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- Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 【剣道部】 ( No.25 )
- 日時: 2012/08/03 11:14
- 名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: OXm6els4)
「チッ空土!この縄を解け!!」
「そうだ!空土副部長!一体全体何が目的だ!!」
ぐるぐる巻きにされた亦紅と花火は鯉のようにびちびち跳ねる。改めて見ると凄い光景だ。
「せらかしいや。もうちょいで武道場に着くからそこまで待ってろよ。」
そうやって商店街通りも交番前も学校前の坂道も空土は花火たちをずるずると引きずって行く。通りすがる人たちからは怪訝な目で見られたがまあ、いい。僕は悪くない。空土もとい空土の無理クリな強制連行の方法が悪いのだ。
やがてすると学校の敷地内に入った。グラウンドで活動している野球部やサッカー部、その他青空のもとで部活動をする部員たちが僕たちへエラい視線を送る。
ざわめき。悲鳴。下がって行く人の波。携帯を取り出して通話する顧問の先生方。なんだなんだ?それほど僕たちは異常なのか?
ふと亦紅を見た。・・・・・そうだった。この人は殺人者及び停学中の生徒なのだ。要するに超要注意A級危険人物。しかもそんな人物が捕縛され引きずられているのだ。ざわめきが起こっても不思議ではない。
「さて。おめェら。もう武道場だ。部員も居る。気ィ引き締めとけよ。」
空土はそう言い終わると武道場の扉に手をかけた。勿論、花火と亦紅の靴は脱がせておいた。
「ようケン!ただいまだ!!」
ドアを開ける。ガラガラガラ・・・とさびた音がした。奥に見えたのは、やはり異常な個性を持った部員達の光景。
「おう遅かったな・・・・・って亦紅!!?どうしてここに!」
「まあ、あれだ。かくかくしかじかってか?・・・・・。」
と空土がしばらく拳正に説明する。して、二人の話が終わり・・・・。
「ひゃーは・・・。何故に俺が剣道などしなきゃならねーんだ・・・。」
亦紅と花火、僕は防具を付け、竹刀を持ち、お互いに向かい合っていた。
話が飛びすぎと感じるかも知れないが、本当にトントン拍子にことは進んでいったのだ。少々簡略化しても文句など誰も言えまい。
「さァて。ちゃっちゃと終わらすぞ!テキトーに試合開始してくれ。」
審判は空土が立った。僕たちは完全装備なのに、空土はTシャツ姿だった。暑いらしく、さっき自分のエナメルから服を取り出して着替えるのを見ていた。
「博人くん、行くよ。」
鋭い目で花火が確かめる。
「はい。」
僕たち二人は息を合わせ、中央近くの白線へと進んだ。向こう側の亦紅もまた、同様。
「んじゃ!試合始・・・」
と空土が号令をかけ終わらない内にだ。蹲踞という、膝を開いて腰を下ろした姿勢から一気に飛び出した。狙っているのは花火の面。アンバランスな体勢の花火がかわせるはずもなく、あっけなく竹刀は面へと届き、一本。
ちなみにと言って置くが、蹲踞をした状態での相手との距離は4〜5mほど離れている。それを膝を曲げた状態から飛び込むなどもはや狂気の沙汰だ。
花火を突き飛ばし、亦紅は僕へと向かってくる。彼の竹刀は浮いており、明らかに僕の面を狙っている。ここは相手の打とうとする出鼻に小手を打つ、「出小手」だ。
だが、相対してみると・・・・迅い。竹刀が交わっていないほどの間合いだったのに、剣線がもう僕の目の前まで来ている。・・・間に・・・合わない!!
脳天にずんと衝撃が来た。亦紅の竹刀は僕へと届き、空土の「面あり!!」と言う号令が武道場に響いた。
倒れ伏す僕と花火を亦紅は見下ろし、竹刀を突きつけるような動作をするとこう言った。
「ひゃー。律狩の未来を担う一年組がその調子かよ?『律狩=最強』の時代は俺たちの時代で終わりか?」
「いや・・・。そんなはずでは・・・。」
これは僕だ。亦紅の圧倒的なオーラに圧され、何もまともに発せられない。後ろで空土が呵々と笑っているのが見えた。
「しゃーねーな・・・。」
亦紅は小さく零す。なんだなんだ?
「これの俺がてめーら一年を試合までに鍛えてやっからそのつもりでいろ!!いいな!!」
・・・って?すると・・・・?
空土が亦紅の肩をポンと叩いた。拳正も笑顔を浮かべて空土のよこに佇んでいる。その他の女子部員(・・・居たっけ?)はポカンと口を開けている。
「つーことはモコ。事実上の帰部ということか?」
〆序章、END。