コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.3 )
- 日時: 2012/02/12 22:35
- 名前: 真兎 ◆Kb.9rC/zfY (ID: /HF7gcA2)
朝挫鷺浅葱(あさささぎ あさぎ)の印象をクラスメイトに聞いてみれば十中八九「薄気味悪い」「不気味」「陰気」そう答えるだろう。
その朝挫鷺浅葱である僕が直接聞いた訳ではないけれど、独りで居ると普通の人間よりも視界が広くなり、誰が誰をどう思っているかをだいたい予想することが出来る。クラスメイトの人間が僕を見るときの目は不気味な物を見るような感じだ。
人はみんな自分と違った人間を恐れ排斥する。と言っても今のところ人畜無害であるこの僕を表立って排斥する者は居ないけど——裏でいないわけではない——やはり僕という異常で異質で不可思議な人間をみんな怖がっているみたいだ。まあそれは僕も同じ事なので攻めるような事は言えないのだけど。
ガラガラと教室の扉が開く音がする。ああ、来たな、と僕は教室の中に入ってきた者を見る。ツンツンに立った黒髪、整った顔立ち、適度に引き締まった身体、そして僕の全身の細胞がザワザワと騒ぎ出すこの感覚。
《主人公》桐上竜牙(きりじょう りゅうが)。
彼が登場したことで今までバラバラになって会話していたクラスメイト達が黙り、彼の方に注目する。この時点で僕は全身に鳥肌が立つぐらい恐ろしい。
「おっす、おはよう」
桐上が人なつっこい笑みを浮かべて挨拶すると、クラスメイト達も笑みを浮かべて挨拶を返す。不気味だ。恐ろしい。
畏怖の感情を浮かべると同時に、僕は彼を羨望している。みんなに好かれ、みんなに信頼され、みんなに愛される。何事にも成功し、失敗すらも成功への材料に組み替えてしまう、そんな《主人公》に僕は憧れている。
敗北、失敗、不成功。不条理で理不尽で不平等な僕の持っている体質、性質とでも言うのか、《主人公》の間逆、《敗北者(エラー)》。生まれながらに持ったこの《敗北者》を僕は捨てたい。こんな辛い日々はもうたくさんだ。僕は変わる。
《敗北者》を捨てて。
《主人公》になってやる。