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- Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.4 )
- 日時: 2012/04/23 00:34
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
朝は清清しいに限る。今日の朝もそんなだった。
ガタンゴトンと電車で揺られ揺られ、目的の駅へと達すると電車から降りた。東京と同じような人混みというわけではないが、それの小規模ぐらいな人混みに流されるような形で駅のホームへと降り立った。
「えーと……こっからどこに行くんだっけ?」
目的の地である寮へと行く為の経路を確かめるべく、ボストンバックから紙を取り出した。えーと……駅から少し歩かないとダメみたいだな。
丁度いい、この街に慣れておくことも肝心なことだろう。そうこう考えている内に、随分と人混みが散ったような気がする。
早速階段をエスカレーターへと行こうとしたその時——
「あ、危ないっ!」
女性の声か何かが聞こえた。その声のおかげで、俺は咄嗟に地面へと伏せる。何かが飛んできたのを眼で確認すると、ボストンバックを地面へと放り投げ「せいやぁっ!」というダサい掛け声と共にそれを優しく受け止めた。
俺の後方付近からカランカラン、と金属がホームの床に転がる音と、胸の中には何故か子猫がいた。
ホームにいた数人のサラリーマンっぽい人とか、その他の人が俺の動きを見て感嘆の声を漏らしていた。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「あぁ、まあ……ッ!!」
目の前には、それはそれは可憐な少女がいた。心配そうに俺の方を見て、眼を潤ませようともしている。あぁ、こういうこともあるんだな。
「ぜ、全然平気ですよ。ハッハッハ。何が飛んできたとしても、俺の反射神経で……」
「あ、いえ……あの、血が……」
「え?」
「フギャーッ!」
よく見ると、愛らしいはずの子猫からもの凄い勢いで引っかかれまくってた。シャッシャシャッ、と小刻みに音が俺から出ている。あぁ、爽快——なはずねぇ。普通に痛すぎた。
「いってええええっ!!」
子猫を思わず放り出してしまった。その勢いで子猫は目の前の可憐なお嬢さんの胸元へ! 難なくキャッチしたお嬢さんは先ほどの様子とは何故か打って変わり、
「酷い! 子猫になんてことするんですか!」
「え、えぇ?」
いや、知らんよ! ていうか、俺血だらけの状態でなんで悪役っぽくなってるんだよ! それに、周りの人達までもが俺の方へと向いて、何か「最低だな」という呟きまでもが聞こえる始末とか!
「あ、あのさ……俺、その子猫を一応助けたっていうか、恩人っていうか……」
「子猫を放り出しておいてよく言いますね!」
「ニャー……」
「ちょ、おい待て待て子猫! お前さっきまで俺のこと散々引っかいておいて、急にその凶器的な愛くるしさを振舞うのはおかしいだろ!」
俺が血だらけの状態で尻餅をつきながら弁論を図っていたその時、
「黙れぇっ!!」
「ぶふっ!」
物凄い勢いで飛んできた業務員のおばちゃんによるラリアットを喰らい、その勢いで真後ろへと吹っ飛んだ。——線路の方に滑り落ちるところだった。マジでシャレにならねぇ!
ゆっくりと、見上げると、目の前には業務員のおばちゃんが仁王立ちでいた。
「あんた! 子猫は受け止めれて、私の鎖鎌はキャッチできないってどういうことよ!」
「いや、え……って、鎖鎌ッ!?」
後ろを振り返ると、確かにそこには鎖鎌が転がっていた。いやいや、皆さんこれおかしいでしょうよ。鎖鎌が何で駅のホームに……ていうか、業務員のおばちゃん、それ銃刀法違反で捕まるよ! んで、何で持ってんの!
「おばちゃん、何でそんなもの——」
「あぁん? おばちゃん?」
……いやぁ、どうサバを読んでも50代にしか見えないっすよ……。
本当、毎度のように——といっても、今日のは凄すぎるけど、何かしらハプニングが起きてしまう。これが俺の不運! というのも何だが、まあこんな感じで俺の人生は巡り巡っている。
「す、すみませんでしたっ!」
猛烈な勢いで謝り、俺は猛スピードでその場から逃げ出した。毎度のように、こういうことがあるとこんな風に逃げる。今回もこれで巻き上げれば——
「待てゴルァァアアッ!!」
ちょ、嘘だろ。この業務員のおばちゃん、見た目以上にクソ速かった。それによく見たら、何か持って——鎖鎌じゃねぇかああああ!
「うわぁぁああ!!」
必死で俺はその場から逃げ、周りの人達は何事もなかったかのように振舞うのだった。
そんな中、取り残された子猫を抱きかかえた少女は、白を基調とした薄い桃色のワンピースのような、ドレスのような服をふわりと春風に纏わせて、まるで嵐が去った後を見ているような、そんな感じの表情でその場に立ち尽くしていた。
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何とか業務員の鎖鎌から逃げ切った俺は、よく通報されないでいるよ、とか思いながらボストンバックを握り締めて目的地へと向かっていた。
ちなみにちなみの話なわけだが、先ほどみたいな反射神経を俺が取れたのは、あんな風なハプニングが毎度のように起こる為だからだった。まあ、言ってしまえば修羅場に慣れたというか……日ごろの体験のおかげで、いつの間にか俺の運動神経はぐんぐんと上がり、反射神経もあがったりして、あんな感じの動きが出来ちゃうようになったのだ。だからといって、あんなハプニングが毎度のように起こられちゃたまったものではない。
「お……着いたか」
紙の指示通り、寮に辿り着いた。結構広く、入る前に"時雨咲高等学校 寮"と書かれてある表札を目にした。
時雨咲高等学校って……どこのラノベだよっていうツッコミを余儀なくされるだろう。パンフレットなしに、ただ単純に寮があって、帰ろうと思ったら帰れる距離で、なおかつ元々いた地元の人間がいないであろう学校という理由でここを選んだのだけど、何か学歴として載せるのは少し恥ずかしい学校名だと今更ながら思った。
中へと入っていくと、玄関広場的なのが見えた。そしてその奥には玄関。巨大な施設みたいなのが目の前には聳え立っていた。凄いなぁとか思いながら見ていたら、そのまた後ろの方にはなにやら学校の校舎っぽいのが……って、ありゃ校舎だよ。絶対。
「繋がってたのかよ……確か、繋がってないって」
パンフレットを見ると、玄関は繋がってませんと書かれていた。いや、どういう意味だよ。ていうか、玄関から繋がってないのは当たり前じゃないのか。何で校舎から入ってから寮の出口に……え、何か意味分からなくなってきたよ。
「とりあえず、中に入ろう……」
入り口へと向かう。あぁ、どうなることやらと、頭を抱える俺がいたのもまた事実だった。
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……それから、この状況。思い返すこと、ここまで。寮に来たことはまあいい。それから、今日に至るまでが問題なんだったか。
目の前には、俺へと向かって腕を組み、何故か自信に満ち溢れた顔をして俺を見ている、美少女がいた。
着ている服装は学校のブレザーで、栗色をした髪が肩ぐらいまでのショートにまでに収められている。
ついでに言うと、俺の今の格好はブレザーではない。——何故かパンツ一丁であった。
そんな俺、篠坂 奏(しのざか そう)は正座の状態で記憶を必死に思い返しているところだ。
ええい、長すぎて俺も嫌気が差すが、
思い返し後半戦といこうじゃないか。