コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: イケメン三王子と、恋するメイドさん ( No.34 )
- 日時: 2012/05/05 13:25
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: CMSJHimU)
- 参照: 朝
「はーい! みなさん、朝ですよー! 起きてくださーい !!」
わたしは、メガホンを手に持って、大声で叫ぶ。
「遅刻しますよー !! 」
と、ドアが開いて、そこから、うざったそうな表情をした光さんが出てきた。
「煩い。起きてるから、黙って」
「だって、弟二人が起きてないじゃないですか!」
メガホンで、半ば叫びながら言うと、光さんは耳を押さえた。
「あ… のな! メガホン持って叫ぶな!」
「ごめんなさーい!」
自分でも、耳がキンキンしてきた。
「だから、いい加減にしろって!」
「だったら、弟二人を起こしてくだーさい!」
「今、のばすところ変だったぞ !? 」
そう言いながら、光さんは、輝の部屋に入っていった。 …てことは、わたしは陽くんを起こさねばならない。
「陽くーん! 起きてー!」
メガホンで、再び叫びながら陽くんの部屋に入っていくわたし。
陽くんの部屋は散らかっている。
「あぁ、もう! 掃除しろって言ったのに!」
愚痴をこぼしながら、陽くんが眠っているベッドまで近寄る。足の踏み場もないほど散らかってるんだから、ベッドまで行くのも大変だわ。
「陽くーん! 起きてー!」
陽くんの耳にメガホンをあてて叫ぶと、さすがの陽くんも目を覚ました。
「うわぁぁっ!」
陽くんは、耳を押さえて丸まった。
「何するんだよ、結愛ちゃん! ひどいだろ!」
「だって、陽くんが全然起きないから… 」
「だからって、もう少しマシな起こし方だってあるだろ !! 」
文句を言ってくる陽くんだけど、自業自得。わたしは何も悪くありません。
「 …てことで、ちゃんと着替えてくるんだよ!」
わたしはそれだけ言うと、キッチンへと急いだ。
「お腹減ったー!」
「早くしろよ、結愛」
「また、遅刻するぞ」
「はいはい! ただいま!」
ニッコリと笑って返すわたしだけど、多分殺気が漂っているだろう。
「召し上がれ !! 」
わたしが速攻で作った朝食を、三人の前に置く。
「「「いただきまーす」」」
三人は食事を始めるが、わたしはのんびりと食事をする暇などない。なぜなら、家の掃除をしなければならないから。
榊原宅に、メイドはわたし、ただ一人だ。家政婦さんなどもいないから。必然的に、わたしが全ての家事をしなければならない。
正直、もっとメイドの人数を増やしてほしいと思ったし、それを榊原三兄弟の父であり、この家の主である榊原照彦さんにもそれを言った。なのに、照彦さんは「駄目だ」の一点張りで。
その時の目が、とても哀しそうに見えて、わたしはそれ以上、何も言うことが出来なかった。
照彦さんに何があったのか知らない。そして、三兄弟のことも。もう、十年近く一緒に暮らしてきたのに、知らないことはたくさんある。
わたしには言えない秘密がある。
別に、知ろうとも、知りたいとも思わないけど、やっぱり、哀しい。
それは。
まるで、わたし一人が除け者にされているようで——。
哀しい。