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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ひとびと ( No.15 )
- 日時: 2012/10/10 21:40
- 名前: 音羽 (ID: LZNmYCgd)
第十二話
「へ? 覚えてない……って?」
「いや、実は記憶なくしてて……お恥ずかしい」
そうなんだよね。実は今、私記憶喪失真っ最中。
それもやっかいなことに、自分に関することだけすっぽりと抜け落ちちゃったみたいな。
名前もわからなければ、年もわからない。知り合いがいたことさえ、今の私は覚えていません。
「あ、でもね、日常的な、常識的なことは覚えているんです。ほら、物の名前とか」
「そうなんですか。……あの、ちょっと来てもらえますか?こちらに」
そういって、ユーリちゃんは部屋を出て、プライベートルームみたいな小さめの部屋に私を案内した。
ここどこですか?
私がわけわからなくてきょろきょろしていると、昨日の女将さんが。
「あれ。お客さんじゃないか。ユーリ、こんなところに連れてきちゃだめだっていっただろう?どうしたの?」
「お母さん、この人、記憶喪失なんだって」
「……なんだって?」
「いや、え、と、あの……」
「それじゃあ、何?お客さん、あなた帰る家が分からないの?」
「はあ、そういうことになります。あ、国は、この隣の隣の」
「ああ、あの国ね。はいはい。じゃあ、お客さん。ここにしばらくいませんか?」
は!?何ですかいきなり……。
「いや、でも失礼ですよいきなり。それに私お金ないですし」
「そんなこと気にしないさ。……じゃあ、仕事手伝ってもらうっていうので。どうだい?」
女将さんの口調が、決まりとばかりに気安いものになる。
「え、と」
でも……。
「それにね、これからこの国一番の祭りが始まって、人手が足りなくなるんだ。あなたがここにいてくれればばんばんざいさ」
戸惑う私をよそに、女将さんとユーリちゃんは2人でうなずき合っていた。
でも、私は……。
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