コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.2 )
- 日時: 2012/02/09 23:46
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: /HF7gcA2)
ずっと一緒だった。小さい頃から、ずっと。
その理由は今ではもう分からないけれど、何となく一緒にいると居心地がよかったのかもしれない。
昔から憧れをずっと抱いていた。幼馴染にして、とても格好良かったんだ。強くて、いつも皆を引っ張っていってくれて、リーダーシップで溢れてて、頼りになる存在。こんな人が僕の幼馴染だなんて、考えもつかないほどだった。
あぁ、これが主人公って呼ばれる人なのかな、と本気でそう思っていた。それでいいと思っていたんだ。
だけど、僕は昔からヘタレだった。真性のヘタレだった。それは主人公なんて凄い存在である幼馴染とは比べ物にならないぐらいの。
けれど、それでも僕へと手を差し伸べてきた。そして僕は、それにずっと甘え、手を取り、我が物顔で幼馴染のその"力"を自分もあると思い込んで過ごして来たんだ。ただ、その"力"の作用が僕に少し降りかかっていただけだということにも気づかないままに。
あぁ、なんて僕は愚かだったんだろう。どうしてもっと、早く気づかなかったのだろう。
いつの間にか、幼馴染の君は遠くに見えて、僕は一人、何のスタートも切っちゃいなかった。ずっと停滞したまま、スタートラインさえも踏んでいない、何も参加しないままで、ずっとヘタレのまま僕はこの生涯を生きていくのだ。
最初、それが僕の運命なんだと思った。恨むなら僕の運命を恨むべきで、彼は悪くないと、都合のいいことで彼を守っていた。それさえも、彼の"力"の作用だとは知らずに。
僕はもしかして、おかしいのかもしれない。主人公とか、何だとか、ずっと一緒に暮らしてきた幼馴染のことをなんだか悪く言うようで嫌気が差していた。けれど、それはすべて事実で、彼は彼なりに成長している。僕は——何だ? 何をしている?
このままヘタレのままで、主人公という巨大な波に乗せられたまま、僕は自分の力を何も使わないで、ただそれにあやかるだけの、そんなせこい人間になるのか?
——嫌だ。嫌だ、嫌だ。絶対に嫌だ。僕は、僕のままで居たいと、そう切実に願ってしまった。
だから僕は、こんなものを作ってしまったのだろう。
衝動を抑えきれないがままに、パソコンを立ち上げ、とあるサイトへとログインする。そのサイトは、結構重い話や、討論などが多く、普通の雑談場ではないサイトとして結構有名な方のサイトだった。
そのサイトで、僕は思わずキーボードを打ち込んだ。
『題名:主人公になるには』
ふざけていると思われるだろうか。いや、きっとそうじゃない。中には、僕と同じ気持ちでいる人間がいるはずだ。この世の中は広く、様々な考えも張り巡らされているはずだ。
何も、幼馴染を勝ちのめしたいなどが目的ではなかった。ただ、僕と同じ思いでいる、またはその他の人間に「気にするな」の一言だけでもいいから声をかけて欲しかった。
主人公——その概念に対しての自分の答えをハッキリ出したかったのかもしれない。
題名を入力し終えると、僕は一息吐き、キーボードのエンターキーをゆっくりと押した。