コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【お知らせあり】☆CLOVER☆ ( No.83 )
日時: 2012/07/01 17:45
名前: かがみ ◆CijpBuWabs (ID: vuXCwYqs)
参照: http//

○o。. 三十二話 本当に七不思議? .。o○

「リリー・ミクル、七不思議に興味ないって、本当か?」

 あたしとミリアちゃんは、後ろを振り向いた。 目の前には、少女漫画にでてくる、主人公の恋愛対象のような、がっちりしてジャニーズにいそうな体格の男子。 なに? あたし、目つけられた?

「え? あたし、別に興味な……って、いきなり何よ?」
「本当に、興味な……じゃなくて。 信じてないのか?」

 まあね、信じている人がほとんどだけど、あたしは別に……。 だけど、なんか口に出したらめんどうなことになりそう。 これはあたしの勘だけど。

「信じてなくも……、もともと、怖くないから」

 この人は、目を細くさせると、「ほう……」という喧嘩腰の声をあげた。
 はぁ、絶対に何か考えてる……。

「じゃ、お前さ。 新聞作りに協力してほしいんだけど」
「は?」

 し・ん・ぶ・ん・づ・く・り!?
 じょ、冗談じゃない!! 新聞係に利用させられるってこと? そんなの、絶対にやだ!

「いや、もうすぐ夏だから、怖い物好き向けの新聞作ろうと思ってるんだよね。 だから、協力してほしいんだ。 ……怖くない奴に」

 ああ、そういうこと……。

「その協力って、すぐに終わる?」
「まぁな。 七つの七不思議を見てくるだけだから……。 いないかもしんないけど」

 なんだ、この人も信じてないじゃん。 まぁ、七不思議の場所を見てくるだけなら面白そう!
 夜の学校なら、別に怖くないし。

「引きうけた!」

 あたしが胸をはって言うと、新聞係らしい人は、ウキウキした表情で言う。

「じゃ、じゃあ、心配だから、もう一人怖くない人と一緒に行け! ……心配とかじゃないんだからな! 何かあったとき、心配なだけだからなっ!」

 何よそれ。 ていうか、あたし一人じゃないんだ。
 なぜか、「信じていないから」という理由で、レノア君と一緒に行くことになった。 なんか、いろいろな意味で不安だな……。
 あたしは、ポケットから小さく折りたたまれた紙を取り出した。 これは、新聞係の人からもらった、七不思議ツアー(?)のしおりみたいなもの。 一応、学校の断面図と七不思議が詳しく乗ってある。

「レノア君、まず、ここに行こ」

 その夜、先生達に許可をもらって、夜の学校に入った。 あたしは、ここから一番近い音楽室を指差した。 その【音楽室】と書かれている文字の下に、汚くて小さい字が書いてあった。 ただでさえ暗くて読みにくいのに……。

「音楽室の七不思議は、『夜、モーツアルトの肖像画の目が瞬きする』……だって」
「全然怖くないじゃん。 そんなので怖がる奴いるの? ま、いいや、レッツゴー」

 レノア君は、柄にもなく張り切った声で歩き出す。 興味あるのか、ないのか、どっちなの……?

 しーんと静まりかえった音楽室。 モーツアルトの肖像画の目が、不気味にらんらんと光っていたけど、特に異常なし。 数分間見つめていても、まばたきどころか、一ミリも動かなかった。
 とりあえず、ここはデマ……で、良いよね?
 続いて、あたし達は二つ目の不思議に迫ることにした。 召喚室にある大きな黒板が、歪んで見える……という、不自然きまわりない七不思議。
 召喚室に行ってみても、この間劇をやった時と変わりないし、黒板が歪んでも見えなかった。
 こんな調子で、三つめの不思議、『理科室で、人体模型が歩き回る』。
 人体模型がある倉庫は、鍵がかかっていてあかなかった。

「あいてないね、次のところに行く?」
「いや、待って。 ここから覗けるかも」

 レノア君は、背伸びをして、扉についている小さな穴を覗き込んだ。

「……ここから人体模型が見えるけど、歩き回ってないよ」

 試しにあたしものぞいてみたけど、レノア君の言うとおり、歩き回ってない。
 はぁ、疲れた。 もしかしたら、これから動き回る、もしくはもう歩き回った後ってこともあるけど、待つの面倒くさいし、眠いということで、四つ目の不思議に取り掛かった。
 四つ目の不思議は、校庭にある、鯉の泳いでいる小さな池には、ちょうど大人の男の人ほど大きなサイズの、お玉じゃくしがいるらしい。

「…………まだかな」
「…………まだだね」

 あたしとレノア君は、池の近くに体育座りをして数十分間じっとしていた。 鯉の影も見えない。
 緑色に濁った池には、黒くて細いアメンボの波紋が広がるだけだった。
 もう、やる気なくした……と言っても、新聞係がどっかから、あたし達がちゃんとやっているか監視しているかもしれないし、とりあえず五つ目の不思議に取り掛かった。
 五つ目の不思議は、図書室で、たくさんの本が浮かび上がっている……とかいう、つまらなさそうな不思議。
 実際に図書室に行ってみたけど、レノア君はともかく、あたしは数分もしないうちに眠くなって、とりあえず戻った。 本を見るだけで、眠くなる……。
 六つ目の不思議は、踊り場のテラスの窓から身を乗り出すと、ときどき、向かいの高い家から、人が飛び込む姿が見える、というの。

「あ、いた……ごめん、カラスだった」

 さっきから見ているけれど、こんな言葉が飛び交うばかり。 これって、七不思議っていうか、高い家が自殺の名所だったってだけだよね……。 それも、“ときどき”だし。
 これも一応パス。

「あれ……? 七つ目の七不思議、書いてないね」

 あたしは、七不思議のしおりの【七つ目の不思議】のページを開いて、こういった。

「当たり前じゃん。 七不思議は、七つの不思議を全部知っちゃうと死んじゃうんだから」

 レノア君があきれたように言う。
 そ、そうなんだ……ってことは……。

「やった〜あ! 帰れるぅ!」
「あ、待ってよ! 俺も一緒に帰るから!」

 次の日。
 あたし達は、隣のクラスの新聞係の人に、とりあえず何もなかった、ということだけ伝えて、召喚室に向かう。

「……アルキメデスと、スピカという薬品を混ぜると、かなり危険ということを、ノートにうつしておいてくださいね」

 フリント先生が、電光掲示板に、さっきの言葉を映し出した。
 めんどくさ……。 って、あれ?
 昨日、七不思議で召喚室に行った時、電光掲示板ではなくて、黒板だったような……。 眠かったから、あたしの見間違い?
 ふとレノア君の方を見ると、レノア君もポカンとして、不思議そうだった。
 その後、音楽室や、昨日言ったところをもう一度見てみる。
 モーツアルトの肖像画、人体模型、校庭にある小さな池、踊り場のテラス——どこを探してみても、見当たらない。
 図書室の本は、昨日入れ替えるとか言って、昨日はなかったはずだし……。
 昨日の夜の出来事は……すべて、あたしの夢?








「夢じゃないよ」









 そんな声が、どこかから聞こえたような気がした。