コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *迷恋華* ф実話ф ( No.33 )
日時: 2012/09/06 18:23
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Ot.qag7u)
参照: あの日々に嘘はなかった

第十一話『決戦は日曜日?』


そして、十月二日——。


日曜日が、きた。




遊ぶメンバーは、私以外三組。
誠、保高、世良、陸だ。
朝から保高と誠が迎えにきてくれて、そのまま近くのコンビニへ向かった。
三人、という組み合わせもまた初めてなのもあるが——。


とりあえず、会話がない。


私達三人は無言のまま、コンビニ内へと入った。


**


コンビニ内は涼しく、私は小さく息をついた。
誠と保高はずかずかとジュース売り場へ向かったので、私も戸惑いながらもついていく。


そこで誠が突然止まり、私は危なく誠の背中にぶつかりかけた。
私がうぇ、と小さく声を上げるのと同時に、誠も振り返る。
そしてそのまま、私の顔を見た。


「……依麻、何が欲しい?」
「……え?」


何って……。
私は突然話しかけられたのもあり、頭の中が少しパニックになった。
それを理解したのか、誠はジュース売り場を指差した。


「ジュース」
「……え」
「誠がおごってくれるって」


まだ理解が出来なかった私に、保高が横から付け足すようにそう言った。
そこでようやく状況が理解。
私は大きく横に手を振った。


「え、そんな……」
「いいよ。出す」


誠はそう言い、ジュースを選ぼうとした。
私は誠の無表情になんだか断りにくくなり——。


「……ありがとう」


ミルクティーを、おごってもらうことにした。


**


そのまま世良と陸と合流し、空港のゲームセンターへ行くことにした。
皆でプリクラを撮り、クレーンゲームをして……。
最初はどうなるかと思ったが、盛り上げ役の陸や世良のお陰で、なんとか楽しい時間が築けているようだ。


そこで、しばらくしたあと。
誠は大きなうさぎのぬいぐるみと大きなクマのキーホルダーを取った。
その技術に感動して誠の近くで眺めていると、


「……ん、依麻」
「え? あ、」


誠は私の方へ向かって、華麗にクマを投げた。
私は慌ててキャッチし、誠の顔を見る。
こ、このクマは……?


「あげる」


誠はそれだけ言い、小さく笑ってまた違うクレーンゲームへと向かった。
な、なんというさりげなさ……。
って、関心してる場合じゃない。


「ありがとう!!」


私は誠に向かって、大きな声でお礼を言った。
ゲームセンターは騒がしいので、無事に聞こえたのか不安だったが——……。
私の声は通ったみたいで、誠は背中を向けたまま小さく手を挙げた。


その仕草で、心なしか少しだけ胸が暖かくなった気がした。


でも、誠にこんなに優しくされると困る。
嬉しいけど、そういう優しさには慣れていない。

誠が壱だったらな、なんて馬鹿な事を考えてる自分がいる。

単純だなぁ、私。
些細な優しさに少し惹かれたとしても、情で付き合う訳にはいかない。
誠を傷付けたく、ない。


もし、奇跡が起こって壱が彼氏になったら——。
デートしたら、こんな風にゲーセンに行きたいな。
こんな風に、キーホルダーとってほしいなぁ……。


そんな叶うはずのない妄想をし、誠からもらったクマを小さく抱きしめた。