室で堅苦しいスーツ姿の者が十数人集まっていた。その中でも、最も年配の上司格の人間が皆に問い掛けた。全員集まったか、と。
これが、体面上警察最強と謳われる凶悪calling犯罪対策課第一班である。そしてその上司の問いにいち早く答えたのは奏白という青年であった。
「はい。ところでどういったご用件で?」
「ああ、実はここに第零班が来るらしい」
年配の男が奏白の問いに返答すると、その場にザワザワとどよめきが起きた。どの人間も皆口々に、本当に第零班が存在していることに関する、各々の意見を述べていた。
まさか本当にいたとはと茫然と呟く者もいれば、やっぱりいたのか! すげーな! と歓喜している者もいた。その中で二人だけ、訝しげな表情を浮かべていた。一人は奏白、もう一人は知君だ。考えていることはただ一つ、なぜそんな奴等が出て来なければならないのかということだ。
「第零班が出動……ということはもしかして……」
相当に不安げな表情を浮かべて知君は聞き取りづらい声でぼそりと呟いた。その表情にも神経質な感じがしていて、いかにも嫌な予感が頭の中で渦巻いていると言ったところだ。その呟きを聞き漏らさなかった班長、桜井 兼久(さくらい かねひさ)はさらに言葉を続けた。
「詳細な理由は上の連中しか知らん。お前たちはただ……俺もか。言われた通りに戦うだけだ」
威厳ある風にそう言い放とうとしたが、自分もトップから見たら持ち駒の一つに過ぎないと気付いた桜井は少しトーンを落とした。自分たちは組織と名乗る機械を支えるパーツだと言われたことより、あまり良い事が起こらないであろう未来に皆は落胆した。
事実、薄々は感付いていた。そんな実力派集団が出てくるなら、何か大掛かりな出来事が起きるだろうと。そしてふと奏白は気付いた。
「知君……knowingできないのか?」
「無理ですね。tyrantが睡眠中なので」
「タイラントが……寝てる?」
「はい。久々に力使ったとかでお疲れみたいです」
knowing、知君のcallingskillの内の一部の力。あらゆる事をknowing[ノウイング=知る]することが可能。ほとんどの事象を知ることができ、的中率は百パーセント。ただし、知君の口振りでは、その力は暴君が起きている時にだけ発動できるとなる。
tyrantが疲れて眠っていると、知君は言ったが本来そういうことは起こらない。なぜなら今回そのようなことが起こった理由として、知君が常日頃callingしない、という訳がある。久々に自身の能力を使役されて疲弊しているようだ。
「ELEVENって言ってもあんまり使い勝手良くねぇんだな」
「勿論ですよ。ELEVENなんて契約主の自我が強くて中々言うこと聞かないんですから」
「そう……か」
「所詮僕たちは契約主からその力を借りたり、契約主そのものを使わせてもらってるだけなんです」
calling、それは世にありふれるフィクションの中に存在する、超能力などの自分自身の持つ力なのではない。あくまでも契約者の使役と解放。そしてEffect—Callerだけが、契約主を上手く操り、超能力のように動かすことができる。
そんな風な理由からか、Caller、特にELEVENは契約相手の機嫌を損ねると何もできなくなる。しかもELEVENの力はただの現象などではなく、意思を持っている“化け物”のような連中の力なのだ。
「まあ良いだろう。到着するのは話では今日の——」
桜井が一旦閑話休題して元の話に戻し、第零班の到着時間を告げようとしたその瞬間、警報が鳴り響いた。緊急出動の時に鳴る類のもので、それか鳴っているのを聞くのは第一班でも、初めての者が多かった。桜井以外が初めて聞くこととなる。
「緊急時警報……! なんでこんなものが……」
「前回の事件も考慮に入れると……あの人たちしかありえません!」
急いで出撃しろと命令を下しているも同然の、けたたましいサイレンが部屋に反響する。その煩さに顔をしかめながら、なおかつそれにも負けない強い驚愕の色を顕にして、奏白が叫ぶ。だが知君には、出撃する原因となるグループの名前が大体分かっていた。
つい先日の、最後のELEVENが警察を大いに巻き込んで起こした惨事。それを引き起こした張本人たちに、近頃動きが見られると月光は知君に忠告した。トランプ・シークレット、callingの新たなステージに踏み出した者たち。
「まさかこんな早々に来るとはな。良いぜ、返り討ちだ」
階層を下に駆け降りるのとphoneを取り出してボタンのプッシュを平行して作業し、力強く言い放つ。知君はtyrantが起きるまで何もできないからとりあえず下に降りるだけ降りようとした時に、彼の悪い習性が出た。
器用、彼のその素晴らしさにはそれ以外に表現のしようが無く、盛大にその場で転倒した。なんでそんな何も無い所で転けることができるのだと思うが、毎度の事で一々気に掛けるのも面倒なので冷たい視線を外した。床に打ち付けた痛みに耐え、悶える知君を放って彼らは駆け出した。
please wait next calling