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- Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! (Re:make) ( No.1 )
- 日時: 2012/08/03 10:47
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: rYvWlEkT)
「空土さん・・・・これは一体どういうことですか?」
武道場の奥地にてゆらゆらと揺らめく深紅の炎。炎は壁の一部をすでに飲み込んでおり、立てかけていた竹刀や木刀が灰の棒になっているのが見えた。頬の皮膚がチリチリと熱され、全身から警告信号が発令されてある。
今にも天井に突かんとす巨大な熱のかたまりを目にし、出てきた言葉は何とも情けないものだった。
「あ?なんだって言われてもな・・。ええーっと・・・・」
目の前の茶髪の男は燃え上がる炎をちらり一瞥する。
「こりゃァ事故だな。うん。結構やばい規模の火災事故だ。」
「分かりますよ!そのくらい!どういういきさつなのか教えて下さい!」
目の前にいるブレザー姿で茶髪の男は消火器を両手に持ちながらも消火活動をするでもなく、助けを呼ぶわけでも無かった。
ただ、熱にも怯えず、いつも通りの飄々、悠々ゆらりとした趣で舞い上がる煙火を眺めていた。
この男は僕が所属する剣道部の副部長、西首空土(ニシクビクウド)だ。
いや、それどころじゃない。
「っていうか!早く消さないと僕たちの思い出が消し炭になりますよ!消火器貸して下さい!」
「思い出っつったって、おめェこのガッコに転校して一ヶ月しか立ってねェじゃねェか。」
「それは別の話です!早く!消火器を僕に!」
「待てや。実を言うと生徒会の野郎が会費ケチってな・・。この消火器は古くて使いモンにならねェんだよ。」
「ちょっ、そんなことって・・・!」
「まァ、落ち着け。ちゃんと手ァ打ってあらァ。」
空土はそう自信満々に言いながら後ろを振り向いた。巻き上がる火の勢いは尚も増してゆく。
頬に炎の粉があたり、鋭い感覚を感じた。今のところ何も出来ないというのが悔しい。
いや!ちょっと待て!この時間にも十分バケツで火は消せるだろう!!?
「おい!空土!無事か!!?」
と言いながら姿を表したのは短髪に刈り上げた大柄の男だ。剣道部の部長だ。だが、いちいち名前を紹介していくほど、僕は今落ち着いてはいなかった。
空土は「おっ、」と会釈をしただけで詳しい会話は交わしていない。以心伝心という言葉もあるが・・・・関係無い!
「待たせたな・・・!!『液体』を持ってきたぞ!これで火は消せる。」
「ホントですか!!?」
僕は無意識の内にそう尋ねていたが、よく考えてみると、少しなれなれしいような気がした。が、部長は気に召していないようで、
「ああ!受け取れ!」
と言った。
男は僕と空土の前まで全力疾走で駆けてくると二つの金属質のボトルをふところから取り出した。微妙に黒光りしており、炎による赤い光を鈍い色に変え、反射している。
「何が入ってるんですか?この中?」
とりあえず二つを受け取った。
「ああ。空土から、とりあえず何か液体を持ってこいと言われたから給油室で貰ってきた!まあ、あの炎にこいつをぶつければいいんだろ?」
「いいんだろ?」
と聞きながらも今にも部長は肩を存分に使って投げようとしている。や、待て。冗談じゃない。
見ると炎は勢いを最大にオーバーヒートしたようで、顔にかかる熱粉は温度を上げてきた。リミットが残り少ないようだ。もう天井そこまで達しようとしている。
「よくありません!拳正さん!僕たち集団自決するつもりですか!??」
「んなわけ無いだろ?これを投げれば一件落着なんだ。どけよ。」
「どきません。落着なんかしません!万象一切灰燼に帰すだけです!」
「難しい言葉使うな!うっとうしい。」
部長はとうとう完全な興奮状態に入った。かと思うと、ダルビッシュもびっくりの美しい投球ホームでガソリン入りのボトルを手から放っていた。
ボトルはまるで虹のような放物線を描き、火もとまでぶっ飛んでいった。着地点はどう見ても炎だ。
そして・・・・ボトルは・・・乾いた音を立てて・・・・地面に落ちた。
爆発は・・・・しなかった。
思わず安堵した。だが、窮地なのは変わりなかったが、刹那、地を叩く無数の音。
スコールだ。時雨だ。夕立だ。
夏の初め特有の急な雨が降ってきたのだ。
まさに、恵みの雨だった。
【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 開演!!