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Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! キャラ絵うp!!! ( No.14 )
日時: 2012/08/03 10:36
名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: rYvWlEkT)
参照: 花火「作者お得意の日本神話モノが出たよ。」

「じゃあ皆、とりあえずこれを見てくれ。」
拳正がそう言ってエナメルから取り出した物は一つの新聞だった。ちなみに僕と空土はさっさと面と防具を外し終わって、今は道着すがたで拳正の前に立っている。

見ると右上の見出しが蛍光色のペンで乱雑に囲まれており、そこには『八汰烏 』との文字があった。
「何ですか?これ?『ハチシタドリ』?」いの一番に新聞を眺めた友美は誰とも無しに問いかける。
「違うよ。友美。これはおそらく・・・」
「『ヤタガラス』ですよね。これ。」

花火の言葉をさえぎって眼鏡をかけた女の子、あやめが言った。花火が針のように鋭い視線をあやめに向けるが、当の本人は気にせずに続ける。

「八汰烏とは、日本神話 の話しによれば、神武東征 の際に、高皇産霊尊 によって神武天皇 の元に遣わされ、熊野国 から大和国 への道案内をしたとされる烏 です。うわさによれば三本足だったという伝説が残っています。ちなみに現代では、日本サッカー協会のシンボルマーク にも用いられているものとして有名です。そうですよね?花火くん?」
あやめはそこまで早口で一息に言い切ると花火の方を振り返った。

「・・・・・その通りだよ。あやめ。流石。・・・つーことだ。友美。分かったか?」
「ううん。1mmとも分からない。」
弟からの質問に友美はとびっきりの笑顔でそう言い放った。まあ、恐らくだが、友美だけではなく、今、キャンディーを頬張ってあさっての方向を向いている徳井灯ちゃんを始め、空土さんや杜山詩子さんたち、要するに、花火とあやめ以外の全員は今の説明を全く理解していないだろう。もちろん、僕も含めてだが。

「・・・・・・まあ、そこはいいとしてだ。」拳正は話の流れを打ち切るかのように強く言い切った。
「最近ここら近辺で中学生の連続暴行事件が多発してるんだよ。目撃された犯人らしき学生の服装が全身真っ黒だったことから『八汰烏』っていう大仰な名前が付いたんだけどな。」

「それが何か入部試験と関係あるんですか?」
これは僕だ。

「まーな。この事件の犯人の手がかりをお前らに探して欲しいんだ。この中から一人でも有力な情報を得られれば、お前らは無事合格ってわけだ。いいか?」

拳正が言い終わると女子全員は生真面目にも「はいっ!」と返事をした。
だが、うってかわって花火はというと、あたかも興味なさそうに唇を尖らせると、
「それって強制参加なんスか?」
と少し片方の口角を上げながら言った。このようにルーズな仕草も花火がしたらなんだかスマートに見えるから不思議だ。

「当たり前だろ?試験なんだからいくら実力があるお前でも強制だ。」
「でももう今度の試合のオーダーには僕入れちゃってますよね?」
花火は不服そうに視線で拳正を射抜く。
「俺は部長だ。つーことは俺がこの部のルールってことになる。何か文句あるか?」
「・・・無いッスよ。すいません。」

花火はブスッとした不服そうな表情で、視線を下ろした。明らかに不満がたっぷりあるのは見え見えだった。
「じゃあ他に何か質問ある奴はいるかー?手を挙げてみろ。」

拳正の不特定多数的な問いかけに一年生は沈黙する中、だるそうに手を挙げたのは空土だった。そして一言。

「危なくねェか?」
湖の水面のような静けさを空土のその一言が切り裂いた。理解できないように拳正は「何がだ?」と尋ねる。
「だからよ。暴力事件の捜査ってモンするにこいつら一年を野放しにするのは危険だっていってんだよ。いくら花火がいるっつってもな。」

「まあそれもそうだな。」
「んで怪我して後で親御様からビービー言われんのも俺嫌だぜ。ってことで俺たち二年も外に出て監視するってのもどうだ?」
空土は人差し指を立てる。

「でも俺と空土の二人っていうのもちょっと人手不足じゃないのか?」
拳正はやや大げさに眉をひそめた。

「んじゃァ“あいつ”を呼べばいいじゃねェか?」

空土の言葉に拳正を含め、空土と僕以外の全員が固まった。それを見た声の発し主は
「あァ、そういやァ禁句だったな。」
とバカに明るく言っただけだった。

「まあ、それはいいとしてっと・・・・。」
空土は妙な空気を払拭するように一区切りをつけ、くるりと身を翻すとすぐそばにあった「最強伝説空土さま専用!!」と殴り書きされたロッカーへと向かった。
「俺たち二年の同伴は必至だろ。もしものために、やっぱこれだね〜♪」
鼻歌まじりにロッカーを引っかき回すと一降りの赤い日本刀を取り出した。

へっ!?日本刀!!?

「真っ赤な相ッ棒♪帯刀王子、ここに復活っと。」
そう言って道着の帯に鞘を通した。
いや、銃刀法違反でしょう!
この道場にきて初めてのつっこみが心の中で響いた。