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Re: *迷恋華* ф実話ф ( No.34 )
日時: 2012/09/06 18:25
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Ot.qag7u)
参照: あの日々に嘘はなかった

第十二話『揺らぎ』


そのまま時間は一刻と過ぎ——。
皆で夜まで遊び、明日も遊ぶ約束をした。


そして、三日。
この日は皆で公園で溜まり、雑談や鬼ごっこをして楽しむことにした。


「——よし、じゃあ私が鬼だから……。皆本気出さずに逃げてね!」


じゃんけんで負け、鬼になった世良がそう言って、数え始めた。
私は急いで安全な山の上へと逃げる事にした。
山の上は辺りが見下ろせ、絶妙な眺めだった。
私は腰を下ろし、世良の背中をぼーっと見つめていた。


その時、


「……あ、依麻」


誠に、背後から話しかけられた。
私は振り返り、小さく笑みを浮かべる。


「おぉ、誠」
「あー……」


誠は小さく溜息をつき、私の横に座った。
だけど……。


な ん だ こ の 距 離


誠と私の間は、人三人座れる位空いていた。


「……」


そして極め付けの、沈黙。
この沈黙が気まずい。
私は気を紛らわすために、草をむしる。
横を見れば誠も草をむしっていたので、思わず小さく吹き出した。


「……え、何?」


誠は驚きの表情。
私は笑いをこらえ、草を指差した。


「……やっぱ、草むしっちゃうよね」
「っはは、うん」


誠も小さく笑ったかと思うと、また沈黙。
ど、どうしてこうなるのか……。


そう思っていると、誠はポケットからiPodを取り出した。
きっと、彼も沈黙に耐えきれなくなったのだろう。
しかし、これで話題が出来るはず。


私は思い切って、話しかけてみた。


「……何聴いてるの?」
「今から聴くとこね」
「あぁ」


ちょっと早まったタイミングに、私は恥ずかしくなり笑った。
誠はそれをスルーし、イヤホンをつけて何かを聞き出した。


「……何の曲?」


今度こそ質問すると、誠はちょいちょいっと手招きをし始めた。
こ、これは……。
近付け、と?


私は遠慮しがちながらも、誠に近づいた。


「ん」


そして誠は、イヤホンを差し出してきた。
……つけていいってこと?
戸惑いながらも、一礼してイヤホンを耳につけてみた。


——そこで、気付いた。


近 い っ !!


自分から近付いたのはいいものの、近い!!
私は焦りながらも、耳に流れてくる曲に集中した。


「……これって……」
「君の知らない物語」


誠は曲名を言い、小さく笑った。
確かこの曲、保高もメールで言っていたような……。
そんなことを思いながら、曲を聴いた。




















……なんと、いうか。
歌詞が、今の自分に言われてるような気がした。
少しだけ胸が痛み、それを紛らわすために辺りを見回す。


そこで、世良が視界に入った。


「……ちょ、待って、誠。世良来てる」
「まじで?」
「今来たら、イヤホンぶっちーん行くよ」
「ははっ」


私のそんな発言に、誠は笑った。
それと同時に、


「依麻と誠発見!」


世良が凄い勢いで向かってきた。
私と誠は瞬時にイヤホンを外し、別々の方向へと逃げた。


——ばかだ、わたし。
もうちょっと、誠の傍に居たかった……なんて。


そう思ってる時点で、馬鹿だ、私。