コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ——恋心綴ります(実話) ( No.7 )
- 日時: 2012/04/16 11:19
- 名前: 結縁 ◆J6BQu6v9vI (ID: GrzIRc85)
第二話【電話とスカイプ】
cacao.さんとチャットでの再会をした次の日の夜中のこと。
待つと言ったこともあって、cacao.さんがやってくるのをチャットで待っていると……。
cacao.さんが入室しました。
という表示と共にイヤホンに入室時にかかる音が流れた。
名前を見る度にまた、今日も話せるんだと思うと頬が緩むのを止められなかった。
結縁:こんばんは
cacao.:こんばんは
昨日と変わらない挨拶を交わした後、昨日のように雑談に入る。
夜中という時間のおかげもあって、二人だけで話せるのが何だか嬉しかった。
そうして、時刻が午前1時過ぎくらいになったときのこと、閲覧表示に動きがあった。
閲覧表示に1人と出ている。つまり、それはこのチャットの外で誰かがここでの会話を見ていることになる。
もちろん、見られて困るような話しはしていない。
していないんだけど……ちょっと落ち着かなかった。
閲覧表示がどうしても気になってしまう私はcacao.さんにある提案をしていた。
結縁:あ、あの、今更かもですが、ささやきで話しませんか?
ささやきというのは、まぁ、簡単に言えば、特定の相手とだけ会話が楽しめるという便利機能のことで、それで話したことは閲覧者にはもちろん、他に入室してくる人が居たとしても見られることなく話が出来るというものだった。そんな便利な機能があるなら何故、最初からそれで話さなかったのかというと、それは……cacao.さんがあまり、ささやきを好まないからということに関係してたりする。
そんなことを考えながらもcacao.さんの返事を待っていた。
cacao.:ほんとに今更だな。
結縁:まぁ、そうなんですけど……駄目ですか?
緊張しながらもそう尋ねると
cacao.:まぁ、かまわんよ。
その一言にほっとして、それからすぐにささやきへと切り替えて話すことにした。
結縁:『有難うございます。それじゃあ、こっちで話しましょう』
ささやきで話していたのも、日常のことなどの他愛もない話ばかりだったけどcacao.さんと話せてるだけで幸せだった。
話しているうちに、私は前から聞こうと思っていたことを聞いてみる事にした。
それは、cacao.さんがスカイプを利用しているかということだ。
私は友達に勧められたのが切っ掛けでスカイプを利用して色んな人と交流している。
もし、cacao.さんがスカイプを利用していたら、コンタクトを追加してチャットや、通話で話したいと思った。
結縁:『あの、cacao.さんはスカイプやってたりしますか?』
会話の区切りが良い所で、思い切って切り出してみた。
cacao.:『スカイプかぁ。やってないな』
結縁:『そうですか……。残念ですけど仕方ないですね』
やってないという事に少しだけ落胆してしまう。
だけど、それは一瞬の事で、cacao.さんの次の言葉に私の心臓は跳ね上がった。
cacao.:『何だ、突然。私の声でも聞いてみたくなったのか?』
結縁:『そ、それはっ……』
cacao.さんの声……正直聞いてみたい気持ちはあった。
だって、声を聞けばcacao.さんが男性なのか女性なのかもはっきりするし……。
そう思う気持ちは確かにある。だけど、それとは別に自分の声で話すという行為に慣れていない私は恥ずかしさと緊張の方が少なからず勝っていた。
cacao.:『ふっ……図星のようだな。私はかまわんぞ電話しても、な』
と、突然言い出すのはcacao.さんの方も同じだと、こういう時、思わずにはいられない。
だって……絶対私が断れないの知ってて言ってる様な気がするんだもん。
結縁:『じゃあ、電話します、か?』
画面に文字を打ち出すたびに、私の鼓動は早まり続けた。
cacao.:『あぁ、これが番号だ……047-○○○○-xxxx』
cacao.さんの電話番号が送られてくる。
それを見て、本当に声が聞けるんだと実感した。
結縁:『090-●●●●-xxxx……私の携帯の番号です』
そうして、それぞれに番号をメモしたりして、次の問題にぶつかった。
それは……。
cacao.:『で、だ。番号を交換したのは良いが、どちらがかけるんだい?』
そう、どちらが最初の一歩を踏み出すかというものだった。
結縁:『私からは、その、何か無理です! なのでそっちからかけて下さい;』
本当は、後、受話器のボタンを押せばかけることが出来る。
だけど、情けないことに、私にはそんな一欠けらの勇気もないんだ……。
cacao.:『全く、しょうがないな。そんなんではいけないぞ? こっちからかけるから、先に喋るんだぞ』
え? そう問いかける間もなく、手元にある携帯が音をたてて鳴り出した。
数秒、電話を取るのに戸惑いながらも、何とか出ることが出来た。
出来たんだけど……どちらも一言も喋る気配はなく、無言のまま時間が過ぎていこうとする。
く、空気が重い……っ。
結縁:『何か言ってくださいよ!』
チャット画面にそう書くと
cacao.:『そちらから、喋れと言ったはずだが?』
意地悪すぎる……。
確かにこっちから電話出来なかったのだから一応、筋は通っているけど……!
cacao.:『このままだと、話さずに電話を終了してしまうぞ』
まるで急かす様に表示される言葉にやっとの思いで一言だけ発した。
「も、もしもし……」
聞こえるか聞こえないくらいの小声でたった一言。
それでも、私なりに頑張ったんだよ……本当にっ。
それなのに、それなのに……どこまでも、cacao.さんは意地悪だった。
cacao.:『ん? よく聞こえなかったな。もう一度、言ってくれ』
結縁:『……』
cacao.:『黙っていては分からんぞ』
この人は、本当に、本当に……。
緊張は相変わらずしてたけど、それでも今度ははっきりと聞こえるくらいの音量で言った。
「もしもし……!」
こと一言をちゃんと伝えるためにどれだけの時間が流れたんだろう……。
「ふ……ちゃんと言えるじゃないか」
電話越しに初めて聞こえてきた声は低い男の人のもので、cacao.さんが男性であることを私に伝えてくれた。
「もう……酷いです!」
恥ずかしさとかそういうのを全部ぶつける様にそう言った。
「何も酷いことはしていなぞ。……そうだろ?」
むむぅ、正論だ。
cacao.さんは私の声が聞き取れなかったからもう一回言ってほしいと言っただけなのだから。
そう、正論なんだと分かってるんだけど……この胸の内にあるモヤモヤというか憤り? はどうしたらいいの!
そんな事を自問自答しながらも、少しの間、cacao.さんとの電話を楽しんだ。
初めて聞いたその声は何だか、不思議な安心感を持っていて、落ち着く声だなと思った。
……いや、やっぱり意地悪な声かもしれなかったけど。
そんなこんなで電話を終えた後、チャットでまた少しの時間、電話のことを話したりしてお開きすることになった。男の人と電話をしたのが初めてだった私にとって今日の出来事は凄く大きなものに思えた。
あ、初めてと言っても、父親を除いてだけどね。
ふと、電話の事を思い出して顔がニヤけてしまう。
何だろう、cacao.さんの声、安心感もあったけど……カッコよかったな。
そんな風に思っている自分が恥ずかしくなってきて、私は布団の中へと顔を隠した。