コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界を創り出す愛情理論 ( No.32 )
- 日時: 2012/06/28 17:26
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: 朝生「すれ違いっつーかすりぬけられる」
住宅街をまっすぐに突き進む。進んだ先には曲がり角。ちょうど、そこに建っている、古臭い、そして懐かしい雰囲気が漂う駄菓子屋。中学二年生頃まで、よくここでお菓子を買っていた。早起きのおばあちゃんは案の定今日も早起きで、ちょこんと座布団の上に正座していた。可愛らしいその姿に、私は笑みをこぼした。
住宅街を抜けて、大通りに出る。車の音、人の声。その煩わしさの中に居たい、と同じ女子高生と思われる集団に羨望の眼差しを向けた。羨ましく思ったところで、何かが変わるわけでもないのに。
——咲は今、どうしてるかなあ……。
きっと優しいから号泣して酷い顔になってるんだろう。優しさを無下にするわけではないが、想像するとちょっと笑える。
あ、コンビニだ。昨日も、ここにお世話になった。からあげ定食、美味しかったよ。いつも飲んでたカフェオレも美味しかった。どんな味か忘れたけどさ。
コンビニを通り過ぎて、デパートを見上げる。昔っから、家族で買い物する時はここだった。本も服も文房具も食べ物も、ああそうだ、腕時計もここで買ったんだっけ。今年の誕生日プレゼント。
…………あれ。ていうか、今制服なんだ、私。死ぬ時の記憶か? いやでも、腕時計してない。どうなんだろう。鞄の中に突っ込んでたのかなあ。そうだとすると、もったいない事したなあ。……ああ、もう。また後悔だよ。自分から繋がり捨ててるみたいじゃん。
デパートを色々回って見て、くだらない日常を思い出して、笑って、最終的に切なくなった。
そして私はまた歩く。基本インドア派で運動不足で体力のない私だったが、今は幽霊だ。力など必要ない。
上を向く気力もなく、人を見る余裕もなく、心を見るとかそんな冷静になってるわけでもないから、ただただ下を見て歩いていた。
……人とぶつかる、とか。誰かと、何かと。ぶつかることができたら、私は謝るよりも痛がるよりも、まずは歓喜するんだろうなあ。
どうでもいいことを考えながら歩く。そして、無意識のうちに立ち止まった。自分でも流されたように来た場所。何時間ぶりだろう、顔をあげて目の前を見ると、中学校だった。
——記憶。中学時代は楽しかったことの方が多かったのに、それなのに鮮明に流れる記憶。なんでこんな記憶しか残らない。咲と会った事とか、修学旅行で夜更かししてお喋りした事とか、出来事は覚えてるのに、その瞬間が出てこない。どんな事よりも、明確に覚えてるとか。苦しかったのに、泣き喚いたのに。
「超、腹立つー……」
勿論、声など出なかった。