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Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 【Re:make】 ( No.37 )
日時: 2012/08/27 14:45
名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: 7gBpjPib)

駆け足とは結構目立つものだと痛感した。輝く汗を周囲に振り乱している野球部が僕たちをジロジロ眺めている。その視線が心底痛かった。

まあ、そりゃそうだろう。10人を超える軍勢が駆け足で何処かへ向かっているのを見た日にゃ「火事か?あちきらも逃げねーとね!」やら「不審者でござるか?拙者が天誅を下そう」ぐらいの思考を持った人がいたとておかしくはない。

さて、今何故にこんなバカな妄想をしているのかというと、今この場がかなり空気が悪いからだ。

ようやく一年生徒玄関に辿り着いた僕たち剣道部が見たものとは、凄い光景だったのだ。我らが剣道部の主将、任内拳正さんが膝に顔をうずめて体操座りしていた。いや、ちょっと想像してほしい。170を超えるがっちりとした体型の頼れる部長がマイナスオーラを背中に香らせ、指先で石ころを弄んでいる光景を。
それに加えてだ。

「いや、ホント済まねェやケン。機嫌直してくんねェか?友美も悪気はねェんだしよ。なァ・・・・?」

などとガラにもなく一生懸命手もみをする我らが副部長、空土にも見呆れていた。何がそんなに空土自身に不都合なのかそれが聞きたい。

「空土・・・。なー、てめーよー・・・。」
「分かってっさ!だが、俺ァ何も悪いことはしてねェんだ!」
「いや、俺は何もお前が悪いとは・・・・・。」

とな感じにドロドロの会話が展開されていく。よく分からないので隣の友美・・・いや、こっちはダメだ。反対側のあやめに聞いてみた。

「あやめさん・・・・。この二人のやりとりって一体・・・・?」

あやめは微かに微笑み、
「実はこの二人、どちらかがヘマをした、といいますか、『やっちゃった』場合、迷惑をかけた方の好きな人を世に流す、という契約を結んでいるそうです。」と言った。
そして少し間をおいて、一言。

「案外、彼らもイマドキなんですね。」
それはそれは。貴重なお話乙です。まあ、そういうことならば空土の慌て方も別におかしくはない。逆に可愛く見えてくる。

そこで一つの咳払い。腕を組んで二年生2人の前に立ちはだかったのは隼威だった。明らかに分かるしかめっ面だ。
「さて、拳正?あのメールん中にあった『メンドーな奴ら』とは誰のことだ?もちろん遊楽と“黄色”のヤローのことだよな?」

拳正は傍目にでも分かるぐらい焦っている。そこで空土の方をキリリと睨むが彼は首を横に振り、友美の方を指さした。差された友美も戸惑っている。そこで隼威がため息と共に言った。


「まあ、それは別にいいとしてだな・・・。」
いいんかい!隼威に裏拳ツッコミを出来ないのが悔しい。二年生に二人にとってはとんでもない搦め手だったろう。同情はしないが。
「今日は何故わざわざ生徒玄関前に集まらせたのだ?俺はそれが分からないのだが。」

「と、言うと?」
「ようするにだ。俺ら三年に見つかりたくなけりゃ二年教室でもなんでもあったろう?何故屋外にしたのか?それが聞きたいのだ。」

なかなか鋭い事を言う。だが、当の拳正はまだ哀愁を香らせた顔のまま、
「先輩が望むような大仰な答えはありませんよ。」と言った。

「では、それなりの理由があるのだな。」
拳正は首肯した。
「ただ、イベントを一つ起こそうと思いましてね。それは外でしか出来ねーモンなんですよ。だから屋外にした、と。簡単な事です。」

そう言って拳正はジャージのポケットの中に手を入れてごそごそをなにやらまさぐる。が、対象が見つからないようでもう片方のポケットも探る。

「拳正〜?もしかしてこれ探してんの〜?」
「はあっ??」

遊楽が指で摘んでいたのは折りたたまれたA4の紙だった。なにやら文字が無数に書かれていた。
「ちょっ!返せ!」

拳正が手を伸ばし、取り返そうとするが、遊楽はひょいと避け、その紙を隼威に渡した。傍目に見ているといじめ現場の如くだ。もしやその紙には好きな人云々が書かれているのではあるまいか?

「ほう・・・・。なるほどな・・。面白そうじゃねーかこの企画・・・・・。」
隼威はその紙を眺めながら言った。その反応からして僕が予想した色恋モノでは無いらしい。まあ、分かり切っているが。

「よしっ!決まりだね隼威!?」「ああ、お前が言わんとすることは見えたよ・・・。」
三年生の二人は目を合わせ、不敵に笑い合った。不安極まりない。

「はいはーい!我が剣道部の後輩たち〜?ちゅーもーく!!」
「今から今度の試合選手決めのクロスカントリーを行う!!