コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ☆CLOVER☆ ( No.60 )
日時: 2012/06/03 16:32
名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: JkjZHF0x)

○o。. 特別編 リンネの優雅(?)な休日 リンネside .。o○

ピーンポーン……

「リ〜ンネっ! 遊びに行こう♪」

 GWの真っただ中だと言うのに、実家へ帰っているあたしの家にわざわざ遊びに来る明るい声。
 この声は……。あたしは、タタッと入り口の近くへあるインターホンへと向かった。カメラに、緑色の目と髪色をした、美少女が映っている。

「……ミリア? 悪いけど、あたしはミリアと違って忙しいの。今度にしてくれる?」
「え〜? なんで?」

 あたしは、弟が風邪を引いて看病しなければいけないと、理由を話した。……インターホン越しに。

「あれ〜? リオン君、風邪? 珍しいねぇ〜。じゃあ、しょうがないね。ライトお兄ちゃんと遊びに行こうっと!」

 そう言って、ミリアはガチャッと乱暴に外に出て行った。

(なんなのよ……)

 あたしは、フカフカの白いソファに思いっきり飛び付いた。このソファ、ブルーの羽が少し落ちてるけど、それが心地いい……。

「……お姉ちゃん、ミリアさんが来たの?」

 その時、リビングの真ん中からのんびりして少しやつれた声がした。
 振り向くと、あたしと同じ水色の髪にマリンブルーの瞳の弟が、上半身だけを起こしてこっちを見ていた。
 そっか、リオンいたんだっけ。存在感ないから、忘れてたわ。
 一応説明しておくわ。リオンは、あたしの一つ下の弟。無口で、家でもほとんど喋らない。……まあ、その方がうるさいよりもよっぽど良いんだけど。

「うん、でももう帰ったわ。調子はどう?」
「大丈夫」

 リオンはそれだけ素っ気なくつぶやくと、また布団に横になった。……相変わらず、冷たいヤツ。

ピーンポーン……

「す、すみません。リンネちゃん、いますか?」

 大きくインターホンが鳴ったと思ったら、同時に、明るくて、けど、少し不安そうな女の子の声が聞こえてきた。

「……あ、いませんか?」
「……いるわよ。何の用?」
「あ、良かった。えっと……」

 この声は、どうやらリリーちゃん。この春に転校してきた、可愛い女の子。

「えっと……。ごめんね、ちょっと宿題の答え教えて欲しいんですけど……」
「は?」
「……え?」

 しゅ・く・だ・い・の答え?

「あ、あの。フエルア先生に出された問題……、もしかして、リンネちゃん、まだやってない?」

 画面に、プリントの束をパラパラとめくるリリーちゃんが映し出される。
 少し涙目で、本当に不安そうな表情。
 ……可愛いなんて、ちっとも思ってなんかないんだからねっ!
 あたしは、じっとリリーちゃんの顔を見つめながら、フェアリーの飼い方についての問題の答えを教えた。

「ありがとう、リンネちゃんのおかげで助かったよ。……あたしの顔に、なんかついてる?」

 その時、リリーちゃんのアクアマリンのような青い瞳が映し出される。
 ……良く見ると、胸元についている青いペンダントと、ほとんど同じ色。
 あたしは、小さく横に首を振った。ずっと顔を見つめていたの、バレちゃったのかな。あたしは、何もないよ、とリリーちゃんに伝えた。
 ペコッと小さくお辞儀をして、リリーちゃんはちょこちょこと帰っていく。
 手を振りながら、あたしは思った。
 いつもローブの姿しか見たことはないけど、私服も、結構可愛いかも……。リリーちゃんに良く似合う水色のワンピースに、小さなリボンがついた、白い帽子。

ピーンポーン……

 あたしが変態的なことを思い浮かべているうちに、もう一度インターホンが鳴った。

「おはよう、リンネ! ねえねえ、あたしのトンボ、知らない?」

 画面に映し出されたのは、リリーちゃんではなく、金髪をサイドテールにした女の子。
 はあ、シフォンか……。

「あっ! リンネ、さっき、『シフォンか……』って顔した!?」
「何でわかるの。しかも、おはようじゃないでしょ……」

 はあ。ミリアも含めて、こういうハイテンションの子って、すごく疲れる……。
 だからと言って、一人も嫌なんだ。

「それはともかくっ! ねえ、レッド知らな〜い? 捕まえたけど、間違えて逃がしちゃった〜」

 シフォンがジタバタと暴れて、画面が少し歪んだ。

「わ、分かった! ……レッドって、誰?」
「察してよ! 赤トンボだから、レッド! リンネ〜ノリ悪い〜」

 そう言って、シフォンはダランと腕を下ろした。疲れたのは、あたしの方だっつの。
 しかし、この子のネーミングセンス、『ルンちゃん』とか『リンちゃん』とかどうなってんのよ……。
 リンちゃんって言うのは、あたしのあだ名。それじゃ、鏡音リンみたいだから今では全く使ってないんだけどね。
 しかし、赤トンボなんていない。

「……悪いけど、レッドはいないわ。とりあえず、もう帰ってくれる?」
「……分かったぁ」

 シフォンは、寂しそうな顔をしてインターホンを切った。
 あたしは小さくため息をつく。GWの真昼間から、三人の女子が来て……そのうち一人はまともだったけど……。

「ねえねえお姉ちゃん」

 背後から、リオンの声がした。

「どうしたの、リオン?」

 振り向いて、リオンの指の先を見ると……夕陽のように真っ赤な赤トンボが、ほっこりした顔でとまっている。
 これって、シフォンが探してた……。
 良く見ると、赤トンボを見るリオンの顔は、夕陽に当たる海のように、キラキラとしている。
 夕陽のように真っ赤なトンボに、それに当たる海のようなリオン……。なんか、合うわね。
 まあ、リオンも少しは元気になったみたいだし、本日は一件落着……かな?