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Re: *迷恋華* ф実話ф ( No.22 )
日時: 2012/05/23 17:26
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: b1kDOJaF)
参照: 後悔しないの 君に近づいた

第七話『想い人』


話せないまま、何も出来ないまま——。


本当にそれで、いいの?


**


「……あう」


次の日の、給食片付けの時間。
壱が私のすぐ近くの、ご飯の前にいた。
壱がそこに居ると、片付ける事が出来ない。
近くに居るのは嬉しいけど、緊急事態だ。


「……あ」


そこでどうしようかと考えていたとき、壱が振り向いて私に気が付いた。
低い声を漏らし、私を見る。


「……あぁ、」


そこでようやく、気が付いて手を出してくれた。
……って、え?
これは要するに、カップを渡していいと……?
頭の中で混乱するのと同時に、壱はカップを受け取って代わりに片付けてくれた。


「……ぅあ、ありがとう」


私はお礼を言い、すぐさま離れた。
やばいやばい緊張する!!
軽く顔が火照るのと同時に、嬉しさがこみ上げた。


しかし、


「——……俺、辛い」


遠くで聞こえたその壱の言葉に、一気に頬の熱が覚める。
つらい、って言った?
私の耳には、ちゃんとそう聞こえた。


何が辛いの——?
疑問が頭の中を、ゆっくりと駆け巡った。


**


その日の放課後も、文化祭活動。
しかし装飾はまだ活動がなかったので、教室で待機。
由良と机に座り、話していた時——。


「俺がいいアイデアを考えてやる」


後ろに居た疾風のもとに、壱がやってきた。
疾風はお礼を言って、シャーペンを渡した。


「壱って草食系男子だよな〜」
「も〜、そういうこと言うなよ〜」


疾風は突然そう言い、壱をからかった。
壱も笑いながら、疾風に言いかえす。
草食系……かぁ……。
確かに、壱は草食系だな。


すると、その話を聞いていた由良が思い出したかのようにこう呟いた。


「そういえば、部活で壱と仲のいい男子に『壱って好きな人いるの』って聞いたんだけどさぁ」
「うん」
「『え、あいつのそういう話なんて今まで一度も聞いたことないけど』……って言われてさ。ゲームラブらしいです」


由良の言葉に期待しつつも、その期待は虚しく消えた。
……つまり、恋愛に興味がないと。
それはいいことなのか、悪いことなのか——。
よく、わからないね。


だけど、絶対壱には好きな人がいると思う。
本人に直接聞いた訳でもないけれど、心は強くそう思っていた。