コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Q、異世界で逆ハーレムは成立するのか? ( No.1 )
- 日時: 2012/01/08 22:20
- 名前: 由羽 (ID: 8Zs8HT.V)
- 参照: http://hosinoyuuhomupe.blog.fc2.com/
第一の問い「何が違うのか?」
ああ、何か違うな。
あたしは、目を覚ます前から、違和感に気が付いていた。
背後でざわめく木々の声、ほっぺたに感じる、葉っぱの冷たい感触。遠くで鳴く、何かの獣の鳴き声。
あたしは、自問自答してみる。
Q、何が違うのか?
A、世界も、自分も、何もかも。
——数時間前——
「……っし……」
お菓子のごみ袋が散乱している部屋の中で、少女の声は響く。
——なんて、かっこいい書き出しで始めてみました。
あたしの名前は保崎 秀名。男でも女でもとれる名前だけど、あたしは一人称からわかる通り、女だ。
今は引きこもり中。うっとおしい前髪を頭の上でくくり、左右にたれてくる短めの後ろ髪は、ピン止めでピタッと止める。女子力? 何それ食べ物? 状態の、思いっきり「腐女子」の高校生でーす。
そんなあたしは、目の前にコンパクトな、年季が入っているゲーム機を手に取り、「男子攻略」中。
画面の向こうには、机が散らばる教室に、うっとりするような金髪を持った、生徒会長があたしに向かって話しかける。
生徒会長:『俺、生徒会あったんだけど……何の用?』
話の途中で頭を掻く、リアルぶりだ。
あたしは動揺する様子を見せずに、「彼」に向かって言葉を投げつける。
ヒイナ:『別に……よっ、用なんてたいそうなものじゃないんだけど、聞きたそうだから言ってあげるっ!』
ふっ、「彼」のタイプはツンデレキャラだ。あたしはその役を演じるだけ。
すると、予想通りに顔を赤くし、頬を掻く「彼」。
あたしはその反応にガッツポーズをし、「黙る」のコマンドを選ぶ。
「どんなセリフでも来い……ま、その言葉は決まってるけど」
あたしが身構えると、思い通りの言葉が返ってきた。
生徒会長:『あのさ……いきなりだけど……ずっと、お前のこと、いいなって、思ってたんだ……その、つ、付き合ってくれないか……?』
来たーっ!
「全コンプリートっ! よし、このゲーム終わり」
あたしは、画面の向こうの「彼」に目もくれず、セーブもせず、電源を切った。
ぱ、と黒い闇が広がる。その画面に、頭がぼさぼさで、中学校時代のジャージを着たあたしが映った。
高校に、入学式合わせて三日しか行っていない、ダサいあたし。おしゃれな雑誌なんて買ったことがない、流行に乗り遅れているあたし。恋愛ゲームの達人だけど、実際の恋愛なんてしたことがないあたし。
「……はっ、次のゲーム! 昨日発売だった新作の! やろう、やろうー!」
下がってきたテンションを上げ、パチリ、と電源を入れた、次の瞬間。
ゲーム機の画面が、ぐにゃりと曲がる。
「え? まさか、パグ?」
叩いてみたが、治る感じはしない。
それどころか、波紋は広がり、ついには気味が悪くて手を放す。
しかし、黒い渦は、二次元を超え、三次元に突入。
その黒い渦に、あたしの手が呑み込まれる。
——それが、あたしの見た、この世界の最期だった——
「ってことは、死んだのかな、あたし」
目を開けずに呟いてみる。
もちろん誰も答えない、と、思ったその時——、
「あのー……生きていますかー……?」
おどおどした、腰が低そうな男性の声が聞こえてきた。