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Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】第2話更新開始! ( No.12 )
日時: 2012/05/27 15:01
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

言われた通り、俺も着替えることになったわけで、今の格好は学校指定のブレザー姿になっている。
淡い青色を基調としたそれは、しっかりと着こなせばなかなか学生っぽく見えるというか、それ以前に紳士に見えそうな気さえもする見栄えだった。

「似合ってますよ♪」

と、椿から声をかけられるも、登校前から着てしまったこのおニューな制服で今から学校探索をするというのだから、少し気が滅入る。

「確かに学校探索も必要かもしれんが、それ以前にまだ俺はここの生徒だと認識されてないだろ。そこらへんはいいのかよ?」
「全然大丈夫です。もしものことがあれば、奏クン自慢の超反射神経で逃げればいいんですから♪」
「簡単に言ってくれるな……」

そんなこんなで、俺と椿は部屋を出た。勿論、椿も制服姿だが……どこからどうみても、男装をした美少女にしか見えないのが不思議だ。メイクとかしてないはずなのに、女っぽさが抜けない。これが美男子たるものなのだろうか。いや、美男子というジャンルにも当てはまってないんじゃね?

「……たまに僕を見て微動だにせず、真顔で見るのはやめてもらいませんか?」
「あ、あぁ……すまん」
「涎垂れてますよ?」
「え、嘘?」
「嘘ですけど」
「……」


——————————


一方その頃、夕姫は

「断じてならん!」
「何でですか!」

目の前に立ちふさがる壁に衝突していた。
巨大なビルの最上階にいる夕姫の祖父たる、桜月 桃ノ助(さくらづき もものすけ)は凄みの利いた表情で夕姫を圧倒していたのだ。

「あの男を……! 断じてならんわ!」
「それは……私の"体質的能力"が半減されるから?」
「それもあるが……他にも理由はある!」
「もしかして……」

黙り込む二人の内、夕姫は祖父の言いたいことが分かっていた。けれど、自分はどうしてもこうでありたい。そしてそれは今から、これからも変わらない己の信念だからだった。

「絶対に負けない! 私は、"桜月 夕姫"だよ!」
「……勝手にしろ! それでどうしようもなくなれば……お前の面倒は見切れん。早速"許婚"の件を進行させてもらうからな!」
「……分かったよ、それでいいよ!」

夕姫は啖呵を切ると、そのまま身を翻してドアの方へと向かって行った。

「おい! まだ話は終わって——」
「もうこれだけでしょ! それに、勝手にしろって言ったのはお祖父ちゃんじゃん!」

そうして、夕姫は勢いよくドアを開けて飛び出して行ったのだった。
その様子を見つめ、桃ノ助はゆっくりとため息を吐いて、頭を抱え込んだ。

「……ならんのだ。この男は、災いしかもたらさん……!」

桃ノ助の前にある巨大な仕事用の机の上には、篠坂 奏の顔写真、プロフィール、家庭状況などが記録されたカルテが置いてあった。


——————————


「……とまあ、こんなもんですね、校舎の説明と言ったら」
「説明だけで、何で30分以上もかかるんだよ……」
「それだけ説明することが多いんですよ♪ 凄く広いので」

椿に歩きながら説明されたが、大分長かった。とはいうのも、この学校の有様というのか。一言でまとめると、結構なお坊ちゃまお嬢様学校だった。それなのにも関わらず、個人の自由性を重んじるこの学校だからこそ、生徒会占拠法は確立されているわけで、これだけ多くの敷地内も誇っているわけである。
更に驚いたのは、芸能人なんかも通っているらしい。個人の自由性とは、勉学と仕事を両立させる芸能人の人にも役立たれているらしい。芸能人、といっても若いアイドルや読者モデルぐらいだと思うが、それでも俺の地元とはえらく違う。
設備も、ここは大学かってぐらいの講義室に兼ね備え、まあ、色々とアホみたいにヤバい。とは言っても、それはあくまでお坊ちゃまお嬢様の方の校舎サイドで、実は凡人的な校舎も実在している。つまり、分けられていると言ったら言い方は悪いが、話のウマが合わないなんてことも満更でもないので、俺みたいな凡人衆はお坊ちゃまやお嬢様レベルのところではなく、平凡な方の校舎を選べと言われているようだった。

「奏クンは、どちらを選ぶか決めましたか?」
「いや、選ぶか決めるって、俺は圧倒的に凡人の方だろう」
「ふふ、そうですか? 何故?」
「……たまにお前は意味の分からない質問をするな。根っからの凡人ともう分かるだろ?」
「いえ、僕と同居しているんですから、それは違うんじゃないですか?」

同居て。言い方、同居て! もっとオブラートな言い方あるだろうに! ……って、男同士なんだから別にいいのか。ぐぅ、いつまで経っても慣れる気がしない……。

「ど、同居……じゃなくてっ、ルームシェアしてるだけでお坊ちゃん、お嬢様の校舎に行くっていう理由はないだろっ」
「あのー……」
「僕がそっちですから、同じ部屋に住んでいる者同士、同じにすべきではないですか?」
「あのー……?」
「いやいや! 意味分からん! どういう理屈だよそりゃ!」
「あのーっ!」
「……え?」

気付けば、俺と椿の丁度中間の辺りに、誰かがいた。その子は、ふんわりとした桃色の髪をして、長い髪なのだが、その中でよく見たらアホ毛が生えており、それに格好はワンピースという……って、どこかで見かけた顔だな……。

「ニャー」

その時、桃色の髪の女の子の手元から猫が一鳴きした。何かこの黒猫、どっかで見たことあるぞ……? ……あ、あ、あぁっ!!

「あの駅のホームの!」
「……? 何ですか?」
「ほら、俺が黒猫助けたんだけど、何か色々変なことになって、鎖鎌を持った駅の従業員のおばさんに追いかけ回された!」
「……あ、あぁっ! あの時の最低な人!」
「違う違う! 誤解だよそれ! その猫がめちゃくちゃ引っかいたから……!」
「ニャー?」
「……てめぇ! こんな時に限って愛くるしい声で鳴くんじゃねぇよ!」
「ほら! やっぱり野蛮な変態!」
「何か酷くなってねぇかな!? それ!」

とりあえず、色々と誤解されているようなので、色々と説明を繰り返していくが、何となしに理解されていないような気がした。

「変態と言ったのは、こちらの人に男装させていたからです」
「男装?」
「はい。こんな可愛い女の子に男装だなんて……どこからそんな知識を!」

知識の入手方法をツッコむのか。いや、そうじゃないだろうというツッコミ返しはさておき、

「こいつは男だよ。俺が言うのもなんだけど、確かめてもないんだけど、男らしい」
「初めまして♪ 七瀬 椿といいます」
「……性別は?」
「男、ですかね、一応、いや多分、ですね」
「「意味深だああああ!!」」

俺と桃色の髪の女の子が二人して叫んだ瞬間だった。