コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界を創り出す愛情理論 ( No.27 )
- 日時: 2012/06/24 20:11
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: ひさびさ。しばらくシリアスモード。
しばらく立ち尽くしていた。何もできなかった。
大粒の涙を流すお母さん。咽んで、苦しそうだった。苦しそうなお母さんの背中を、いつもみたいに優しい顔でさすっていたお父さん。表情を滅多に出さないお父さんだけど、少しばかり、涙ぐんでいた。夕矢は、口元を固く結んで、文句ありげな顔をしていた。堪えている涙だけど、我慢ができないようで、クッションに顔を埋めたりしていた。
私なんかが、慰められないのだと知る。行き場のない感情が渦巻いて、こっちまで泣きたい気持ちになる。
——私を愛してくれた人の顔を見て、いたたまれなくなった。
そんな愛なんて、私は今まで知らなかった。無知だった。今でもあんまり分からない。あの時、自惚れたからなのか。愛に溺れることを恐れてる。
だから私は、お母さんの目から流れてくる愛の証を見ていられなかった。
全力で走って、家の中から飛び出した。
……一面に、空。昨日とあんまり変わらない。大して青くもない空。雪の降っていない、アスファルト丸出しの道。木々は風に吹かれ揺れる。だけど、でも。風は私を通り抜けていく。冬の寒さが分からない。風の強さも分からない。
——ああ。私は、本当に。体を失くしてしまった。
未練なんてなければ良かったんだろう。すぐ死んで、どっかに逝ってしまえば良かったのに。体がないのにいつまでも生きようとここで独り立ち尽くして。
…………私は、一体何を求めてる。
しばらく雲のかかった空を見上げる。過ごしていた家を見つめる。これから何をしよう。戻る場所もない。行く場所もない。八方塞がりだ。
十八年間、歩いて、走ってきた道を。やることもなかったから、浮遊して飛んでみた。幽霊らしく、落ち込みながら。
————さよなら、日常。
精一杯の笑顔で、人であることをやめた。
誰にも届かない、声でもない私の声は自然の中に溶け込んだ。