コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界を創り出す愛情理論 ( No.24 )
- 日時: 2012/06/11 21:26
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: 二章突撃ー
#02 マイナス以下の存在
————そんな、昨日の事。昨日の終わり。
意識を取り戻す。なんでか知らないけど、自分の部屋に居る。夢、だったのか……?
開かれたまま放置されたカーテン。窓の外は、ほんのりと月が浮かぶ、淡い水色だった。携帯が周りにない。おかしいな。部屋を調べてみる。やはり、どこにもない。
現在の時刻を知るためだけに、私は住み慣れた家の階段を降りて、リビングに向かう。リビングの壁にかけられている拙い丸時計に目をやると、七時前だった。えっ、七時前?
に、しては皆早起きだ。私に起こされないと起きない、お母さんや夕矢が、私より早く起きている。ソファに三人座り込んで、やけに悲しそうな顔をしていた。夕矢は既に制服を着ていて、お父さんとお母さんは黒い服を纏っていた。授業参観、じゃあない。まるで、喪服、みたいな。誰かの、お葬式みたいな。嫌な現実が、頭を過ぎる。
「なんで、朝生が」
いつもお気楽なお母さんが、ぽつりと吐き出し涙を零す。
…………昨日の事は、夢じゃなかった。私は少年に出会ったあと、車に轢かれて事故死した。今日はお通夜で、皆早起き。そういう事なんだろうか。かなしい、なあ。もっと皆で遊びたかったし、もともと、今日は咲と遊ぶ予定でもあったのに。改めて死んでいると分かると、今までの未練と後悔が心に押し寄せる。
——そう言えば。私は、死んだのになんでここに居るんだ? まさか、幽霊になってまで出てきたのか?
私の常識内では、それぐらいしかありえない。幽霊になる事が常識じゃあないけど。むしろその常識は映画内ぐらいだ。……でも、もし、そうだとしたら。私が幽霊になっているんだとしたら、なんだよ、未練ばりばり? 死ぬときはしょうがないなーって感じだったのに。そこまで適当でもないけど。
いくら疑問を描いても、確かめようがない。
でももっと、皆と笑いたかった。私は勝手に笑みを作って、気がつけば声を出していた。
「夕矢、起きるの早いじゃーん! 何の心変わり?」
……自分でも笑えない。当然その声は夕矢にも、夕矢以外にも届かなかった。空しいし、苦しい。自分が居ないことで、空気がこんなに重くなる。そこに実体を持って存在したら、どんなに幸せだったことか。実体のない、私は。家族を慰める事も笑わせる事もできない。いつになっても役立たずなのは健在、か。