コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界を創り出す愛情理論 ( No.23 )
- 日時: 2012/06/11 21:20
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
私は帰り道を歩いていた。
早く家に帰りたいと思う気持ちと、でも歩きたくないという気持ちと、寒いという気持ち、そして足が痛い。そんな感情が心の中に入り交じっている。そんなことを思う度に、私は溜息を吐きたくなるのだ。
「はあ」
また、溜息だ。
強い風が髪をなびかせる。自分の後ろの景色を、なんとなく見つめていたら背後から何かがぶつかった。
「おうっ!?」
「いって! あ……すいません!」
私にぶつかったのは、黒いランドセルを背負った小学生の少年だった。大きさからして、きっと小学五年生ぐらいだと推測。
どうやら手には今人気のゲーム機が両手でしっかりと握られて、きっとそれに夢中だったのだろう。
「いや、大丈夫。ゲーム楽しいのは分かるけど、気をつけた方がいいよー」
優しく微笑み、注意をしてみた。素直な少年は、その言葉の一言に相槌をしてはにかんでみせる。
……凄い愛想のいい子だな。まだちょっと可愛げがあるけど、イケメンだし。きっと、周りの子からもててるんだろうな。
こういう素直な子を見ると、間違わないでほしいと願ってしまう。
「あの、大丈夫ですか?」
人を目の前にしているというのに、少しだけぼーっとしてしまった。ほんとに今日疲れてんのかな。本当に瞬きしてる間とかに車に轢かれなきゃいいけど。なんて思ってみる。
私の様子を見て、心配している心優しい少年に私は微笑んだ。
「……ああ。ちょっとぼーっとしてただけだから、大丈夫。そっちこそ気をつけて」
「それじゃ、すいませんでした?」
「なんだそれ」
少年の不思議な別れの仕方に、私は声を出して笑う。そんな私を見て、少年は安心したのか、彼も笑った。
「こういう時はバイバイとかでいーんだよ」
「高校生ですよねえ? 一応年上には敬語で」
「あらまあ礼儀も正しいこと」
うーん、こいつはお母様からももてもてなのではなかろうか。うちのお母さんだったら、娘である私にすぐさまアプローチしろと言うだろう。……いやまあ、年下は論外なのだが。
「そろそろ太陽が暮れてきたねえ」
「ああーっ! 早く帰らねーと! 姉ちゃんゲーム好きだから怒るんだった! えっと、ありがとうございました、さようなら!」
「うん、ばいばーい」
道を駆け抜ける小さい後ろ姿に手を振った。
————まだまだ、純粋でいいなあ。
ちょっとだけ、羨ましくなった。
そして、とぼとぼと歩く帰り道。日が暮れてきた頃。私の日常は、あっけなく終わったりして。