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Re: 世界を創り出す愛情理論 ( No.4 )
日時: 2012/02/10 21:01
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 今日はあたたかいです。おじさんがすきです

 夕矢を見送り、一息吐く。どこに行くわけでもないんだけど。強いて言うなら、行くのは一階だ。
 さて、次はお母さんたちを起こさないと。お父さんとお母さんが眠っている寝室へと足を向ける。
 寝室のドアの前に立つと、中から音が聞こえる。はあ、今日もお父さんは可哀想である。こんなにうるさい部屋で寝てるだなんて……。そろそろ一人部屋を作ってあげたらどうだろうか。お金かかるけど。
 このやかましい音の犯人はと言うと、隣の家が工事している音というわけではない。そう、この音はお母さんによる歯軋りといびきである。恐ろしい人である、いつもの事だが。
 私はよし、と気合をちょっと入れてから部屋の中に入る。本当にうるさい。私は耳の不快感を消すため、耳を塞ぐ。消えるわけなどないのだが。
 ゲームの主人公がラスボスに向かう時の様な険しい顔、を私は今浮かべている事だろう。自分でも分かる。これは顔をしかめるしかない。
 ここの寝室は、普通にオシャレで普通に綺麗だ。ブラウンや白色の、シックな雰囲気の部屋。この色合いは私としては好きだ。部屋も結構な広さで、ダブルベッドがそこに置いてある。
 ダブルベッドなのだが、お母さんがダブルベッドを占領して、お父さんは床で眠るという、正にかかあ天下である。ダブルベッドのダブルの言葉が意味を成していない。ベッドの上で、大の字の格好をしたお母さんの、がーがーとしたいびきが部屋に響く。そのうるさいいびきのせいか、お父さんはダブルベッドから少し離れた位置に布団を敷いて寝ている。険しい顔をしながら。
 そりゃあこんなにうるさければ、まともに睡眠なんてできないだろうなー。ベッドで眠れないというのが嬉しいくらいだろう。なんて、他人事の様に思う。他人でもないんだけど。

「お二人さーん、起きてー」

脱力的に声を発する。脱力していると言っても、ちゃんと声は大きい方だ。ただやる気がないだけで。お父さんが目を覚ましたみたいで、うう、と呻き声みたいな声を発しながら、体を伸ばしていた。そして目をごしごしとこすり、眼鏡をかけて私の方を見て言う。

「もう七時か……」

眠り足りない、と言った様な顔でお父さんは言った。まあそうですよね。ちゃんと寝たいですよね。お父さんに同情しながら私は苦笑い。
 うんとこしょ、とお父さんは立ち上がる。そして大きく口を開いて欠伸をしてから部屋を出て行った。