コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *迷恋華* ф実話ф ( No.15 )
- 日時: 2012/05/12 19:33
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: lcGOSbxj)
- 参照: 未完成で曖昧な恋の色。
第三話『スキナヒト』
次の日——。
私は重い気分の中、教科書を片手に移動教室へと向かっていた。
新学期と言えば、爽やかなイメージ。
だけどそれに反して、私は複雑な心境である。
新学期から一夜明けたのには変わりはないが、やっぱり気分は晴れないもんだ。
移動教室前に到着するが、鍵が開いてないらしくクラスメイト達が廊下で待っている。
私は廊下の壁に寄り掛かり、先生が来るのを待つことにした。
その時に、ふと壱の方を見てみた。
すると、壱と目が合っ——……
……た訳ではなく。
その横に居た疾風と目が合う。
それと同時に、疾風は壱に向かって口を開いた。
「他に好きな人いるんだろ?」
——……え?
「や、——」
「教えろよ〜!!」
軽く戸惑っている壱に対し、疾風はからかうように笑っていた。
私はその光景を茫然と見つめる。
壱 っ て 好 き な 人 い る の ?
脳内でその言葉が弾けた時、ちょうどチャイムが鳴った。
タイミングよく先生も来て、ドアが開いたので教室内へと入る。
……ううん、あれは聞き間違え——……な訳がない。
はっきり聞いちゃったもん、目の前で。
壱は恋愛に興味ないから、私を振ったんじゃなくて……。
好きな人がいたから、振ったの?
誰?
優香ちゃん? 志保ちゃん? それとも、他中の人——……?
「——おい、壱の顔が険しいことになってるぞ」
頭の中でぐるぐると女子の名前がループする中、龍が壱に向かって呟いた。
私は一旦思考を停止し、壱を見る。
壱は、顎に手を当てて何か考え込んでる様子。
「……まさか、こんなことになるなんて思わなかった」
壱はそう小さく、はっきりと呟いた。
……正直言うと、それは私の台詞です壱君。
私だって、こんなこと——。
壱に好きな人が居るなんて事、思ってもいなかったわ!!
そう心の中で叫んだ瞬間、龍が立ち上がった。
「もう俺、何も言わないからな!! 自分でなんとかしろよ!!」
「ちょ……っ!!」
龍は壱を押しのけるように言い放ち、龍は壱から離れた。
「龍!!」
壱は軽く笑いながら、引き留めるように名前を呼んだ。
しかし龍はお構いなしに、壱から離れる。
……一体、何が起こってるんだ。
そんな頭が混乱しそうになる思考の中、思ったことが一つ。
龍さん、今授業中ですよね?
**
授業が終わり、休み時間。
私は飛びつくように、優と由良の元へと向かった。
「優、由良!! ビッグニュース!」
「どした、依麻」
二人は特に驚きもせず、冷静。
私は一人焦りながら、二人に向かって口を開く。
「……壱、さ。好きな人いるっぽい」
「あ、それ私も聞いた」
「え」
優の冷静な一言に、私は固まった。
情報早っ!!
「なんか、疾風と壱がなんか抱き合っててさ」
「抱き合っ……!?」
「疾風が壱に『好きな人教えろ』って言ってた」
優がそう言うと共に、心が重くなる感覚がした。
やっぱ、好きな人居るんだ……。
「私も疾風から聞いたんだよ……。『他に好きな人いるんだろ』って……」
「まじで?」
「うん……。優はそれ、いつ聞いたの?」
「愛奈と二人で話してる時」
「そっか……」
ということは、やっぱり——。
私は小さく溜息をつき、うなだれた。
これが冗談だったら、どれほど良いか。
好きな人がいる、だなんて——……。
「——で、壱はなんて言ってたの?」
「『はぁ?知らねぇし〜』っていってた」
その曖昧な態度、絶対いる。
明らかに確信した。
「……はぁ……」
日に日に溜息が多くなる。
壱は好きな人、いるんだね。
私がこんなに好きでいても、もう一度頑張ろうとしても。
もう君は、100%振り向いてくれないんだね。