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Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.6 )
日時: 2012/05/01 23:49
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

この学校の寮制度について。
当学校では、あくまで学校の基本教育目標とされている個々の自主性に関しての教育を育む為、個人部屋は特別枠として基本は二人以上のルームシェア制度を実施している。……参照、パンフレット。

「ね? 言った通りですよね?」
「……見ていなかった俺が悪い、ということか」

ため息を漏らす俺に、両手を後ろで組んで、いかにも女の子らしい仕草と笑顔を見せながら七瀬 椿は言った。
どうしてこんなことになっちまったんだ、といくら思い返しても、自業自得という言葉以外出てくるはずもない。それ以上でも以下でもないし、あるとするならば己の不運という非科学的なことを呪う他に手立てもない。
部屋の中へと入った俺は、えらく豪華な造りに驚いた。……というか、ルームシェア制だと知ったことの方が驚いたわけだけど。
その豪華な造りはまさにVIPと言っても過言ではないほどの出来栄えだった。二人で住むただの個室にしては、やたらと大きい。普通の寮生の部屋の二倍、いや三倍程度はあるんじゃないだろうか。
そんなところで、俺はこんな女の子染みた男と名乗る奴と一緒にこれから過ごしていくわけか? 待てよ、聞いてないって、こんなシナリオ。
神様はどんだけ俺の人生で遊んだら気が済むんだ、とも叫んでやりたい。いますぐこの場所で。

「どうかしましたか?」
「……いや、心の底からやってやりたいことがあったが、もういいや……」

首をかしげて不思議そうなリアクションをする椿の表情もまた可愛い。——って、何を言ってるんだ俺はぁぁああ!! そんなBL路線で行くわけないだろ! やめろよ! 相手は男! これでも……

「何でお前が男なんだぁぁああ!!」

頭を抱え込むしかない。確かにただの生徒ではなさそうだった。この女の子にしか見えない驚異的な可愛さを秘めた男が存在するなんて、俺はこの世の中で生を受けてから初めてのことだった。嘘だろ、そこらの女子より普通に可愛いぜ、マジで。

「あはは、よく言われるんですよ。だから僕の前のルームメイトさんも辞めちゃって……」
「個人部屋にしたらいいだろ……」
「個人部屋は数に限りがありますし、それに色んな人と仲良くなりたいですから♪」

そんなルンルンな感じで言われても困る。
というか、何だこの高級そうなテーブルに椅子は。貧乏性の俺は何だかそわそわしてしまう。

「ところで……」
「え?」

突然、椿が俺に声をかけてきた。どこかしら、表情は笑顔なんだけど、どこか真面目な雰囲気というか、冷たいようなものがこもっている感じがした。

「篠坂クンは、今めちゃくちゃ不運ですか?」
「……はい?」
「言葉が悪かったですかね? ……うーん、それじゃあ……死にたいぐらい残念な人生を送ってきましたよね?」
「いや、酷くなってるから! そこまで言われると何をしているわけでもないのに死にたくなるよ!」

突然何を言い出すのかと思えば、まるで俺の人生全てを知ったような言い振りの言葉だった。どういう返事をすればいいんだ、と多少俺でも迷ったが、とりあえず正直に言っておいて何をデメリットはないように思えた。

「あぁ……まあ、確かに結構不運な毎日を過ごしてきたな。今日だって、朝で駅のホームで——」
「あ、そこまでは聞いてないです♪」
「……そうですか」
「あぁ、じゃあそれで身につけた運動神経はあるわけですね?」
「運動神経もだけど、主に反射神経だな……。とりあえず即座には対応できるように体が馴染んでいる、というか……」
「なるほど。やはり貴方は篠坂 奏クンですね♪」
「……いや、そうだけど?」

そりゃここまで来て実は篠坂 奏じゃないんです、とかどこのドッキリ番組だよ。他人にそんなことをしようなんてことは思わねぇし、面倒臭い。

「合格ですよね? ——さん」
「え? 誰に言ってんの?」
「いえ、少なくとも篠坂 奏クンにではないですよ?」

……怪しいな、おい!
さっきからもずっと思ってたんだけど、何か隠し事というか、只者ではないというか、変な質問しかしてこないし……もっとどこの高校だったの? とかいう素朴な疑問が来ることを俺は最も恐れていたのに対してわけのわからない質問ばかりで戸惑うばかりだ。
もしかしたら、こいつ男とか言っているけど男装が趣味の女の子なんじゃねぇのか、とか思い始めてきた。うわ、そんなこと思ってたらだんだんこいつが女の子に見えてきた。やばい、そんなこと思うんじゃなかった! 何をしているんだ俺は! 凄く心臓がドキドキしてきたじゃないか! やめろっ、誰か止めてくれ! やばいやばい、やばいって——

「あの、聞いてますか?」
「へ?」
「いや、あの、ご飯とか食べました?」
「あ、いや、まだだな、そういえば……」

そんなことを言っていると、お腹が鳴ってきた。ううむ、腹は正直だ。昼飯時だったし、早く飯を食いたいと思っていたことをすっかり忘れていた。
気付けば、時間は既におやつの時間すらも過ぎていた。随分とこの部屋、205号室を探していたもんだと、我ながら時間を無駄に感じた。

「ならよかった! 今日、貴方が来ると聞いてご用意しておいたんです♪」
「え? 何を?」
「決まっているじゃないですか! ディナーをですよ♪」

とか言った矢先、椿が指を鳴らした。その途端、突然どこからか黒服のごつい野郎達が凄い勢いでこの部屋の中へと入ってきた。かなり広い部屋なので、こんな男達が入って来てもあまり苦にはならなかったが——無理矢理にもナプキンをつけられ、何か色々スプレーみたいなんで消毒させられ、気付いたら目の前のテーブルには山ほどの食事が並んでいた。それも、どれも豪華なものばかりで海鮮料理やら肉料理やらパスタ料理やらも色々あった。まず、これだけの量を食いきれるわけがない。

「どうぞ、食べてください」
「いや……食べてくださいとかって、こんなに食べれないっていうか……一体、お前は何者な——」

と、その時。
ガチャガチャ! っと、何やら物騒な音がした。んで、俺の周りをおそるおそる見てみると——黒服の男達が皆、俺に向けて銃を構えていた。いや、モデルガンじゃないと思うよ? 本物の銃? え、銃刀法違反とかじゃね?

「あぁ、そんなにカリカリしないでください。篠坂クンは大切なVIPですから、やめてください」

椿のその言葉で、黒服の男達は一斉に銃を懐へと隠していった。……いやいやいや、何の映画のワンシーンですか、今の!

「あ、あのさ……えっと、七瀬 椿さん?」
「はい? 椿、でいいですよ♪」
「……そう呼んでも大丈夫?」
「勿論♪ もう拳銃なんて出しませんから」
「……それじゃあ、椿——」

ガチャガチャ! 
……って、おい。普通に出してるじゃねぇか。

「いえ、中身は水ですから」

と、椿が言った途端、黒服達は一斉に水鉄砲を放った。水が俺の顔へと四方八方にかかる。ねえ、何これ? 何この珍プレー?
放水が終わった頃には、俺の顔はビチョ濡れだった。

「あれ? 得意の運動神経を見せてくれるかと思ったのですが……」
「見せれるか! アホか!」

ガチャガチャ! ピュー……。


もう嫌だ。誰か助けてください。


——————————

「という夢を見たんだ」
「いやいや! 全部事実だから!」

パンツ一丁で縛られながらも、俺は目の前の女の子に向けてツッコむ。
回想的には、それが昨日の食卓というか、あれから何度か水鉄砲の餌食になってからようやく食事にありつこうと思ったら、食い物が皆水鉄砲による水で台無しになってた。
それからとりあえず、寮専用の風呂場へ行って、着替えて、寮部屋へと戻って、色々と仕度をしたりした後、普通に寝た。

んで、気付いたらこうなってたというわけです。

はい、ここに至るまでの回想は終わり。果てしなく長かった。何ページ使うことになっただろう、これだけで。
両手両足が縛られてて、何故かパンツ一丁で。俺は目の前にいた女の子から突如言われた言葉。それが——


「生徒会に入れ!」


だったのである。