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Re: *迷恋華* ф実話ф ( No.7 )
日時: 2012/05/01 21:38
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 9RoM5lpe)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

第一話『二学期と始まり』


七月二十一日。
私が本気で好きだった人に振られた、黒歴史上に残る日にち。
十度目の玉砕。
とうとう私の失恋黒歴史も、二ケタを突破してしまった。
そんな私の中で記録に残る日にちから、数週間の時間が経った。


八月十九日。
夏休みが開け、今日から新学期です。


「……暑……っ」


思わずそう呟いた。
北海道の夏も、なかなか暑いもので。
白いセーラー服の胸元をパタパタと仰ぎながら、学校への道をひたすら歩く。


夏休み中、特に過ごすこともなく。
家でのんびり引きこもっていたので、日焼けもせず。
誰かと遊ばない間は、四六時中壱の事を考えていた。
壱の事を想えば、泣きそうになり。
壱の事を想えば、失恋ソングを片っ端から流して。
壱の事を想えば、それを記憶から消そうと必死に頑張った。


だけどそれは、消える事なんかなかった。


好きになって半年しか経っていないけれど、こんなにも好きになった。
私にとっては、とても長い時間。
今までの失恋黒歴史の中でも、一番優しく振られたはずなのに。
スッキリしたはず、なのに。


今更になって、振られるということがどれほど辛いことか実感した。
そして、夏休みという長い期間を利用して想いを忘れる。
……なんて、甘い考えも通用しないこともわかった。


**


なんだか気まずい気持ちのまま、学校に到着。
教室に入ると、疾風が壱とこちらを向いて何かを話していた。
どうせ、夏休み前のあの日のことだろ!?
私はそう思いながら、気にしないようになるべく平常心に過ごすことを心がけた。


普通に過ごして、さっさと家に帰ろう。
学校は時に残酷な場所だ、うむ。


そう思っていたのに。


「——水城依麻、この前掃除サボった罰。昼休み、牛乳パック回収よろしく」


福野にそう言われ、私の思いは一瞬にして崩れ去った。
時間は待ってくれなくて、今に至る。
昼休みの騒がしい教室の隅で、私は牛乳パックを一人でやっていた。
喧騒がやけに耳について、なんだか自分が惨めになってくる。


なんで夏休み前、掃除サボったんだっけ。
もはや、そんな理由も思い出せなくて。
ぼやぼやとした思考で適当に牛乳パックをまとめていると、


「……え、」


牛乳パックが、横からいきなり視界に入ってきた。
私は驚いて声を漏らし、顔を上げる。


「……え?」


今度は、疑問形で呟いた。
思わず、動作が固まる。
私の目の前には、壱が黙って牛乳パックを差し出している。


……受け取れ、と……?


差し出しっぱなしだったから、手を伸ばす。
壱は優しく渡してくれたため、ゆっくりと受け取った。


「……はい」


少し掠れた、壱の低い声。
鼓膜に響く。


「……っ」


なんで、渡してくるのさ。
私の事、避けてるんじゃないの?
どんな顔して壱を見ればいいの?
素っ気なくなっちゃったかもしれない、けど。


前までは、ただドキドキしていた感情。


——今はただ、切なくて辛いだけだ。