コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! キャラ絵うp!!! ( No.11 )
- 日時: 2012/08/22 10:51
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: 7gBpjPib)
頭の中に『ルーキーエース颯爽と登場!』との文字が躍る。それはテニ○リやスラムダ○ク、等の主人公達の様に格好いいことなのだ。きっと目の前でニコニコ笑っている空土先輩を倒せばこうなるのだが、生憎、僕はそんなに自惚れていない。
だが、言えばこの西首空土先輩は副部長。あくまでNO,2である。小学3年生のころから剣道をやってきた僕にも彼に勝利できる可能性はゼロでは無いだろう。ひそかに張り切り、ふっと息を吐く。
当の空土は一年生に正座しておくように指示を出し、着々と剣道の防具の着装を進めている。僕もやや震える手で胴着に腕を通し、帯をきつく結び、防具のひもをぎゅっぎゅと固めた。面を被ると熱気がむんと顔を差す。
「準備はいいかー?博人?」
「ああはい、いいですよ。」
僕は竹刀を握り、立ち上がりながら答える。相手はもう正方形の試合場の辺で片手に竹刀を持ち、跳躍行動を繰り返していた。
「じゃあさ。博人?」
面の裏側から空土が僕を呼ぶ。「はい、なんですか?」
僕が返事をすると、空土は跳躍行動をやめ、竹刀を自分の肩に押しつけながら言った。
「これはあえて『遊び』だからな。俺が二本取る前に、お前が俺の攻撃を一回でも防いだらお前の勝ちだ。いいだろ?このルール?」
・・・いい訳がない。完全に舐められているようだ。
心の中でひそかに悔しく思う。どんなにあっちが強くとも僕は一回ぐらい避けられるはずだ。彼はもう、自分が圧勝ということを前提に話を進めている。
これでいいわけがないじゃないか!
どっかの二足歩行猫も言ってるではないか。「舐められたら負け」と。絶対に目にもの見せてやるぞ!と意気込んだ。
そこで相手は試合場にすり足で入っていった。僕もそれにならい、白線へと足をかける。
「あっ、博人くん。ちょっと。」
と花火が僕に声をかける。「はい、何でしょうか?」
「ちょっとアドバイス。」
そう言って笑った。
「絶対に空土副部長から一本を取ろうと無理に攻めないこと。」
「はい??どういうこと・・?」
「えっと、あれだよ。空土さんはとんでもなく強いからね。悪いけど恐らく博人くんは話ンなんないよ。下手に一本取ろうとしたらマジでガチの大けがするよ。」
「はあ・・・・。」
曖昧に返事をし、視線を元に戻した。花火くんも同様に相手が勝つことを考えて言っているのだ。素直に感謝を示せるほど僕は寛容では無かった。
相手は白線に足をかけ、膝を割り、腰をかがめた。剣道用語でいわゆる、「そんきょ」と呼ぶ。僕もそれに倣い、竹刀をバッテン印の所で交わらせる。
「花火ー。号令お願いー。」
空土自身が面の向こう側から軽い声を出す。花火はよっこいしょ、と立ち上がり、
「んじゃ、新入部員、博人対空土副部長の試合。始めっ。」
花火の声が武道場に響き、竹刀は尚深く交わ・・・・らなかった。
空土のにやけた顔が一瞬で凛々しき真剣な表情に変わった。確実に質量を持った衝撃が僕へぶつかると自然に冷や汗が背を流れた。
空土の赤い瞳が線を描く。
彼の持っている竹刀の剣先がピクリと微かに揺れた。見えたのはそこまでだった。
早いんじゃない。消えたのだ。僕の視覚センサーが「相手が見つかりません」と告げようとしたときにはもう胴に鈍い痛みを感じており、パアン!という快活な音が響いていた。むしろ音の方が遅れているように感じた。空土先輩が僕の真横で竹刀を振り切っている姿が見えていた。
「空土副部長、ドオ有り〜。」
だるそうな声で花火が叫んでいた。
「ちょっ!花火くん。今、僕って何を一本取られたんですか!?」
「まあ、恐らく胴だろうね。打った後に横に抜けたもん。」当たり前の様な表情で言った。「僕にも見えなかったけどさ。打たれる音がしたから確実じゃないのかな?」
「・・・・・。」
僕は二の句が継げなかった。空土はいつも通り(?)のひょうひょうとした様子で白線までに戻っていた。
恐らく・・・。空土さんはかなり強い。僕が剣道を教わったそこら辺のコーチ、監督など足下に及ばないほどに見えた。勿論、こんな動きをする人など身近な先輩はおろか、大きな大会に出ている選手にも居なかった。
つまり、僕の経験上、トップクラスに強い。
「よっしゃー!博人。もう一本だァ!」
空土は何も考えていないような顔で竹刀をぶんぶん振り回す。心底恐ろしいと感じた。
するとだ。何の前触れもなく武道場の入り口が音を立てて開いた。中に入ってきたのは体がえらくがっしりとした、大柄の男子生徒だった。肩にはエナメルバックをかけている。