コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! キャラ絵うp!!! ( No.12 )
- 日時: 2012/08/03 10:33
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: TZln3PE9)
- 参照: 花火「観察眼って・・・ようやく剣道らしくなってきたね。」
するとだ。何の前触れもなく武道場の入り口が音を立てて開く。音に反応し、視線をそこにむけると見えたのは体がえらくがっしりとした、大柄の男子生徒だった。肩にはエナメルバックをかけている。
「お—。ケン。遅かったな。委員会か?」と空土。
「ああ、ババアの話が長引いてな。・・・てか見ない顔がいるじゃないか。」
男は前半ため息、後半感嘆の調子で声を漏らした。視線が僕に向いていることから、僕のことだろう。当たり前だが。
「ああ、はい。新しく入部した月島博人と言います。お世話になります。」
「ふーん・・・『入部した』な・・・。」
男は不敵な笑みと共に呟いた。何か僕が失言でもしたのだろうか?
表情をそのままに続ける。
「『入部した』とはなんとも現在完了じゃないか。もう部員となりました、か。見かけによらず大胆なんだな。お前。」
「あっ・・・」
そこでようやく自分のミスに気付いた。入部早々えらいことをしてしまった・・・と自分の口を恨んだ。
視線を上げると喜ばしいことに相手は気分を害しているわけではなさそうだ。にやりと口元をゆがませながら、
「俺は任内拳正(ヒトウチケンセイ)だ。この部活の部長を務めている。」
と自己紹介をした後に、
「まあ、気にするな。剣道はそのくらいの挑戦根性は有った方がいい。」と言った。どうやら性格はそこまで悪い訳じゃないようだ。
「さて、空土。」
拳正部長は話しに区切りを付けるようにはっきりした口調で言った。
「今さっき何をしていたんだ?入部試験か?」
「んにゃ。ただのかっるーいお遊び。新人つぶしも兼ねて。」
空土は恐ろしいことをニコリともしないで言い放った。普段口角を上げているだけに、こういう場面の無表情が逆に恐ろしい。
「ほう。『ただのかっるーいお遊び』ね・・・。」
拳正部長はやや空土の口調をまねしながらさきほどのような不敵な笑みを出した。そしてゆっくりとおもむろに空土へ近づいていく。
「んだよ?ケン。俺ァBLの趣味は無いぞ?」
「俺も無いさ。・・・それはいいとして。なんだ?これは?」
拳正は空土の竹刀を手に取り、それをじろりと物定めするように眺める。どういうことだろう?
「空土。どうしてお前は『ただのかっるーいお遊び』に大学生用の素振り竹刀を使ってるんだ?しかも、ご丁寧に柄内部に鉛まで詰めて。」
「あっ、やっぱバレた?」
!!!!!僕は衝撃を受けていた。実はそんなことやっていたのか?そんなものを使っていて僕が見えないほどの打突を繰り出せるだと?最後に拳正の言葉が僕にトドメを刺す。
「こんなもんじゃ流石のお前も実力の半分も出せないだろうが。」
剣道を知らない諸兄たちのために僕が言っておこう。素振り竹刀とは竹刀をより太く、より重くした代物だ。言葉で説明するとえらい簡単だが、剣道未経験者は中学生の素振り竹刀だとまともに振れないほどの重さだ。しかも、大学生用だと、その重さはかなりのものになる。
「やっぱ拳正、お前実は俺のストーカーだろ?こんなことが一目で分かるって尋常じゃないぞ。」
いや、空土さんは空土さんで十分すぎるほど尋常じゃありませんから。
「丁重に否定しておく。まあ、結果的に入部試験はしてないんだな?」
「まあ、そうだが。花火とか友美とかの元居組もしてねェんじゃ無いか?博人だけはあんまりだろ。」
「だから、今から全員するんだよ。」
高らかと宣言した拳正に比べ、僕たち一年生は状況を把握出来ていない。頭の上に大量の『?』が浮かんでいる。
変わって空土は「本気であれやるかー?」とあきれ顔の上に薄ら笑いを重ねている。
ああ、やるんだ。と拳正。極めて真剣顔だ。
「じゃあ、とりあえず、空土と博人・・・だっけは面を外してこいよ。それから伝えるよ。」
拳正の言葉に空土は不平気味な顔をするが、黙ってそれを引っ込めると、スタスタと下手の下がっていった。僕も同様にそれに倣う。
「じゃあ、面倒くさいから空土と博人は面を外しながら聞いてくれ。今から入部試験の内容と概要を発表する。」