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Re: 【真】ツキシマヒロトの愉快な部活! 【Re:make】 ( No.58 )
日時: 2012/09/24 07:25
名前: 藤田光規 ◆bh.mYRAeMo (ID: kG6g9hX2)
参照: おひさしぶりです。

「え——。今回は汚ねェ手ェ使ってすんませんした——ッ!」

・・・・どうしてこうなった?

ここは大体育館の前。校舎裏をしばらく進むとここに至るのだ。灰色の壁に赤いスプレーで「赤志族ここに参上!!」とかきなぐられているのがなんとも痛々しい。
少し前にも言った通り、律狩中は部活動が盛んだ。
特に運動部が。そんなプロメーターに比例して、運動器具は上質だ。体育館はその上質な運動器具の代表格と言っていい。
律狩中の全校生徒は1000人を軽く超える。その大衆が体育館に一同に集ったとしても少し余裕がある程度だ。こんな巨大な体育館で複数の部活が激しい陣地争いを繰り広げているのは前述だろう。

と、僕にしては少々モノローグが長くなったのは理由があった。

・・・・状況把握がうまくできない。なんだ?何なんだ。どうしてこうなった。

体育館の入口の前に腰掛けがあると考えていただきたい。木質のベンチだ。そこに剣道部一年勢が仲良く座っているのだ。その傍らには三年生の遊楽と黄色が笑いながら佇んでいる。なんでだ?なんでこんなところにいるんだ?何の意図がある?

僕と空土の歩いてくる姿を見つけると彼女ら(彼ら)は皆同時に立ち上がった。一瞬の狂いなく。一コンマも違わず。六人全員が一斉に立ち上がったのだ。あなたたちはマリオネットか?
そして無機質な動き、真顔で僕たちの元まで歩み寄るとこれまた全員が同時に右手を前に出した。
流石の空土も面食らっている。

「ちょっ、おめェら・・・何がしてェ・・・?」
「・・・・・ってください。」
「ああ?」
「謝ってください私たちに。当然ここに来たからには反省もしてるのでしょう。」
「・・・・チッ。しゃァねェや。」
空土は露骨に不快そうな顔をし、両膝を地に付けた。

「え——。今回は汚ねェ手ェ使ってすんませんした——ッ!これから真っ当な道を進んでいきますんでどうぞお許しをーッ!」
割り切ったように深々と頭を下げた。しばらくして「面を上げて」と花火の声。

「今の言葉、嘘じゃ無いよね。」
「・・・あァ。」空土はうなづいた。「もうあんな事はしないね。」
「しねェって言ってんだろ?」「今度から喧嘩は正々堂々とするね?」
「あァっつってんだろ。」
「今日からあたしのうまい棒買ってくるね?」
「あァ・・・・って待てコラ灯。チョーシこくのもいいかげんにせェよ。」

「空土さん。口を慎んでください。」
「・・・・・はい。」
空土は明らかに不足そうな顔をした。僕も空土の心が分からないでもない。
「では、空土さん。直ってください。今日の真摯なあなたの気持ち、忘れないでください。私は許すことにします。」
「いや、許すっていうか、俺は悪いことをした記憶は無いんだが・・・・。」
「また蹴られたいのですかあなたは。」
「分かった!もう!俺が悪い!悪いから!なっ!」
空土が慌てて頭をブルブル振る。そこで友美が咳払いをする。

「じゃ、もうこの事は済んだということで!進もっか!」
「友美の言うことならば仕方ありません。不問ということにしておきましょう。」
「いや、すでにごちゃごちゃなってんじゃねェか?」
「うるさい。皆、行きましょう。」
言って以下一年組は身を翻して歩いて行った。僕と空土が苦笑しながら木刀を掴むと立ち上がり、追いかける。三年生も続く。

そして、だ。空土が一年生勢を追い越した時、彼女ら(彼)は顔を見合わせ、頷き合った。鼻歌を吹きながらポケットに手を入れ、飄々としたような表情で歩いている空土に向かって一年生たちは駈け出していく。
「こんなことで許されるわk———」」」」」」」
全員が地面を蹴る一瞬前に空土はくるりと振り返った。
「手は抜かねェぞ?んにゃろ」

彼女(彼)らの心を見透かしたような空土の表情。つまりは口元を愉快そうに歪め、眼には明らかな敵意が宿っている。握っていた木刀を胸元で構え直し、その瞳孔が描く、赤い線。

——ちょっ、空土さん・・・??

僕がその状況を理解する前に、花火はおろか友美や雪乃たち女子たちの体も、かなりの勢いで白い校舎の壁に叩きつけられていた。