コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【参照三百突破!】☆CLOVER☆ ( No.64 )
- 日時: 2012/06/07 18:45
- 名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: u5JYbeHw)
○o。. 二十七話 もっと? きっと! さようなら .。o○
この日から、先生や他の子達には内緒で、あたし達はそれぞれのベッドで寝ることになった。
この前はミリアちゃんの部屋、昨日は恵ちゃんの部屋。そして、今日は、あたしの部屋でみんなが寝る。
召喚術が終わって、あたし達が自分の部屋に戻ろうとすると、フリント先生に、あたしとミリアちゃんだけ残されることになった。テストの点が良くなかったのかな?
ミリアちゃんは(ああ見えて)成績いいはずなんだけど……。
「ミリアさん、リリーさん。リリーさんとミリアさんは、人間界から来た、『双葉恵』という子を知っていますよね? 実は、その子の家族が……」
「ふぁ〜! 今日も、疲れた!」
「恵は、何にもやってないでしょ!」
いつからか、ミリアちゃんは、恵ちゃんのことを『恵』と言う。別に、呼び方はなんといっても良いけど、なぜかあたしだけが取り残されたような気になる。
こ、これって嫉妬? もしかして……。
「ボク、ちょっと水飲んでくる」
そう言って、ミリアちゃんは部屋を出て行った。恵ちゃんといるのが楽しかったはずなのに、何を話せばいいのか少し分からなくなってきた。
「ねえねえ。リリーちゃんって、いつからここにいるの? ずっといた?」
急に、恵ちゃんが改まった表情で聞いてきた。
「え? う〜ん……。大体、二か月前ぐらいからかな?」
「ふ〜ん……。それなら、転校してきたの?」
「うん。最初は、何が何だかわからなかったよ〜」
「あは! だよねっ!」
恵ちゃんが、くすっと無邪気に笑った。……やっぱり、この笑顔がこれから見られないなんて、少し寂しくなる。
「あれ? どしたの、リリーちゃん……」
恵ちゃんがあたしの顔を覗き込んでくる。
「なんでもないよ!」
「……そう?」
恵ちゃんは、すっかり興味を失ったように、真ん中で寝ていたもっふーに手を伸ばした。
「うわ〜ふっわふわ〜! ジョニーみた〜い!」
「ジョニー?」
「うん。私が飼っていた犬の名前なんだよ」
「…………」
そういう恵ちゃんの顔は、どこか少し寂しげに見えた。
「そういえば、ミリア、遅いね」
「……うん」
もう外も暗いから、少し見に行ってみようかなと恵ちゃんに行って、あたしは部屋を出た。
大広間(?)の台所には、案の定、ミリアちゃんの姿が見えない。
その後、トイレや教室など、様々なところを探してみたけど、ミリアちゃんはいなかった。
「ここには……いない、よね」
あたしがつぶやいたのは、ベランダへの入り口。危ないからって、ベランダに出るのは禁止されている。
まさかと思って、ドアノブに手を伸ばしたら、思ったより簡単にドアが開いた。
「あれ、リリー……?」
そこに、真っ赤な目に大粒の涙を浮かべた、ミリアちゃんがいた。
「そっかー。明日で、恵ちゃんとお別れだもんね……」
「うん……せっかく人間界のお友達が出来たのに……」
あたしとミリアちゃんは、寮のソファに座って少し喋っていた。実は、恵ちゃんとは明日でお別れ。さっき、フリント先生に呼ばれた時、こんなことを言われた。
『恵さんの祖母の死期が早まっていると校長先生のお告げがありました。貴方達は寂しいでしょうが……明日で、恵さんとはお別れです』
嘘だよ。早すぎるよ。
第一、校長先生、『人間界のことは私がなんとかしておきます』って言ってたじゃない! あれは、嘘だったの?
いや、無関係な人を責めても仕方がない。都合は、あたしがしっかり受け止めなくちゃ。
次の日。
「え……? おばあちゃんが、急病!?」
人間界と繋がっている電話で、恵ちゃんがこんなことを言っていた。
しばしの会話の後、恵ちゃんが突然電話をガチャンと切って、あたし達の方を向く。
「あのね、私……ちょっと、人間界に変えることになっちゃったみたい。校長先生の所に、行く」
恵ちゃんは無愛想にそう言って、校長室へ向かっていった。あたし達もあとを追う。
「それでは……お別れです」
再び、中庭でブラックホールが開かれる。なぜか、前見た時よりボンヤリしているように見えた。
「あ、そうだ……。ミリアとリリーに、渡したいものがあるの」
涙を白いハンカチで拭いながら、恵ちゃんは言う。あたし達の所に駆け寄って、ポケットから何か小さなものを取り出した。
……今、あたしのこと、『リリー』って言ってくれた……?
「これは、ミリア。そして、これが、リリーね」
恵ちゃんは笑ってそういうと、ブラックホールに走って行った。
同時に、もっとブラックホールが大きくなる。
「それじゃあ……さようなら!」
その日の夕方。あたしは、自分の部屋で恵ちゃんからもらったものをじっと見つめていた。
花柄の袋に入っていたのは、まるでもっふーのような犬の形の、木でできたお守り。良く見ると、下の方にローマ字で『riri-』と記されている。
袋の中には、小さく折りたたまれた紙切れも入っていた。
『リリーへ。
これ、もし貴方達とお別れする時ように、とっておいてたの!
リリーやミリアといられて、とっても楽しかったよ。正直な気持ちを言うと、もっと一緒にいたかった。
今度会える時は、ぜひ人間界へ来てね! どうするかは、お任せ!
双葉 恵より』
あたしは手紙を読んで小さく折りたたむと、お守りと一緒に、引き出しの中にそっとしまっておいた。
きっと、いや、絶対に。絶対に、また会おうね---------------!