コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.9 )
- 日時: 2012/03/18 05:18
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: /HF7gcA2)
何事も無い、本当に何一つも変わったことなど無く、学校での一日が終わった。昼も護と銀と一緒に食べて、一回か二回ほど、初宮が護をぶっ叩いたりしたぐらいで他には何も無かった。
僕はただ、それを余所目に銀と笑ったりしてるぐらいで、何も無い。何も無い、一日だったんだ。今日も。
夕暮れ時、いつもの分かれ道で護達と別れる。その場所から指す夕暮れの光は、とても綺麗に地面に反射して、よくその美しさが分かるようになっていた。
「またな、雄一」
護は、その夕暮れの光をバックに僕へとそう声をかけて片手を挙げる。そして、必ず護は笑顔だった。
「うん、またね」
僕もそれに呼応するかのようにして手を挙げる。護はそれを見送ると、ゆっくりと夕暮れの方へと向いて歩いて行くのだ。
それを、僕は見つめるばかり。護は、先へ先へと行ってしまう。それを僕は、見つめるだけなのだ。それしか、出来ない。やりたくても、その横へと、同じライン上に立ちたいけれど、立てない。
それはまるで、僕はそこにいてはいけないと、誰かが言っているような、そんな感覚だった。
「ただいまー」
「あら、お帰り」
ただいま、というとその返事が返ってくる。それだけで、今日の朝の一人寂しい感覚は吹き飛んでいく。
パタパタ、とスリッパの音を鳴らしながらわざわざ玄関まで来てくれて、優しい微笑みを向けてくれる母さんが凄く暖かく感じた。
「お醤油、買って来てくれた?」
「え? 醤油?」
母さんに言われて、僕はふと思い返した。そういえば、昨日の夜に母さんから卵が切れていたと言っていたので、僕が自分から買いに行くよと言ったのを忘れていた。こんなことはしょっちゅうで、母さんの負担を少しでも減らそうとした僕の考えだった。そして、今日までそれを忘れたことはなかった。
「ごめんっ、今から買いに……」
「あぁ、いいのよ。丁度、必要な野菜も無かったから買いに行こうとしてたの。ありがとうね、雄一」
「あ……うん」
「それじゃあ、行って来るから、お留守番お願いね?」
母さんはそう言い残した後、ドアを開けて出て行った。
一気に静かになったこの家が、どうにも寂しさを感じさせられた。その場でため息などを吐いても、誰も得はせず、誰も聞いてはいないというのに。
「僕は……何がしたいんだろう」
そう呟く言葉は、誰に共感されるわけでもない、自分にただ痛みとは違う苦痛を感じさせるだけだというのに。
鞄をその場に取り残し、僕は二階の自室へと向かった。
「最近の僕は、どうかしているよ……」
部屋に入るや否や、そう呟くざるを得なかった。特に面白いと思ったことなども無く、僕はただ単純に呟きたかった。言葉を漏らしたかったのだ。そうすることで、少しは楽になれるだろうと思ったから。
けれどそれは、この現実という世界から逃げてるだけで、結局のところ何かに甘えているのだと自分でも思った。だけど、それが分からない。
護になんであんな不信感のようなものを持ったのか。初宮はどうして僕を"護の幼馴染"としてしか見てくれていないのか。銀はどうして僕のように不信感を抱かないのだろうか。どうして今日、僕は母さんの頼まれごとを初めて忘れてしまったのだろうか。どうして僕はこんなにヘタレで、何で、どうして、僕は、こんなにも——
「弱いんだ……ッ」
嗚咽が混じりそうになった。込み上げて来たのは、何故か分からない、どこに向けたらいいのか分からない、怒りだった。感情が爆発した、僕の怒り。けれど、その怒りは誰かに向けているものではなく、僕自身に向けているものだった。
とめどない思いが交差していく。頭の中で、ぐるぐると。
そんな思いは、ゆっくりと時が流れ去り、ふと僕はパソコンの前に着いていた。電源を入れてから間もなく、起動音と共にデスクトップが現れた。インターネットを起動し、昨日訪れた掲示板を見た。そして、僕の投稿したスレを——
「コメント……来てる」
結構な量のコメントが届いていた。内容を早速見てみることにした。
一斉に画面上にコメント欄が映し出された。それらはどういうものなのか、僕はそのコメント達に目を向けてみた。
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(№1)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
主人公になれば?
(№2)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
何このスレwwwwクッソワロタwwwww
(№3)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
おい、おまいらやめてやれ。真剣な人間をバカにするな! ……ぷっ。
(№4)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
何でこれを書き込もうと思ったのかwww精神科に行くことをオススメしますw
(№5)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
あぁ、確かにいいな、主人公。俺もなりたいなりたい。あぁ、上条さんみたいになりてぇーわー。
(№6)
Re:主人公になるには
名前: 名無し
ちょww>>5ってスレ主じゃね?ww
だとしたらネタすぎるだろwww俺もなりてぇよ、上条さんwww
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他にもたくさんあったが、それら一つ一つを確認していった。けれど、まともな回答なんてどこにもなかった。
やっぱり、バカらしいと一蹴されるのがオチだった。本気にしてくれる人なんて、どこにもいない。そもそも、僕の考えていたことはどこかおかしかったんだ。そう開き直らなければ、どうにもやっていけなかった。
その後、母さんがいつの間にか帰ってきていて、食事にしようということを伝えに来てくれたので、僕はパソコンを消さずに、それよりも早く母さんの手伝いをしたいと思って下へと降りていった。
ご飯を食べながら母さんと色々話したり、お風呂に入ったりをして、すっかりと今日一日のことを忘れようとしていた。それも、慣れてしまっていたからのことかもしれない。
どちらにしろ、掲示板のことを思い出したのは風呂から上がって自分の部屋へと入った時だった。
「あぁ……そっか、つけっぱなしだったっけ」
見たくもないその画面をすぐに消そうと思い、マウスを動かそうとした——その時だった。
一番下までスクロールをし、もう終わりだと思っていたそのスレに、まだ一つコメントされてあることを知った。再び更新しなければ見れないので、またクリックを繰り返して見たくも無いコメントの数々をスクロールで見えなくし、そして諦め半分で僕は最後までスクロールした。
そして、見たんだ。僕の——転機ともなるだろう、このコメントを。
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Re:主人公になるには
名前: 名無し
僕は主人公に勝つため、主人公になる方法を探しています。
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ドクリ、と胸が高鳴った瞬間だった。
慌てたように、僕はキーボードを慣れない手つきで動かし、それに対する返事を書いた。
なんて書けばいいのか。まさかまともにする人が来るとは思わなかった僕は、戸惑いを隠せなかった。この人は、一体何者なのだろうか。
僕と同じ境遇なのだろうか。それとも……。
とにかく、僕はこの人とコンタクトを取るため、必死で返事を書いて送信した。