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Re: ☆CLOVER☆ ( No.61 )
日時: 2012/06/02 10:28
名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: JkjZHF0x)

○o。. 二十四話 綺麗な薔薇には棘がある .。o○

 先生もみんなも、一体どうしちゃったんだろう?

「お〜い……」
「ん?」

 遠くから、『お〜い』という男の人の声がした。……ような気がする。

「どうしたの。リリー?」

 ミリアちゃんが、あたしの顔を覗き込んで、不思議そうにこう言った。アズリちゃんも、ぐったりした顔のままあたしをじっと見ている。

「ねえ、さっき……、男の人の低い声、聞こえなかった? お〜い、っていう……」
「え? ボクは、聞こえなかったけど……」
「アズリも」
「おかしいなあ……」

 あたし、疲れちゃって、ちょっと幻覚みたいなものを見ちゃったのかなあ。あ、声だから幻覚じゃなくて幻聴か。

「お〜い!」
「アズリちゃん、リリー、ミリア! 大丈夫!?」
「どこにいるの? てか、いるんでしょ?」

 その時、やけに聞き覚えのある……フリント先生と、シフォンちゃん達の声がした。
 あたしは、ミリアちゃんとアズリちゃんに、「さっきの、聞こえた?」と言った。

「うん。ボク達の名前、呼んでた……あれ、シフォンとリンネの声だよね……?」
「誰か、アズリ達を探しに来てくれたのかな?」

 あたしは、職員室のドアを、そっと開けた。いつの間にか、黒い煙はサッパリと晴れている。
 その時、ドドドドドド……という低い、誰かが走ってくるような音がした。

「誰かいるみたいだよ! みんな、来て!」

 あたし達は、ドアをバタンと全開にして、外に出た。

「あ、リリー達だっ!」

 その時、左側からシフォンちゃんの声がした。
 シフォンちゃんを見ると、よれよれのローブで、ゼイゼイと肩で息をしている。あたし達のことを、ずっと探してたみたいな。

「良かった! 無事だったんだね……」

 そう言って、シフォンちゃんはヘナヘナと石でできた廊下に座り込んだ。いつもはピンピンにはねていた黄色いサイドテールも、心なしかぐったりとしている。

「し、シフォン。何があったの?」
「あのね、家庭科室を使ってた二年生が、間違えてガスコンロの電源を入れっぱなしにしていたの。放送室も、鍵が見つからなくては入れなかったみたいで。それで、一時はどうなるかと思ったんだけど……無事で良かった!」

 ミリアちゃんの問いかけに、シフォンちゃんは上目づかいでこういう。
 さっきの煙は、家庭科室から出たものだったんだね。

「エリザちゃんや、サイラちゃん達も心配してるよ」
「……そう。ごめんね、心配掛けて」

 ミリアちゃんが髪をいじりながらこういうと、どこからか「いたのか!?」という大人の男の人の声がした。

「フリント先生! 全員、無事でしたよ!」

 シフォンちゃんはすくっと立ちあがって、反対から来ていたフリント先生に報告する。

「ああ、良かった……」

 フリント先生は、あたし達の肩をポンと一回ずつ叩いて、「教室に戻りましょう」と言った。

「……それで、ミリアさん達は、職員室に逃げた……と、いうこと?」

 活気が戻った職員室で、あたし達が呼び出され、先生達がいない間の状況を説明していると、フリント先生は妙に納得したような、不思議そうな顔をした。

「はい。シフォンによると、放送室が使えなかったみたいで」

 ミリアちゃんが、顎に指を当てて、考え込むようにこう言った。

「ああ。鍵が見つからなくてね。やっぱり、整理は大切だと思うよ」

 フリント先生は、あはは、と苦笑いしながら言った。

「それにしても、君達、よくあんな状況でパニックを起こさなかったね」
「…………」

 ……そういう余裕が、なかっただけなんだけど。

「まあ、ここで長話する必要もない。もう、君達は寮へ戻っていいよ」

 フリント先生はにこっと明るく笑って、あたし達を寮まで送ってくれた。あたし達はお礼を言って、「じゃーね!」と言いあった。
 ベッドの前で、もっふーの寝息を聞きながらあたしは思う。
 ……良く分からないけど、学校案内を早く終わらせられて良かった!